保管庫

□ スポンサー広告 □

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

*    *    *

Information

□ DATE FORCE □

Operation Chord : 「DATE FORCE」7

7.MISSION 6.Side 風丸×円堂 Ⅰ


「……おかしい。どうして連絡がないのっっ!!」

 イライラした様子で黒野桐子は携帯を操作していた。一人からは着信拒否され、もう一人は携帯の電源を切っているようだ。どちらも、午前中から動いた豪炎寺と円堂に付けた子達。

 桐子は、残る二人に連絡を取ってみる事にした。風丸の家の前で張り込んでいた子の携帯がブルルッと振動する。

「はい…。あっ、編集長」

( ……そちらは、まだ動きはない? )

「はい。待ち合わせはお昼からですから、そろそろかとは思いますが」

( そう…。あなたの所に他の子から、何か言ってきてはない? )

「いいえ。誰からも連絡はありませんが……」

 通話口の向こうで、何か考えて気配を感じた。

( 判ったわ。動きがあったら、すぐに連絡して )

「はい。判りました」

 それだけ言って、通話を切る。あまり長い時間、ここで待っていたからか、ほんの少しだけ特ダネを撮る!! というテンションが下がってきたのは否めない。

「……何かあったのかなぁ」

 そう一言呟いて、また風丸の家を見張り続けた。


「……いい加減自分達がバカやってることに気がついて、さっさと引き上げればいいのにな」

 そう言ったのは染岡。鬼道邸まで足を運んでいた染岡と壁山が、ずっと風丸の家の近くで監視を続けていた小林と合流し、未だ自分たちに気付いていないパパラッチを遠目に見ている。

「そ、そうっスね。豪炎寺さんとキャプテンについた二人は、もうこんな事は止めたっスからね」
「ああ、そうだな」

 この二人は、鬼道が無事屋敷に帰りついた連絡を受けた時に、その戦果を簡単に知らされていた。

「……でも、鬼道さんが家に戻るのに、お前達が目隠し役しなくて良かったのか?」

 ここ同様、鬼道邸にも張り付いているパパラッチがいる。鬼道を連れ出す時には、染岡と壁山が視界を遮る役をしていた。

「ああ、1回目は怪しまれなくても、2回も続けば怪しまれるってさ。それに、あの家はデカイから裏口は死角になりやすい。加えて長時間の張り込みで、注意力も落ちているだろうし、下手な小細工よりもスピードで勝負すると言ってな」
「確かに。あんなゴッシプ記事しか書けない奴等のチームワークや個人力と、俺等雷門イレブンの実力とを比べればね!」
「そういう事っス! 今度は風丸さんを家に帰すお手伝いっス!!」

 乱れの無いチームワークは日頃の鍛錬の賜物である。


   ■ ■ ■


 風丸にああ言われては、殊更風丸のお嬢様姿を見せびらかすような散策はできないなと豪炎寺は、夏未から連絡が来るまで美術館近くのカフェで過ごすことにした。待ち合わせした喫茶店でもそうだったが、ここでも豪炎寺と風丸のカップルは人目を引かずには要られない。とにかく『華』のある二人である。行き交う同じ年頃の男子学生が、ぼぅとなって熱い視線を風丸に送ってきていた。

「……早く、元に戻りたい」

 いい加減、そんな視線に晒されるのに飽き飽きしてきたのか、軽い嫌悪感を感じたのか、上品にティーカップを口元に運びながら風丸が本音を零す。

「雷門から連絡が来れば、直ぐに移動だ。それまでの辛抱だろう」
「ああ、そうだな。嫌な事は先に終らせるに限るな」

 同じく涼しげな顔でコーヒーを飲んでいた豪炎寺だが、風丸の返事に初めてブラックコーヒーを飲んだ子どもよりも苦い顔をしている。その様子を上目遣いで見やりつつ、くすっと風丸が笑った。

「……俺が男に戻って、お前が女になる番だからな」
「うるさい」
「見物だろうな、お前の女装姿。マネージャー達がどんな服を用意しているかなんて、前もって知らされてないからなぁ」
「でも、お前の格好を見れば、それなりに似合う服を用意してくれているみたいだ」
「だからだ。豪炎寺、お前に似合う女物の服って、何があると思う?」

 少し意地悪げな風丸の言葉に、ぐっと返事につまる豪炎寺。自分でも想像する事を拒否している。そこに、ようやく待ちかねた携帯が鳴った。

「……俺達のデートもこれで終了。さぁ、駅まで『らしく』歩いてゆこう」

 そうして駅に現れた二人はしっかりと、その姿を雷門の生徒たちの何人かの目に焼き付けたのだった。


   ■ ■ ■


「お待ちどう様、風丸くん」

 鬼道と同じく隣の駅で降りて、地下駐車場へ。そこで、見慣れた夏未のリムジンを見つけ、近付いてゆく。中から秋が顔を出して、そう風丸に声をかけ中からドアを開けてくれた。その労いの言葉に、にっこりと柔らかい笑みで返す風丸。

「……鬼道は無事、家に戻れたんだな」
「うん。鬼頭くんの家は、裏口が使えるから、もう簡単に行こう! って事になって」
「宍戸くんが影武者で入っていたから、裏口の近くまで来た時に、ぱっと二人入れ替わってもらったの。見張りは表玄関しか見てなかったから、気が付かないのよね」

 そんな説明をしながらも、秋と春奈の手はどんどん風丸を男の子に戻してゆく。お嬢様結びのリボンを解き、いつものように高い位置でポニーテールに結ぶ。前髪も下ろして、左目を隠すと、風丸もようやく自分に戻れたという気がした。
 後は服を取り替えるだけ。パンプスを履き慣れたスニーカーに替え、細身のジーパンを履く。それからワンピースを女の子二人に手伝ってもらって上から脱がせてもらい、シャツを着込んで、半田から借りたフード付きのジャケットを羽織る。これで、このリムジンに乗り込んだ時の、風丸一郎太だ。

「お兄ちゃんの時は、女装を落すのに時間が掛かっちゃったけど、風丸先輩は簡単で楽ですね」
「楽?」
「そうそうv 鬼道くん、カラーコンタクトしたりファンデーション塗ったり、ヘアカラーで髪色変えたりで、けっこー大変だったの」

 てへへ、といった感じで秋が笑う。夏未も薄く苦笑いを浮かべていた。

( ……鬼道、お前一体どんな女装させられたんだ……? )

 風丸は、見たいような見たくないような、そんな気がしていた。
 が、気を取り直し次の行動を確認する為、夏未に短く問い掛けた。

「俺は、どうやって家に戻るんだ?」
「また、染岡君と壁山くんに合流してもらいます。風丸くんのデートを冷やかすって役柄で、雷門パークに同行させますから」

 前席に座っていた夏未が、風丸の問いそう説明をした。

「デートを先に終らせた豪炎寺くんと円堂くんは、他のサッカー部員たちと駅前のカラオケボックスに遊びに行くようになっています。これは、今から女の子に変装する豪炎寺くんと円堂くんのアリバイを作るためです」
「ん? じゃぁ、二人の着替えはカラオケボックスでやるのか?」
「いいえ、それではお店の人や、カラオケボックスを出た時に女装した二人を見られてしまうでしょう? あくまでも、カラオケボックスには影武者を立てます」
「……それ、誰が?」

 その答えは、風丸の両隣のマネージャー達から帰ってきた。

「円堂くんの影武者は松野くんで、豪炎寺くんの影武者は一之瀬君」
「……そっちの方がバレないか?」
「大丈夫よ! 松野くんには円堂くんのバンダナを付けてサッカーボールを持ってもらうし、一之瀬君には、これ!!」

 にこにこして秋が差し出したのは、豪炎寺スタイルのカツラであった。

「カラオケボックスに入る時とミッションの間だけ、そう思わせておけばいいだけだから。外を歩かなくもいいし」

( ……楽しんでるんだな、皆この状況を )

 開始した時には、それなりの意味もあったはずのオペレーションも、今では雷門サッカー部一同の大掛かりなレクレーションと化しているような気が風丸はしていた。


   ■ ■ ■


 打ち合わせどおり、風丸は自分の家の近くで染岡や壁山たちと合流する。パーカーのフードを深く被り、家を出た時と同じようなポジションで自宅の玄関前に立った。その背中に、パパラッチの視線を感じながら。

「おおい、風丸!! 俺達も雷門パークに行くから、一緒に行こう!!」

 染岡が大きな声でそう言う。
 その声を合図に、風丸の家の玄関がガチャリと開いた。そして三人は家の中へ。

ピッ、と携帯の短縮ボタンを押し、風丸担当のパパラッチが黒野桐子に連絡を入れる。

「編集長!! 風丸くんのデートに、サッカー部の部員が同行するみたいです!」

( ……あなたが見つかれば、絶対取材の邪魔をされるでしょうね。一人で大丈夫? )

「はい! こう見えても、一度食いついたネタは必ずモノにしてきた私です!! 部員がどういうつもりで同行しようなんて言っているのか判りませんが、なんだかんだ言っても、現場を押さえればこちらのものですからねっっ!」

 標的に動きが出たことで、俄然記者魂に火か着いた様である。この雷門ジャーナルの記者は、方向性こそ外れてしまっているものの報道にかける情熱や実力は、公式の新聞部の部員と比べても遜色のないほどであった。

( 期待しているわ。先に動き出した二人と連絡が付かないのが気がかりだけど、あなたの記事だけでも、大いに盛り上がることでしょうから )

「連絡、つかないんですか?」

( ええ…。取材中に豪炎寺くんや円堂くんに見つかって、なにか言われたのかも知れない )

 そんな会話をしている間に、家の中でパーカーを取り替えた風丸が、染岡・壁山・半田の三人組と一緒に玄関を出てきた。

「あ、すみません! 風丸くんが移動しますので、私も動きます。他の二人には、私も手が開いたら連絡してみます」

( そう、お願いね )

 慌しく携帯を切ると、そっと四人を尾行し始めた。

「……しっかり食いついてるな」

 後ろの気配を察しながら、半田がそう言った。

「嵌められているとも知らないでな」
 
 半田に視線を送って、染岡も小声で応える。

「……忌々しい」

 いつもと違う風丸の声が、低く重く聞こえた。

「風丸?」

 らしくない響きを感じ取り、半田が声をかける。

「ああ、済まん。やっぱり、あいつ等の為にここまでしているのが、腹に来ているみたいだ」
「そりゃ、お前だけじゃないさ。お前や円堂や豪炎寺・鬼道のように大事な者の為に頑張っているのを、あんな汚い嘘八百な記事にされちゃ、俺達だって黙っている訳にはいかないからな!」

 同じく低い声で、ドスを利かせて染岡も言う。

「風丸先輩、俺も同じッス。あいつら、許せないっス!」

 みんなの気持ちは嬉しい。
 だけど、風丸は思う。

 ―――― 忌々しく思う気持ちの正体は、自分の中にある『真実』を、おもしろ可笑しく汚らしい記事にされてしまった事への怒りなのだと。


   ■ ■ ■


「な~んか、こんな所で顔見知りが集まっていると、まるで学校のトイレみたいだな」

 そう楽しそうな声を上げたのは、松野だった。それは、そうだろう。場所は駅の地下駐車場にあるトイレ。そこに中学生と思しき男子が数人たむろっている。円堂チームと豪炎寺チームの六人。これだけの中学生が占拠していれば、他の使用者は別のトイレに向かうしかない。

「円堂、バンダナとサッカーボール」

 すっと松野が手を差し出す。

「あ、ああ……」

 言われて、バンダナを外しサッカーボールと一緒に松野に渡すと、松野はトイレの鏡を見ながら、バンダナをつけ髪形を似せるようセットした。

「う~ん、キャプテンを知っている奴が見れば、物真似か? って言われるレベルですかね」

 眼鏡を指で押さえながら、目金が一言。丁度そこへ、風丸を自宅近くまで送っていた夏未たちがさらに合流する。

「……後姿だけなら、騙せそうな感じね」

( 騙す、か…… )

 円堂は夏未の言葉を、そっと胸の中で繰り返した。

「はい。これ、円道くんの着替えです!!」

 少し考え込んでいた円堂の前に差し出された紙袋。中にはピンク色の何かが入っている。

「それと、これは一之瀬くんに」

 そう言って一之瀬に渡されたのは、例のカツラであった。アメリカ育ちの一之瀬には、こういった被り物や、変装で周りを楽しませるイベントには慣れっこである。他の部員なら一歩引く所を、嬉々としてそれを自ら自分の頭に被って見せた。

「どう? 豪炎寺に見える?」

 親指を立てにやっと笑ってみせる一之瀬に、そんなポーズは絶対取らないだろう豪炎寺とのギャップを感じて、一同ぶっっっと噴出した。笑っていないのは、当の本人である豪炎寺と円堂の二人だけ。

「円堂、着替えて来いよ。俺達が見張ってるからさ」

 これから女装という難関が待っている二人は、笑うどころじゃないんだろうと思いながら、土門が笑っていない円堂に声をかける。

「あ、ああ……」

 円堂は紙袋を手にすると、人気の無い男子トイレの個室に入っていった。
 そして、待つこと10分。円堂の入った個室の扉が開き、俯いて表情は判らないが、恥ずかしさで小さく震えている円堂が出てきた。
 部室から持ってきた練習用の黒のアンダーウェアの上下。上はハイネックの長袖と、下は七部丈のスパッツ。その上からピンクのパフスリーブ、薄くて張りのある生地を三枚重ね胸の上で切り替えた膝丈のチェニックを着ていた。その上には襟と裾と袖口にファーをあしらったショートジャケット、同じく足元もピンクのショートブーツ。

 皆の眼がある意味、釘付けになる。

 円堂は、その持ち前の前向きなオーラで大きな存在感を与える。キーパーというポジションな為、どうしても大きくがっしりしたイメージがあるが、しかし意外にもチームメイトの中では小柄な方なのである。
 そんな円堂が恥ずかしさで肩身を狭くして、俯いて立っている姿はチームメイトの眼には「女の子らしく」映っていた。

「え…と、円堂くん?」

 似合いそうだなとチョイスしたマネージャー陣だが、まさかここまで似合うとは思っていなかった。秋の呼びかけに、おずおずと円堂が顔を上げる。だが ――――

「あっ……」
「う~ん……」

 その反応に、顔を上げた円堂が不安そうな顔をする。

「……やっぱり、おかしいか?」
「あ、そうじゃないの! そうじゃないんだけど……」
「うん、どこから見ても女の子に見えるんだけどさ、その、なんていうかさ」

 一之瀬も秋に続いて、言葉をかける。

「……いや、どんな格好しても円堂は円堂だなって」
「…………?」

 そんな様子を見ていた松野が一言、ポツリと言った。

「キャプテン、目を隠したほうが良いじゃねぇ? それと、その髪型かなぁ」

 松野のアドバイスを受け、春奈の眼鏡を借り、特徴のある左右のハネを風丸の髪を結ったリボンで押さえ込み、耳の上で可愛らしくリボン結びにする。
 
「ああ、これなら大丈夫!!」

 マネージャー達が、ぱちんとお互い手を合わせあっている。

「へぇ~、うん。こんな子となら、俺もデートしていいかな」

 なんて言っているのは土門。
 皆の言葉に、恐る恐るトイレの鏡を覗き込んだ円堂は、そこに見慣れぬ自分の姿を見つけ、誰よりも焦っていた。


 
関連記事

*    *    *

Information

Date:2012/03/11
Trackback:0
Comment:0

Comment

コメントの投稿

:
:
:
:
:

:
: ブログ管理者以外には非公開コメント

Trackback

TrackbackUrl:http://hokanko11.blog.fc2.com/tb.php/26-6e3e9508
この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
 
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。