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□ DATE FORCE □

Operation Chord : 「DATE FORCE」8

Side 風丸×円堂 Ⅱ 


( ……確かに可愛い )

 先ほどまで超絶美少女に変身していた風丸とデートしていた豪炎寺は円堂のこの姿を見て、こちらも満更ではないなと胸の中で思う。今からデートする風丸を、少し羨ましく思う位に。

「んじゃ、俺等カラオケに移動します」

 豪炎寺のカツラを被った一之瀬が、笑いながら夏未に声をかけた。その一之瀬の隣には、これまた円堂のバンダナを付けた松野。その二人を挟むように土門と目金、それから鬼道邸から連れてきた宍戸も同行する。

「……周りをサッカー部員で固めたら、なんとなくそれなりには見えるんですね~」

 カラオケ組を見送りながら、感心とも取れる調子で秋がそう言った。

「思い込みでしょうね。あれなら十分身代わりが勤まりそうだわ」

 そうして残ったのは、女装して眼鏡っ娘に変身した円堂と、これからどんな女装をさせられるかわからない豪炎寺と夏未達。

「風丸くん達は、もう雷門パークに向かってるので、円堂くんも風丸くん達に合流してください」
「あ、ああ。判った」

 そう答えたものの、円堂の緊張振りは鬼道とデートしていた時の比ではない。
 まるで石のように固まって、右手と右足が同時に出るような状態なのだ。

「大丈夫、円堂くん?」

 心配そうに秋が円堂の顔を覗き込む。

「だ、大丈夫だ、大丈夫。風丸や鬼道だって頑張ったんだ。キャプテンの俺がここで挫けたら、あいつ等に会わせる顔がねぇ……」

 そうは言うものの、円堂の足はブルブルと震えている。

「……木野さん、円堂くんに付いていってあげて。今の円堂くんじゃ、どこで事故に合うか判らないわ」

 ふぅと息を吐きながら、状況を判断した夏未がそう指示を出した。その言葉に、秋に悪いなと言う表情と、どこかほっとした表情が円堂の顔に浮かんだのを夏未も豪炎寺も見逃さなかった。秋に手を取られ、地下駐車場を出てゆく円堂。
 その後姿を見ながら ――――

「なんだか今の円堂くん、女の子より女の子らしいわ」
「頭がサッカーでいっぱいな分、他は幼児並なのかもしれんな」

 と、豪炎寺。

「キャプテン、本当に純情なんですねv もともと『デート』なんてイベント自体、恥ずかしくて仕方がないんじゃないですか?」
「……まぁ、だろうな」

 それは、そうだ。
 デートなんてものは、他人に見せびらかすようなものではないのだから。それを承知で、ある意味見世物になるのを覚悟でやっているこの作戦。

( ……落ち着いて考えれば、もっとマシな方法があったんじゃ ―――― )

 今頃、そんな可能性に気付いた豪炎寺であった。
 しかし ――――

「じゃ、最後は豪炎寺くんの番ね」

 にっこり笑いながら、夏未と春奈が豪炎寺に迫る。

「なかなか似合いそうな服装が思いつかなくて……」

 と、手にした残りの紙袋を豪炎寺に手渡す。
 ちらりと見えたのは、円堂と同じピンク色のなにか。

「私の知り合いの方から借りてきたものです。これならば、鬼道くんとデートしても格式負けする事はないでしょう」

 紙袋の中身を確認した豪炎寺が、脂汗を額に浮かべながら夏未に問う。

「……俺がこんなものを着れば、それこそこの作戦は台無しじゃないのか?」
「もちろん、そのままではそうなるわね。だから、もう少し小細工させてもらいます」

 小細工の言葉に、先に女装させられた鬼道のケースを思い出していた。


   ■ ■ ■


 少し前に雷門パークに着いた風丸達は、その入り口ゲートの近くで円堂が来るのを待っていた。

「えっと、現在の状況をおさらいすると……」

 と、半田が手帳の様な物を取り出して、ボールペンで風丸達女装組の名前を書き込む。

「ん? どれ、見せてみろ」

 そう言って覗き込む染岡と壁山。

「先に動いたのが豪炎寺サイドでデート相手は風丸。豪炎寺には土門と一之瀬がバックアップでついて、風丸には俺達三人とパパラッチの見張り役の小林」
「小林は小柄で身のこなしもすばしっこいから、適役だな」

 染岡が、ちらりと自分たちの様子を物陰から窺っているパパラッチに視線を向けた。そのパパラッチの後方に、小林の小さな姿。

「で、豪炎寺に張り付いていたパパラッチは風丸の説得で取材は止めて、自宅に戻った」

 横で聞いていた風丸が、小さく首を縦に動かす。

「あれ~、そうスっと、土門先輩と一之瀬先輩はお役御免っスか?」
「いや、あの二人はこれから女装する豪炎寺の為に、アリバイ工作なんだ」

 説明しながら書き込まれてゆく、バックアップ要員の名前とミッション毎のポジション。

「そして、今度は円堂の方だ。円堂には松野と目金がついた。円堂のデートの相手は鬼道。こっちには影野と栗松だな」

 メモを見ながら半田は丸印で名前を囲み、説明を続ける。

「……円堂の方も、パパラッチは帰ったんだろう?」

 まだどこか、忌々しげな響きが感じられる風丸の声。

「ああ。この松野と目金も今から女装する円堂のアリバイ工作で、土門や一之瀬と合流する」
「宍戸を忘れてないか?」
「宍戸は鬼道の影武者を務めて、その後はやっぱり後半の女装組のアリバイ工作要員として土門達に合流、だっけ?」
「な、なんだか頭がこんがらがってきたっス」

 半田が書き込むメモを見ながら、壁山が言う。

「……雷門の原案に、あの策略家の鬼道が手を加えたオペレーションだからな。ややこしくて当たり前か」

 風丸が言ったややこしくてといったその言葉には、自分が円堂に抱いている、まだ曖昧な気持ちも反映されていた。

 自分の女装姿を、円堂には見られたくない。
 自分は、男だから。

 そして、円堂の女装姿も出来る事なら誰にも見せたくない。

( ……なんなんだろうな、この気持ち )

 それでも、いつもと違う円堂の姿を見ても、ドキドキしたりせずに冷静でいようと心に決めていた。
 ふっと一息ついて視線を巡らせた風丸の眼が、その時見慣れた姿を視線に捉えた。

「あれ…? マネージャーだよな」

 ぽつりと、そんな気の無いような声が風丸の口からもれた。
 木野が入り口ゲートの前にたむろっている風丸達を見つけたのか、元気良くぶんぶんと手を振っている。

「……だな。やっぱ、円堂じゃ女装は無理だったか」

 そう言った染岡を制するように、半田が言葉をかけた。

「いや。あれ、木野の後ろに誰かいないか?」

 言われて見れば確かに木野の後ろに隠れるように、小さくおずおずと歩く、ピンク色の人影があった。


   ■ ■ ■


「……まだ、風丸くんの彼女は来ていないみたいね。それにしても、あの残りのサッカー部員の三人、折角のデートなのに物凄いお邪魔虫じゃないのっっ!!」

 人待ち風な風丸の横で、お邪魔虫な三人が頭をつき合わせて、何か話し込んでいる。風丸も時々そちらの方に視線を走らせ、一言二言何か言っているようなので、今日のデートでのアドバイスみたいなものを仲間達から受けているのかもしれない。

「ふ~ん。部員皆から公認されている仲、って事なのかしら? 人目も憚らない、正々堂々とした公明清廉なお付き合い、なんていうのはウチの色じゃないんだけどなぁ……」

 ブツブツ言いながら、そんな様子も一応デジカメに収める。
 ゴシップ専門の雷門ジャーナルとしては、当事者が隠そう隠そうとするネタほど美味しい。そんなネタを根掘り葉掘り弄くって、読み手が喜ぶような予想や妄想を詰め込んで世間に知らしめる。その記事を読んだ時の、読者の反応が楽しみでこんなことまでしているのだから。

「まさか何十年も前の中学生みたいな、グループ交際なんてダサい真似はしないわよね?」

 風丸の周りから離れないサッカー部員の姿を見てそんな予想を思い浮かべ、冗談じゃないと軽く憤慨する。デジカメのファインダー越しにそんな彼らの様子を伺うと、ぴくっと風丸の視線が誰かを捉えた様に動いたのを感じた。その視線の先にデジカメのレンズを向けると、そこに ――――

「えええっっ!! あれって、サッカー部のマネージャーじゃないの!? じゃ、風丸くんの彼女って、あのマネージャー? ……まぁ、それなら確かに部員公認の仲よね」

 う~ん、と考え込む。
 青春ドラマなどのベタで爽やか系の王道、部員とマネージャーの恋愛。しかも部員からの応援付き、と来てははっきり言って弄りようが無い。

「……せいぜい、風丸くんファンの子達の嫉妬を煽るような記事くらいかなぁ、書けそうなのは。風丸くん、密かに男の子にも人気があるから、それはそれで面白いことになるかも?」

 と、頭の中でどの方向性で記事を作るか色々アイディアを出してみる。

「あ、あれ……。あのマネージャーの後ろにくっついている子、あの子は……」

 見知った顔だけが目に入っていたパパラッチだったが、少し落ち着いてみるとどうやらマネージャーには「連れ」がいるようだと見て取れた。

「もしかして、あの子……?」

 ファインダーを覗き込み、レンズのズームを調節してその子の姿を大きく捉えなおす。短めの髪を白いリボンをヘアバンド替わりにしてまとめ、耳の横で可愛らしい蝶々結びにしている。恥ずかしげに俯いた横顔は、眼鏡をかけた目元をふっさりとした前髪が被い、どれだけシャイな性格なのかを物語っていた。
 その子を見た瞬間の風丸の表情の変化を、このパパラッチは見逃さなかった。一瞬目を見開き、やがてほんの少し微笑むようなその表情を。

「間違いないわ! あの子が本命ねっっ!!」

 ギラリと光るパパラッチの眼。
 それは獲物を見つけた、猛禽類のそれと同じだった。


   ■ ■ ■


「遅くなってゴメンね。はい!!」

 秋はそう言って、自分の後ろに隠れるようにしていた円堂を風丸の前に押し出した。秋とあまり身長が変わらない円堂が、女の子の格好で恥ずかしげに身体を縮こまらせ真っ赤になって俯いて立っている姿は、正真正銘の女の子である秋と並べても十分「女の子」らしかった。

「えっ? これが……」
「本当に、本当っスか?」
「なんと言うか、まぁ、化けたな」

 思わずもれた、半田と壁山と染岡の一言。

「こ、こんな格好、は、初めてだから……」

 チェニックの膝上あたりの生地をぎゅっと握り締め、ぶるぶる震える小さな声の円堂。ゲート前でたむろっているサッカー部員達との距離を縮めてくるパパラッチに気付いた風丸が、目線で仲間達に知らせる。

「……距離を詰めてきたな」
「ああ。風丸と謎の少女とのデート現場を押さえる為に、な」

 にやりとした笑いを浮かべるのは半田。

「で、どうするの? 風丸くん。円堂くん、こんな状態なんだけど、フォローが必要じゃない?」

 秋が、もう見ていられないほど緊張しまくってだらだら汗を流している円堂に、同情の視線を投げつつ、ここでの行動を確認する。

「……皆がいたら、あいつは俺達に接近できないだろ? 皆が俺達をガードしているみたいに思われて、また邪推されても面白くない」
「うん、それも一理あるな」

 腕を組んだ染岡が頷くと、周りの皆も同意する。

「マネージャー、円堂の事は俺に任せて。取材しているのがバカらしくなるくらい、中学生らしい明るく清く楽しいデートを演出してやる」

 それは、普段控え目で優しげな風丸には珍しいくらい、強気な発言であった。

「風丸……」

 それでもまだ心配そうに円堂が上目遣いに風丸を見れば、風丸は安心させるように、にっこりと笑いかけた。

「心配するな、円堂。俺が必ずお前を守ってやる! だから、今日は例え芝居でも、『デート』を楽しもう!!」

 そう言って、周りが見蕩れるくらいの笑顔で円堂に向かって手を差し出した。

「あ、ありがとう…、風丸」

 おずおずと、その手を取る円堂。それを見て、秋が染岡達に声をかけた。

「ここは、風丸くんに任せましょう」
「そうだな。なんか俺達、物凄くお邪魔虫っぽいし」

 秋の言葉に続けて、半田もそう言う。
 そうしてゲート前で二人を見送り、秋と染岡たち四人はパパラッチの前から姿を消した。

( やった―!! お邪魔虫が消えた!! これで、密着取材しやすくなったわ! )

 らんらんと目を輝かせ、さらに二人との距離を詰めるパパラッチ。その後ろから、小林が監視しているとも気が付かないままに。小林の携帯が小さく震える。

「あ、染岡先輩」

( 見てたか? 小林 )

「はい。先輩達は園内には入らないんですか?」

( いや。あいつを包囲するように入ろうと思う。何か合った時の為にな )

「じゃ、俺ナビゲートします」

( ああ、頼む )

 そう、あの二人に何かしようとすれば、すぐにでも取り押さえられるようにと、その準備は着々と進みつつあった。


   ■ ■ ■


 風丸と二人で残されて、円堂は戸惑っていた。風丸とは幼馴染だ。二人で遊びに行った事など、今までにも何度もある。だけどそれは一緒に遊びに行く、であって決して『デート』などというシロモノではなかった。先の鬼道とのデート作戦でも、恥ずかしさのあまり逃げ出したような円堂だ。
 それがいくら気心の知れた幼馴染相手でも、いやかえって幼馴染だからこそ、こんな女装姿で「彼女」の振りをして「デート」する、というシチュエーションに対応できずにいた。

「じゃ、円堂。中に入ろうか?」

 四人の姿が見えなくなる頃を見計って、風丸はそう円堂に声をかけた。

「風丸……」

 風丸が差し出した手を取り、それを引いて、円堂は顔を近づけないと聞こえないくらいの小さな声で尋ねた。

「お、俺…、おかしくないか?」

 恥ずかしさで赤くなった顔、涙腺まで故障したのか眼鏡の奥の大きな瞳が潤んでいる。そんな初めて見るような表情で自分の顔を見つめられ、風丸の顔も赤なる。ドキドキしないよう、冷静でいようと思っていたのに、勝手に体が反応している。このままでは、ゲート前で、二人とも真っ赤になったまま立ち往生だ。ふと、風丸の眼が円堂の髪を纏めているリボンに向いた。

「あ、これ……」
「髪、短いのに変だよな……」

 風丸の視線に気付き、またまた俯く円堂。

「……このリボン、さっきまで俺が使っていた奴だ。ほら、俺の髪が一筋ついてる」
「え?」

 円堂のリボンについていた青い髪を一筋、手に取り見せてやる。

「そっか……。これ、風丸が使っていたんだ」

 たったその一言で、円堂は自分の身体から緊張が解けてゆく気がした。

「……おかしくないよ。十分可愛いからさ、お前」
「可愛い?」
「うん、可愛い」

 そう言われて、次に顔を上げた円堂の瞳は、あのゴールを守る時の強気な色。

「……あんまり嬉しくない。つっか、お前がそう言われて嫌がる気持ちが初めてわかった」
「だろ?」

 風丸の顔にも、いつもの笑顔が浮かんでいる。
 そんな言葉のパスが繋がって、ようやくドキドキが収まってきた。

「よし! 遊ぶぞ!!」

 気合を入れるように、円堂は自分の頬をペチペチと軽く叩く。

「円堂…、今お前は「女の子」なんだから、そーゆー事はするな」

 やれやれといった感じの風丸。
 そうして二人は、初デート感たっぷりに手を取り合って入場ゲートをくぐって行った。


「はぁ~、何よ! あの二人!! 入場するまでにどれだけ照れて時間をかけてるのっっ!! 見てるこっちが恥ずかしくなるっていうの!」

 小声での会話だったため内容は聞き取られなかったものの、その様子はファインダー越しにしっかり見られている。チームメイトを追い返し二人だけになった途端、真っ赤になって動けなくなった風丸とその彼女。彼女が照れて恥ずかしがっている様子は、克明に激写した。赤い顔をして上目使いで風丸を見ているところや、そんな彼女を気遣って何か優しい言葉をかけてやった風なところなど、見ていて微笑ましくなるシーンが続出だ。
 そんな二人に中てられたのか、追跡取材しているパパラッチまで顔を赤くしていた。
 が、そんなパパラッチの事など頭から追い出して、今この時を楽しむことにした二人は早速遊びたいアトラクションの選択に入る。

「なぁなぁ、最初はなんに乗る?」
「そうだな、ここはやっぱりジェットコースターだろ?」

 そう言いながら二人は、パークの南側にある乗り場を目指す。その後ろには、雷門ジャーナルのパパラッチ。そのまた後ろと周囲には、雷門サッカー部のチームメイトがその包囲網を張り巡らしていた。




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Date:2012/03/11
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