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□ DATE FORCE □

Operation Chord : 「DATE FORCE」2

MISSION 1.Side 豪炎寺


 鉄壁の守りの中で、オペレーションの説明は始まった。

「その、「彼女を用意する」と言う言葉が気になるんだけど……」

 風丸が口にした、誰もが抱くその疑問。部室内にいるのは雷門ジャーナルにか書き立てられた、円堂・風丸・鬼道・豪炎寺の他に、土門や半田、一ノ瀬に影野、染岡・松野とほぼ2年生メンバー。その他には、マネージャーである春奈と秋。

「ああ、判った。マネージャーたちが彼女役をやるんだろ?」
「でも、夏未を入れても一人足りないぞ」
「いや、だいじょーぶだろ? 一人ぐらいならどーにかなるって!!」

 そう言った松野の視線は、風丸の姿を捉えている。

「えっ? 何で、俺を見るんだ!!」

 嫌な予感が、実際の事になりそうな気配に、風丸はたらりと脂汗を流した。ただでさえ、交際を申し込んでくる男子生徒の数に悩まされているのに、女装なんてした日にはどうなる事か。

「はい、25パーセントは正解。だけど、それではいかにも取ってつけたような感じは否めないし、ずっと「彼女」としての演技を続けるのは難しいわ。素性が知られている以上、張り付かれるでしょうしね」

 夏未の言葉に、深く頷く春奈。そして、小さな声で言葉を続けた。

「……あの、これを言うとお兄ちゃんが気にすると思って言わなかったんだけど ―――― 」
「春奈?」

 心配げな響きを含ませて、鬼道が春奈の名を呼んだ。

「お兄ちゃんが、私のお兄ちゃんだと知られてから、その…、事あるごとに注目されることが多くて……」

 そこから先は、口を噤む。
 おそらく、「いつも誰かに見られている」プレッシャーなようなものを感じているのだろう。その中には、あれこれ言う者も交じっているに違いない。その上で、自分ではない誰かの「彼女役」までさせては、軽薄ミーハーな連中にどんな目に合わされる事だろう。
 うむ、と腕を組んで考え込む鬼道。

「では、外部からの協力者を呼ぶのか?」

 冷静な発言は、豪炎寺。

「残念ながら、外部からの協力者を仰ぐほど時間的余裕はないの。さっきも言ったでしょう? 相手は、すぐにでも二報・三報を出す準備をしているって」
「…………………」

 鬼道と同じく腕を組み、またも沈黙する豪炎寺。

「あのさぁ、さっき25パーセントは正解って言ったよな? 夏未。あれ、どーゆー意味だ?」

 沈み込んだ場面に不似合いな、どことなく気合抜けするような円堂の声。

「それは、風丸くんが女装するってことね。実在しない女の子なら、雷門ジャーナルのパパラッチ被害も、追っかけの子からの被害も受けないし」
「……悪くないな。風丸に彼女役をやらせれば、いざとなればその逃げ足で逃げ切ることも出来る」

 自分の妹に累が及ばない方法であれば、なんでも良い感の鬼道も納得する。

「あ、でも風丸の彼女役は誰がするんだ。一人二役なんて、絶対ばれるし」

 頭を抱え込んで床にうずくまった風丸を他所に、話はどんどん決まって行きそうな気配。そこにまた、冷静な声が。

「……ばれるだろう、それは。同じ顔をした彼女が、合同であれ単独であれ1対3で付き合えば」

 腕を組んだまま、豪炎寺が発言した。

「まったくその通りよ、豪炎寺くん。だから、この場合、彼女役に必要なのは4人」

 と、夏未は指を4本立てた。



   ■ ■ ■


「……四人。外部からの協力が無理だとしたら、今いるメンバーでやらないといけないのか ―――― 」

 誰かがそう呟いた途端、一斉にお互いを品定めするようにジロジロと見回し始めた。一人、当確者である風丸を除いては。

「まぁまぁ、ここは合理的に考えようや。女装したうえで、この四人と釣り合いがとれるような奴を選ばないとな。間違っても、俺達みたいなんじゃ漫才にもならないし」

 と、さっさと共同戦線を張った、土門と染岡。影野もそっと染岡の影に隠れる。
 残ったのは、一ノ瀬と半田と松野。こちらはやれば出来そうな雰囲気だ。
 
 が、ここで爆弾発言をしたのが一ノ瀬だった。

「……可哀想になぁ、風丸。同じ被害を受けているのに、風丸だけが女装までしないといけないなんてさ」
「一ノ瀬……」
「うん、風丸。お前、男らしいよ。我が身に降りかかった火の粉は、ちゃんと自分で払うんだもんな。どんなに女顔で、女装をすれば、そこいらの女の子じゃ敵わないくらいの美少女に変身しても、お前は男の中の男だよ!!」

 円堂が、その言葉にはっと胸をつかれたような表情を浮かべた。

「……、そっか。そうだよな!! 振り掛かった火の粉は自分で払わないといけないよな! 判った! 俺もやる!!」
「円堂……」

 女装から逃げられない自分の為に、円堂もやってくれる。
 風丸には、もうそれだけで救われたような気持ちになっていた。

「そして、鬼道・豪炎寺!! お前達もだ!」

 びしっと、雷門サッカー部キャプテンの威厳を持って残る二人に言い放った。

「―― !! ――」
「なっ…、円堂、お前……」

 反論しようとした鬼道の言葉は、春奈の一言で封殺される。

「ありがとう、お兄ちゃん!! 春奈の為に、そこまでしてくれるなんて……。春奈も、一杯協力するからね!」
「あ、ああ……」

 こうして、鬼道の退路は絶たれた。

「豪炎寺……」

 鬼道がかけた、低くドスの利いた声。

「……判っている」

 さり気無く親指を立てた一ノ瀬に、夏未がちょっと微笑んで返した。

「さぁ、それでは細かい打ち合わせに入るわ。皆、自分の役回りをきちんと理解してくださいね」

 そうして、夏未が展開させるオペレーションの詳細が明らかにされたのだった。


  ■ ■ ■


 長い長い打ち合わせの後、サッカー部員たちはそれぞれ家路にとついた。
 夏未の指示で、一人遅れて部室を後にした豪炎寺は、自分の後をつけてくる何者かの気配を感じた。

( ……夏未の言った通りだな。戦いはもう始まっている、と言う事か )

 おそらく、鬼道にも円堂や風丸にも付いているのだろう。

( 常に見られている事を感じていながら、「気付かないふり」で過ごす、か。俺や鬼道・風丸は腹芸の一つでも出来る口だが、円堂が問題かもしれん )

 真っ直ぐな気性で、人を騙したり欺いたりするのが大嫌いな性格の持ち主。その太陽のような暖かな明るさこそが、円堂守そのもの。

( まぁ風丸がついているから、大丈夫か )

 ピリリ、ピリリリ、と学生鞄に入れていた携帯が鳴った。それを取り出し、開いて耳に当てる。相手は、夏未。

( どう、豪炎寺くん。相手の動きは? )
( ああ、読みどおりだ )
( そう。ではオペレーションを開始します )

 後を付けていた雷門ジャーナルの記者は、突然鳴り出した携帯の内容を豪炎寺の返事から聞き出そうと、一心に耳を傾けていた。
 その記者の後方には、こっそりこの記者を付けていた雷門イレブンの姿。

「一ノ瀬、後で皆に回すからあの記者の顔を写メっておけ」
「言われるまでも無い。とっくにやってるよ」

土門と一ノ瀬コンビで、豪炎寺の後方支援。すると、二人の耳に豪炎寺の通話相手への返事が聞こえた。

「ああ、判った。明後日は、部活も休みだから……。駅前の「ヴェルディ」に10時半、それはデマだから心配しないでいい。じゃ……」

 この日、同じような光景があちらこちらで繰り広げられていた。そして、その報告は全て夏未の元に届けられている。

「ふふ。さぁ、もっと食い付きなさい、黒野桐子。私の大事な仲間や学校に傷を付けようとしたあなたを、私は許さない!! どんな悪あがきも出来ないよう、ゲームメイクしてあげるわ」

 ……恐るべし、雷門夏未。
 フィールドに立つことが出来るのなら、鬼道にも負けない智将ぶりを発揮できたかも知れない。


  ■ ■ ■


「編集長!! 相手側が動き出しました!!」

 学校外での活動起点であるカラオケボックスに、雷門ジャーナルの記者A・B・C・D達が駆け込んで来る。

「あれだけ派手なスキャンダル記事を流した効果は高かったわね。本当に「彼女」がいるのなら、心配で記事の真偽を確かめようとするはずだもの」
「明後日は、サッカー部は練習がお休みらしく、豪炎寺くんは会う約束をしていました」
「それはますます、結構な事。他の三人はどうかしら?」

 そう言って、黒野桐子は報告を促した。

「円堂くん担当、風丸くん担当、報告します。やっぱり二人とも、この部活休みには彼女と遊ぶ約束をしていたみたいです。彼女同士も友人の様で、確認の電話が掛かってきました」
「残る鬼道くんの方は?」

 鬼道担当の記者が、少し気後れしたように報告する。

「……すみません。あの、鬼道くんの方には、それらしい動きがなかったんです」
「そう…。仕方が無いわ。出たとこ勝負のゲリラ戦を仕掛けたのはこっちだし、それで雷門夏未から、あの四人に彼女がいると言質も取った。あの記事を否定する為にも彼女たちを出さざるを得ない。でも急な事だから、足並みが揃わないのが一人ぐらいでても、ね」

 この不ぞろいさが、夏未の仕掛けた大きなトラップを本物っぽく見せていた。

「勝負は、明後日。あなた達のパパラッチ根性に期待してるわ」
「はい! 編集長!!」

 手足に使っている記者たちの報告を聞き終えると黒野桐子は、カラオケボックスのテーブルの上に1万円札を置いた。

「今日は、ここで食べて歌って英気を養って頂戴」
「いつもありがとうございます! 編集長」

 そうして、カラオケに曲を入れたり、食メニューに目を走らせる様子を見ながら、黒野桐子はカラオケボックスを後にした。そしてその足で、また別のカラオケボックスに足を運ぶ。

「どうだ? 雷門の様子は?」
「上手く行っているわ。あの記事のせいで練習どころの騒ぎじゃないし、大事な「彼女」たちを引っ張り出せば、いざと言う時の切り札にもなるし」

 桐子は待っていた男にそう答え、眼鏡を外すと大きく息を吐いた。

「この仕事も、あと少し。他の部も、ついでにアタックかけたから、かなりガタガタになってる。今度のスクープで、サッカー部のスター選手達が試合前に不純異性交遊、なんて書かれたら、雷門は終わり」
「ああ、クライアントも喜んでいる。この少子化の折、私学はどこも生徒の取り合いだからな」
「あら、本当にそれだけ?」

 学生鞄の中から煙草を取り出し、口に咥えながら中学生らしからぬ表情で相手の男の顔を見る。

「……それ以上は、首を突っ込むな」
「怖い目ね」

 男はもう答えはせず、桐子をカラオケボックスのソファーに押し倒した。


  ■ ■ ■


 オペレーションの開始から、二日目。
 夏未のプランに、腹を括った鬼道の修正を加え、晴れた土曜の部活休みの日に、それは決行された。各セクションに部員を配置し、雷門ジャーナルの記者を完全にマークする。フィールドで常に相手チームをマークするよう練習を重ねてきた彼らには、朝飯前のこと。

「編集長、今、豪炎寺くんの家の前で待機しています」
「判った。何かあったら連絡して」
「はい」

 記者Aは、自分も監視されていることに気付かず、豪炎寺の動きを探っていた。

( 豪炎寺、そろそろ行くぞ )

 豪炎寺の後方支援についている土門から、メールが入る。

「……馬鹿馬鹿しいにも程があるが、夕香の為にもそのままにしておく訳にはいかんからな」

 厳しい眼差しはそのままで、豪炎寺は家を出た。わざとリークさせた情報どおり、駅前の喫茶店「ヴェルディ」に10時半。コーヒーを注文して、駅の改札が見える席に着く。明るい午前中の陽の光の中、電車が到着したらしくザワザワとした人波が改札口の階段を下りてくる。ふと、人波の中で白いワンピース姿の少女が立ち止まった。

「来たな」

 喫茶店の窓ガラス越しに交わす、アイ・コンタクト。
 豪炎寺に張り付いているパパラッチの視線も釘付けにして、その少女が豪炎寺に微笑みかける。長い髪はいわゆるお嬢様結びと言われる大きなリボンで一つに纏められ、緩やかなラインを描いて背中に流れる。頬の輪郭に沿って左右に細い縦ロールがさらに可憐さをまし、薄い茶色の瞳とも合いまって、誰もが振り返るような深窓の令嬢がそこにいた。
 その姿を見た豪炎寺の目にも、笑みが浮かぶ。

「うわっ! なんて綺麗な人なんだろう……。上品そうで、可憐で。これじゃ、どんな風に撮っても、素敵なベストカップルにしかならないよ!!」

 そう、一緒に居るだけで好感度が上がるような、白いワンピースの美少女。
 それは雷門一の俊足DF、風丸一郎太だった ――――
 


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Date:2012/03/11
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