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□ DATE FORCE □

Operation Chord : 「DATE FORCE」5

5.MISSION 4.Side 円堂


「うわっ!! なんて大胆な子なんだろう!」

 植え込みの影から円堂の様子を観察していたパパラッチは、デート相手の思いもかけないような行動に、自分も少し顔を赤らめる。それはこのパパラッチの眼には鬼道の行動が、まるで久しぶりにあった恋人に抱きついたように見えたからだ。

「円堂くんと風丸くんの恋人疑惑は吹っ飛んじゃったけど、でももっと衝撃的なシーンが撮れそうだわっっ!!」

 見た感じ、積極的なのは彼女の方かな? と思う。

「……南米系のハーフかクォーターかしら? あの子」

 第一印象のエキセントリックなイメージは、ドレッドな黒髪と潤んだ大きな黒い瞳だけではなかった。
 実は鬼道が日常的にゴーグルを着用している為、外すとどうしても日焼けが目立つ。
 それを隠す為に女装の仕上げとして、鬼道の顔は小麦色のドーランで下地を塗り、光沢のあるパウダーで血色良く仕上げられていたのだ。

「情熱的なんだろうなぁ……。あれは絶対、彼女の方から円堂くんにコクった口ね」

 再会のハグ(…をしたように見えたが、実は耳打ちをする為のポーズ)の後、言葉を遮る為に鬼道が円堂の口元に人差し指を立てたのを、このパパラッチは「キスは後でね♪」のサインに受け取っていた。

「後で、じゃなくて、今!! 今、やってよ!!! 雷門中サッカー部キャプテン円堂守、ラテン系美少女と熱烈なキスシーン!! なんて、きっと誰もが食いつくわ!」

 妄想力が強くなくては、物など書けぬ。
 ましてや、ゴシップ記事専門であれば、その手の妄想はお手の物。
 目の前の、隠された真実など見抜く目もなく、ただ一人ふんふんと鼻息を荒くしていた。

「……あの興奮ぶり、お前がお宝グッズを探し当てた時に似てるな」
「止めて下さい、失礼な! 僕のは神聖な趣味です。あんなリアルな下賤な妄想と一緒にしないで下さい」

 ニヤニヤしながら言った松野に対し、目金はきっぱりとそう斬り捨てた。

 鬼道に見るな! と釘を刺されていたが、それでも円堂の支援とパパラッチ監視の為には、ある程度の距離まで詰めている必要がある。当然、鬼道の女装姿もカチンコチンな円堂の姿も、そしてそんな二人に興奮しまくりのパパラッチの姿も、視界に入っている。

 そんなギャラリーの思惑を他所に、鬼道はまだ円堂の首に片手をかけたまま小声で指示を出す。

「……パパラッチは、今俺達の前の茂みに潜んでいる。声は、さすがに聞き取れないだろうが、俺達の動きは良く見えるはずだ」
「ああ……」

 さっと、円堂の身体に緊張が走る。

「とりあえず、座れ」
「あ、うん……」

 話してみれば、間違いなく天才MFの鬼道有人。しかし、見た目のハーフ風の美少女ぶりに、円堂の頭は理解容量を超えて、クラクラしていた。

「あ~あ、座っちゃった。彼女がダメよ、って言っても、そこは円堂くんが、こうガバッ~~~って」

 興奮したパパラッチが、デジカメを持っていない方の手で、空を抱き寄せるようなゼスチャをする。その様子を、後方から監視しつつ ――――

「なぁ、目金。なんだかあいつ、面白いな」
「そうですか? 肉食過ぎて、僕の好みじゃないですけど」


   ■ ■ ■


 ぎこちないデートを続ける、円堂と鬼道。
 そんな二人に、興奮(?)してヒートアップするパパラッチ。
 思いっ切り冷めた目で見ている、松野と目金。

 しーん
 
 し――ん

 し~~~~~ん

 ベンチに腰掛けたまま、動かない二人。
 そんな二人に、焦れて手元にあった枯れた小枝をぺしっと折るパパラッチ。

「もうぅぅぅ~~~! 何してるのよ、二人とも!! なに? あんた達は一緒にいるだけで楽しいって感じの幼稚園生と同じなの? 違うでしょ、違うでしょっっ!! 特に、そこの彼女っっ!! アレだけ初回で熱烈なハグしておいて、なんで大人しく座ってんのよ!!」

 ぴしっ、ぺしっ、ぼきっ、と段々その音は大きくなる。

「……おいおい、あれって隠れている意味あんのか?」
「トリップしてるんでしょうねぇ~。自分の妄想の世界に」

 行き詰るような空間で、衆人環視(ってとりあえず3人?)の中で、円堂はたらりたらりと脂汗を流しながら、自分の膝を掴んでいる。

「おい、円堂。一応俺達は『デート』中なんだぞ」
「判ってる、判ってるけど……」
「なら、それらしい会話を振れ」

 小声で、しかもさらに外部に聞こえないよう、円堂の耳元に口を寄せてそう囁けば、傍目には恋人同士の内緒話の様。困って焦って赤くなった顔をする円堂を見れば、ますますその感は強くなる。

「いいわ、いいわv その調子よ、彼女!! 円堂くんは初心で晩生なんだから、彼女からガバッっていかなきゃ、ダメよっっ!!!」」

 穴が開くほど見つめる、と言う言葉があるが、この時のパパラッチの視線は、それこそ槍が突き刺さるほどの強烈さだった。

「鬼道……」
「なんだ」
「俺、視線が痛い」
「……俺もだ。俺は視線だけじゃなく、この格好も痛い」

 そう言うと鬼道は、いつになく顔を赤らめ下を向いた。

「あら? なに? 何か話してるわ♪ 彼女、赤くなっちゃった♪♪」

 パパラッチの期待がそのまま、この場の空気を作り出す。この異様な緊張感に耐え切れなくなったのか、突然円堂が鬼道の肩に両手を置き、顔を近付け、切羽詰ったような表情で一言叫んだ。

「もう我慢出来ない!! やろう! いや、止めてもやるぞ!!」
「え、えんどう……!?」

 鬼道の眼が、信じられないものを見たように見開かれていた。


   ■ ■ ■

 
( キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! )


 心の中でガッツポーズのパパラッチ。

 面食らったように固まる、後方支援の松野と目金。
 はっと我に返って、慌てて円堂から見えはしないのにぶんぶんと手を振り、これから起こす行動を止めようとする。

「ダメです、キャプテン!! 見た目はラテン系美少女でも、中身はあの鬼道です~~~っっ!!!!」
「止めろ! 円堂!! 鬼道が風丸に殺されるぞっっ!」

 大声で叫びたいのに、声が出ない。
 掠れ、隙間風のような声で二人は叫んだ。


 ポーン ――――

 
 次の瞬間、円堂が手にしていたサッカーボールを大きく蹴りだしていた。

「あっ」
「あ……」

 同時に同じ音が、松野と目金の口から漏れる。
 視線を隣の鬼道に向ければ、頭が痛いといわんばかりに額を押さえ込んでいる姿。

「……円堂のバカ。逃げ出しやがった」

 自分が蹴りだしたサッカーボールを追ってベンチから離れた円堂が、まだベンチに座ったままだった鬼道に声をかける。

「サッカーやろうぜ!!」

 鬼道は深く、深く溜息をついた。
 このサッカー馬鹿には、まだ「デート」なんて高尚なイベントをこなせる訳がないと実感して。

「……仕方ないな。まぁ、これが偽らざる円堂守、だからな」

 鬼道が立ち上がるのを確認して、その足元にパスを送る。いつも履いているサッカーシューズではないけれど、遊びで蹴るならこのブーツでも構わない。鬼道も、足に触れるサッカーボールの感触、蹴った時の衝撃に、このなんともいえない緊張感から開放されるような気がした。

「えええっっ~~~!!! なんで、そこでサッカーなのよ!? フツー、彼女が隣にいて、こう我慢出来ない!! とか叫んじゃえば、最低でもぎゅっと抱き締めて、チューくらいするでしょ、フツー!!」

 隠れていることも忘れて、思わず茂みから立ち上がり、ダンダンダンと足を鳴らす。

「……フツーじゃないもんな、俺らのキャプテン」
「ええ。筋金入りのサッカー馬鹿ですからね」

 やれやれと、肩を落す支援組二人。
 ここまで計算が狂えば、もう出たとこ勝負だと鬼道もサッカーに興じることにした。どちらも共にデートより、こうしてサッカーボールを追う方が楽しくてたまらないと感じている。

「楽しそうですね、鬼道さんも」
「なんだかんだっても、サッカーなんだな」

 サッカー馬鹿、その1・その2を見るような、生暖かい視線を送る二人であった。

「……もう、バッカじゃないの? サッカーのどこがそんなに楽しいのよ。彼女だって、きっと円堂くんにキスくらいして欲しいと思ってるわよ!!」

 判らないと呟きながらも、まだあの二人を一眼レフのデジカメのファインダーで追っているのは、ある意味良い記者根性の持ち主かもしれない。
 ズームの倍率を上げて、二人の表情を追う。遊びだからか、その表情は柔らかく、ただただサッカーが好きだ! という感情に溢れていた。

 円堂が少し強めのパスを出す。鬼道はそれをなんの苦もなくピタッと足元で止め、体勢を整えて、綺麗なフォームで小手調べのシュート。パァーンと気持ちの良い音を響かせて、サッカーボールは円堂の腕の中に収まる。

「……凄い。円堂くんがサッカー上手いのは判るけど、あの女の子も上手だわ」

 円堂のパスが、吸い付くように鬼道の足元に収まる。そのボールを返すと、ダイレクトで違う方向にパスを出された。が、その方向は既に知らされていたように、女の子は素早く移動し、正確にキャッチする。

「へぇ~、あんなに違う方向に飛んだボールなのに……」

 いつの間にか、デジカメのシャッターを押すことも忘れて、その姿を追い続ける。彼氏彼女といった属性を越えて、サッカーが好きだという二人のその気持ちに、強く惹かれて。
 あんなに緊張して固くなっていた円堂の顔に、太陽にも負けない元気な笑顔が浮かんでいる。

「……そうだよね。円堂くんはサッカーが大好きなんだもん。その彼女もサッカー好きなのは当たり前だよね。彼女は控え目だけど、円堂くんは本っ当にサッカーが好きだっっ!! て笑顔だね」

 しばらくして、パパラッチの手元で、ジィーと言う小さな電源を切る音がした。
 そうして、その子は春間近な、晴れた空を見上げる。
 昼間近、空の天辺で笑っている太陽。

「あ~、いいお天気だなぁ。暖かくて気持ちが良い」

 もう一度、まだサッカーに興じている二人に目を向け、手にしたデジカメに視線を落す。

「曇らせたくないなぁ……」

 小さく呟くと、その子はデジカメからSDカードを取り出し、茂みに投げ捨てた。

「うん、これでよし」

 そう呟くととても晴れやかな表情で、すぐ近くにいた松野や目金に気付きもせずに、公園の出口に向かう。

「な、なんですか? 今の呟き!?」

 目金が驚いたように公園を出てゆく女の子を見、松野は茂みに投げ捨てられたSDカードを拾い上げた。

「ん~、まぁ、なんだ。多分、あの二人のサッカー馬鹿さ加減に中てられたんだろうさ」

 今となっては、ミッション中なのも忘れてサッカーに夢中になっている二人の元へ、松野と目金は、この二人の『この場』でのミッション終了を告げに近付いて行った。
 

   ■ ■ ■


 風丸と鬼道を可愛い女の子に変身させた後、夏未たちは一旦雷門邸に戻り、各ポジションに配置した部員達からの報告を聞いていた。
 動きの無い、実は替え玉に摩り替わった風丸・鬼道担当のパパラッチ達は、未だそれぞれの持ち場から動いていなかった。それを少林と栗松からの報告で確認する。

「……上手く行っているみたいですね」

 雷門家のメイドがサービスしてくれた紅茶とサンドウィッチで軽く食事を済ませ、次のミッションの為の時間調節を図る。
 木野がもう一杯紅茶のお替りを頼んだ時、その携帯が鳴った。

「はい、木野です。あ、目金くん? はい、はい…、えっ? 円堂くんに付いていたパパラッチが離れた? デジカメのSDカードを捨てて……。今、夏未さんに替わります」

 目金からの報告を聞き、それを伝えて木野は夏未に自分の携帯を渡した。

「………………。そう、それはその子が戦線離脱してと思って間違いないでしょうね。判りました。それでは今から鬼道くんを回収に行きます。予定通り、そのまま駅へ向かい次の駅で合流するよう伝えてください」」

 短く打ち合わせ、通話を切った夏未が携帯を木野に返す。

「あの、お兄ちゃん達の作戦はどうなったんでしょうか?」

 自分達の手で作り出した幻のラテン系美少女の結果が、心配でたまらない春奈である。

「首尾は上々よ、音無さん。まず一人、戦線から離脱させたわ」
「お兄ちゃん達が…、ですか?」
「ええ、そうみたい。理由は良く判らないけど」

 夏未も手にしたティーカップの中身を飲み干すと、すっくと椅子から立ち上がる。

「では、私たちも動きましょう」


  

「……以上、夏未さんからの伝言です」

 軽く一汗かいて、自販機の前にいた二人の元へ行き、そう伝える。

「えっ? 終ったのか?」

 円堂が目を丸くして、そう聞き返した。

「ああ。お前達のサッカー馬鹿ぶりに、バカバカしくなったんだろうな」

 松野にそう言われ、顔を見合わせる円堂と鬼道。

「えっと…、でも、良かったじゃないか! 鬼道。お前も早くその格好から開放されたいだろ?」

 そう言った瞬間、さらに鬼道は顔を赤くした。そして、ボソっと ――――

「……まだ、だ。俺達は、このまま駅まで行って、お前に見送られて俺が電車に乗り込むまで、が筋書きなんだ」
「どうして? もう、俺にくっついていたパパラッチはいないんだぜ?」
「俺達のこの姿を見せているのは、パパラッチだけじゃないからだ」
「ん?」

 首を傾げる円堂。

「あのデマを打ち消すだけの、目撃者を作ることも目的なんだ」
「ああ、そうか」

 ますます真っ赤になって、その姿さえ小さくなったように感じられる鬼道。
 その姿を見て、松野は思う。

( ……確かに鬼道は戦略の天才かもしれんが、本当はどーしようもないMじゃね? 俺なら、人目につくところをそんな格好で歩きたくねぇ~~~ )

 自分で発案したこととは言え、これから不特定多数の目に晒される事を考え、恥ずかしさで俯いてしまう鬼道。それを心配そうに見守る円道。

 後姿だけ見れば、別れを惜しむ恋人同士のように見えるかも? しれない ――――






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Date:2012/03/11
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