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□ 創作小説 □

信号機二つ



これは地方に住む叔父から聞いた話です。



 地元で大工の棟梁を務めて、三十年。一般家屋しか手がけず、自分の納得の行く家を作り続けてきた。最近は家の建て方の新しくなってきたが、出来る事なら昔ながらの土壁の家を作りたいと思っている。まだこの辺りなら建てられそうなんだが、といつも仕事帰りに通りかかるたびにそう思う。


 時間が決まった仕事じゃないから、自分のきりの良い所まで終わらせたら現場を出たのは、もう九時過ぎ。すっかり暗くなった農道を自宅にむかってハンドルを握る。この辺りは広々とした田園地帯、県道や市道よりも良く整備された広域農道が整備が真っ直ぐに山に向かって延びている。そんな農道には滅多に信号機などないが、メインの農道が交差するあたりには思い出したようにぽつんと信号機。


 真っ暗な夜道に、街灯代わりにもならない信号の明かり。滅多に引っかからない信号にかかって、自分の目の前を横切ってゆく車を見送る。信号が変わり、車を発車させる。百メートルくらい先にも、また信号。


「ん? 新しい信号か? 今までなかったよな」


 その信号は、赤。つい几帳面な性格が禍して、信号を通過する車の灯かりも見えないのに停止してしまう。信号が変わるくらいの時間を惜しむほど、先を急ぐ事も無い。


 一分、二分…、五分。


 待っても、その信号機は赤色を点灯させたまま。さすがにこれはおかしい、この信号機が壊れているんだと判断する。そっと交差点に侵入して左右を確かめ車が来てない事を確認して、その交差点を通り抜けた。


「なんだったんだ? 今の信号」


 そのまま暫く走って、ふと気がつく。


「ああ、そうか。あの信号が壊れたから、新しくもう一本信号を立てたのか」


 自分ながらそう納得して、バックミラーを覗いてみた。その中には壊れて赤信号のままの信号機と、その少し向こうに正常な信号機が映るはず。


 だけど ――――


「なんだっ!? どうして、信号機が一つしかないんだ!」


 バックミラーに映った信号機は青信号の信号機が一つだけ。
 まるで狸か狐に化かされたように。



 我が家を建ててくれた叔父が話してくれた、秋の夜話でした。




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Date:2012/03/11
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