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□ DATE FORCE □

Operation Chord : 「DATE FORCE」4

4.MISSION 3.Side 鬼道


「今、風丸くんを送り出したわ。私も鬼道邸に向かっています」

 夏未からの連絡が鬼道の携帯に入る。鬼道が部屋の壁にかかっている時計を見れば、10時15分。自分の部屋のレースのカーテン越し通りの様子を窺えば、鬼道邸の表玄関を見張るように、電柱の隠れて黒い人陰。

「ふん、お前等をきりきり舞いにさせてやる」

 プルルルッと、また携帯が鳴る。

「こちら、栗松。表玄関、位置に付きました」
「ああ。お前の所から、俺に張り付いているパパラッチの姿が確認出来るか?」
「はい。見えます」
「よし。そいつから目を離すな。何かあれば、すぐ俺に知らせろ」
「了解!」

 栗松との通話を終らせると入れ替えに、今度は影野から掛かってくる。

「……影野です。裏口、誰もいません」
「判った。後5分くらいで雷門の車が着く。もし、何か変化があれば……」
「はい、すぐ知らせます」

 手短く指示を出し通話を終らせる。
 そして、また一本の電話。

「染岡だ。今、お前の家の前に差し掛かるところだ。夏未からの連絡はあったか?」
「つい、さっきな。視界を遮るのは、表だけでいい」
「そうか、裏と二手に分かれていたらどうしようかと思ったが、やりやすくなったな」
「念には念を入れて、だ。篭脱けも風丸と同じでは、パパラッチ達が話を情報を交換した時に気付かれる可能性があるからな」
「だが、俺と壁山は見られてるぞ?」
「構わん。お前達は俺の家の側を通りかかっただけだ。俺が裏口から雷門の車に乗り込むまでのほんの一瞬、パパラッチの視界を遮ってくれれば。合図は俺が出す」
「分かった」

 その通話を終らせると、鬼道は裏口へと回った。勝手口を開け、裏木戸の向こうを凝視する。微かなエンジン音が近付いていたのを確認した。

「よし!」

 鬼道はGO! とだけ打ち込んだメールを染岡に送信した。メールの着信音を聞いた染岡が、壁山と当たり障りに無い会話をしながら、ゆっくりパパラッチの隠れている電柱の側に近付いてくる。雷門中サッカー部員の二人に気付いたパパラッチは、さらに物陰に身を潜める。その一瞬をついて、鬼道が裏木戸を抜け止まる事無く低速で走行中のリムジンに近付く。リムジンのドアが内側から開き、中からモジャ頭を後ろで一つに括った宍戸が飛び出してきた。

「影武者、入ります!」
「頼んだぞ、宍戸」

 宍戸と入れ替わり、車中に収まる鬼道。鬼道を乗せたリムジンは、住宅街を静かに走る風を装って、パパラッチの監視から抜け出した。鬼道の部屋に入った宍戸の影を、じっと凝視するパパラッチ。何が起こったのか、気付くすべもなく ――――


  ■ ■ ■


「う~、ドキドキする。俺、こんなの初めてだからさぁ」

 デートに見せかけた、壮大なトラップ攻撃にいつにない緊張感を感じている円堂。そんな円堂をフォローするため朝っぱらから円堂の家には、二人のサッカー部員がやってきていた。

「珍しいですね。キャプテンがそんなに緊張するなんて。どんな大きな試合でも、そんな顔していませんでしたよ?」

 と、目金。

「そりゃ、試合ならなぁ。いいか、目金。キャプテンは今から、デートなんだぜ、デートv それも……」

 もう一人、円堂を支援する松野が、もう我慢が出来ない! と言った風に笑い出した。

「女装した鬼道とだぜぇっっ――!! 緊張しないで要られる訳がないって!」

 その時、ピロロロロと目金の携帯が鳴った。

「あ、木野さん? 準備が出来た。判りました、キャプテンを連れて家を出ます」

 その言葉に、円堂の体が硬直するのがわかる。

「キャプテン、そんなにカチカチだと怪しまれるぜ。もっと、リラックスリラックスv」

 楽しい見世物くらいの感覚で、松野が円堂の背中をバンっ! と叩いた。



( あ、編集長ですか? 今、円堂くんが家を出ました。えっと、なんだか付き添いみたいな感じで、他にサッカー部員2名が同行しています )

 円堂に張り付いているパパラッチの報告を受けた黒野桐子が、怪訝な顔をした。

( 付き添い? デートに? 幼稚園生じゃあるまいし )
( でも、本当にそんな感じですよ? 円堂くん、もう緊張でガチガチだし )

 ふうぅ、と桐子は息をつく。
 確かに雷門中サッカー部キャプテン円堂守は、サッカーへの情熱は、誰にも負けない。どんな相手にも怖れず立ち向かう勇気を持っている。しかし、一男子中学生として見た場合、まぁ、かなり幼い部類に入るのではなうだろうかとは桐子も思っていた。

( ……判ったわ。とりあえず、デートシーンと彼女の写真を撮っておいて。彼女側から攻めてみましょう )

 編集長とそんな会話を交わし、通話を終えると円堂付きのパパラッチも移動を開始した。


 円堂より先に待ち合わせの公園についた鬼道は、恥ずかしさで身を小さくしていた。どんなに妹の春奈に、「お兄ちゃん、可愛い!!」と言われても、喜びも出来なければ自信にもならない。

「う~~~ 早く来い! 円堂!! とっととこんな羞恥プレイから開放されたい」

 そんな恥ずかしオーラが強力に放出されているせいか、鬼道有人として常にある不遜さが、まるで感じられなかった。

「えっと、確か待ち合わせ場所はこの公園でしたよね? キャプテン」
「あ、ああ……」

 公園の入り口で立ち止まる三人。

「じゃ、俺達はここまでで」

 ニヤニヤしながら松野がそう言う。

「えっ? お前達、ついてきてくれないのか?」
「当たり前ですよ、キャプテン。デートに付き添いが付くなんて、どんだけ過保護なんですか!」
「ううぅ~~、でもぉ……」

 お守り替わりか円堂は、家から持ってきたサッカーボールをぎゅっと抱き締めた。

「……それに、さ。俺らも、重々言われてるんだよな、鬼道に。絶対に見るなって」

 パパラッチは、そんな会話を盗み聞きながら、どれだけ円堂が初心なのか実感する。仲間に茶化されないよう釘を刺す、鬼道の優しさの断面を見たような気すらした。
 仲間と別れ、緊張で手と足が一緒に出る円堂の後を、ひっそりとついてゆくパパラッチ。その後を、かなり距離を取って目金と松野が付いてゆく。

 先に鬼道を見つけたのは、そのパパラッチの方だった。いや、もちろん、それが「鬼道」だとは気付いてはいないが。

 公園の中央あたりのベンチに一人の人影。
 小さな感じで、暖かそうなニットファッションにもこもこのブーツ。
 ボリュームのある黒髪ドレッド、前に落ちる前髪分のドレッドの束がゆらゆら揺れて、不安な心を表している。

( ……あの子かな? なんとなく、エキセントリックな感じの子だわ )

 カシャリ、とシャッターを切る。
 キョロキョロしている円堂が、ようやくベンチに座る人影に気付き近付いた。鬼道が小声で円堂を呼ぶ。

「……ここだ、ここ! 早く来い!!」

 様子が判る距離まで近付いて、円堂の足は止まった。思わず……

「お前、誰だよ?」

 ぽろりと、本音が。

「わっ、馬鹿!!」

 これ以上、円堂に何か言わせないためにも、鬼道は円堂の首に手を回し、自分の顔の近くに引き寄せ、耳元で囁く。

「俺だ、俺! 鬼道だ!!」
「え~、でも、鬼道なら……」

 まだ何か言いそうな円堂の口を、人差し指を立てて黙らせる。

「見られているのを、忘れるな!」
「ああ、すまん」

 ようやく一目見た時の衝撃から立ち直り、円堂も鬼道の隣に腰を下ろす。
 し~ん、と静まり返る二人の間。

( あ~、びっくりした。だって、髪の色違うし、ゴーグルがなくて、大きな黒目ウルウルだし、まるっきり別人なんなもんな。それに、ちょっと可愛いかなぁ~ て…… )

 二人を監視するパパラッチ。
 そのパパラッチを監視する、松野と目金。

 今、異色のキャプテン同士のデートが始まろうとしていた。


   ■ ■ ■


「……変ねぇ。豪炎寺くんにつけた子からの連絡がないわ」

 黒野桐子は、今回の取材攻撃の基地にしているカラオケボックスでノートパソコンを立ち上げ、紙面の作成に掛かろうとしていた。一番最初に動きのあった豪炎寺達のデート場面の画像がメールで送られてくるのを、今か今かと待っているのだ。
 じりじりした気持ちで、豪炎寺担当の記者の携帯を呼び出す。が、帰ってきた表示に黒野桐子はその大人びた表情を少し歪めた。

 ディスプレイには、着信拒否の文字。

「何かあった……?」

 軽く胸騒ぎがする。
 夏未と鬼道のフォーメーションが、機能し始めていた。


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Date:2012/03/11
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