保管庫

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

*    *    *

Information

□ 創作小説 □

開きかけた扉




 十一月のこの地域一番のショッピング・ゾーン。
 寒さはまだそんなには厳しくはないが、夕方ともなるとかなり重々しい空の色になる。
 仕事帰り私は、当時の親友であったCと本屋で待ち合わせ夕食を一緒に取った。
 この頃の私はCとの交友が楽しくて仕方が無かった。
 Cは一件お嬢さん風な容貌とミルキィ・ボイスの持ち主で、大抵は初見で騙される。


 その実は、当時勤めていた建設会社を一介の事務職でありながら切り回し、社長の覚えもめでたい程の実力者。
 私と何かと気が合い、よく行動を共にしていた。
 もう一つの特徴というか、【特質】が非常に強力な【霊感体質】でもあると言う事か。


 待ち合わせて合流し、夕食を取ったあと、お茶に流れるのがいつものコース。
 その間、それぞれが読んだ本の感想や今やっている事の話や、まぁ、女の長電話の如き話題の尽きない有り様で、どれだけ話しても話したりないのが、また女かも知れない。
 お茶をしに、いきつけの店に向かおうとした辺りから、私の変事は始まった。


( 肩が、重い ―― )


 事務職など、座っての仕事だから運動不足は否めないし、まして大きな締めの作業を終らせた後は通常よりも疲れているもの。最初は、そう思った。
 そのうち、背中全体が重たくなってくる。肩こりからくる重痛かと思ったが、少し様子が違う。
 【痛い】のではなく、【苦しい】のだ。
 本当に背中に【何か】負ぶっているかのように。
 繁華街の店から店への僅かな移動距離。
 ますます背中の違和感は強くなる。


 私も彼女程ではないが【霊感】のようなものはある。
 【それ】が【良い】か【良くないか】は肌で感じる。
 背中の違和感がそう言う種類の物ではない事は、私にもわかった。
 息苦しく、背中には何もないのに押しつぶされそうな圧迫感。
 次の店までの距離を私は、脂汗を流しながら歩いた。もう少し距離があれば、周りは奇異な目で見るだろうがその往来で潰れてしまっただろう。
 ようやく店に着き、席に座ると私はそのままテーブルに自分の上体を預けた。
 とにかく、身体を上げていられない。Cが私の背後を目を眇めて見ている。


「…ごめん。ちょっと、手 かして」


 私はそう言うとCの手を借りて、そのままの体勢で様子をみた。
 その間、店の人間にはどんなに奇妙な二人連れに見えた事だろう。
 一人は具合でも悪いのかテーブルに突っ伏し、友人に手を握ってもらっている図などは。
 ようやく、背中の圧迫感から開放された私はCの手を離した。


「ふぅ、ありがとう。どうにか落ち着いたみたい」
「……大丈夫?」
「うん、今はね。……何か見えた?」
「……うん」


 私は一息入れて、それから自分の感じた事を口にした。


「……どこかで無縁さんでも拾ったかと思ったけど、違うよね、あれ」
「うん、違う。私にも良く判らないけど、○○の背後で空間が捩れてたよ。何か【別のもの】が出てこようとしていたみたい」
「私に関係ある?」
「いや…、たまたま行き会ったみたい。もう、完全に【閉じた】から大丈夫だと思う」


 完全に【閉じた】
 開いていたら【何が】出てきたのだろう?


 その友人とは、今は音信不通である。
 あれからそんな体験もした事はなく、私は平穏に日々を過ごしている。





関連記事

*    *    *

Information

Date:2012/03/11
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿

:
:
:
:
:

:
: ブログ管理者以外には非公開コメント

Trackback

TrackbackUrl:http://hokanko11.blog.fc2.com/tb.php/18-c2e7901f
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。