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□ DATE FORCE □

Operation Chord : 「DATE FORCE」9

Side 風丸×円堂 Ⅲ


 最初がジェットコースター、それからゴーカートに乗り、次は海賊船。一息入れたら今度は大きな回転ブランコに。必ず二人で乗れるアトラクションばかりを選んで、それこそ楽しそうな笑顔を振りまく。

「うわぁ~~、まるで絵に描いたようなデート内容ね。そう、お子様向きの。今時の小学生でも、こんな幼稚なデートはしないんじゃない?」

 ブツブツと、そんな感想を漏らしながら二人の後をしっかり尾行する。二人が次に選んだアトラクションは大観覧車。一周15分はかかるこのパーク一人気のアトラクション。並んでいる乗客も、それなりに列を成していた。

「……大観覧車か。乗っちゃえば、その間は二人だけの密室空間。なにかあるかな?」

 観覧車の最上部にカメラのレンズを向けて被写体をズームしてみる。真下に近いからか、ズームしてみても、観覧車の下の部分しかレンズには入らない。どこか良い撮影箇所はないかと辺りをぐるっと見回すと、北側にある屋内遊技場の屋上部分に設置された展望台が目に付いた。高さ的にはほぼ大観覧車の直径と変わりないくらいの高さがある。距離的にはこちらも15分程度。

「どうしよう……。今からなら向かい側の展望台に行けば、角度的には観覧車の中も撮影可能だけど、撮影してここに戻って来るまでの間に見失う可能性があるのよね」

 楽しげな二人の様子は、沢山カメラに収めた。だけど、それらはスキャンダラスな記事に使うには場違いな写真ばかり。仮に展望台まで登ったとして、狙ったような写真が撮れるという保証は無い。
 しばらく何か考え込むと、風丸付きのパパラッチは方針を決めたように一言呟く。

「……そんな時は、特攻あるのみ!! ここは一つ、彼女を揺さぶってどこの誰か、いつから風丸くんと付き合っているのか、二人の関係はどこまで進展しているかを聞き出さなくちゃ!」

 パパラッチは、観覧車の列に並んで楽しそうに話す二人を遠目に見ながら、さらに不穏な事まで口にする。

「それに…、あの「彼女」がニセモノじゃないとも限らないし。だいたいちょっと都合が良すぎるのよ。私たちがターゲットにした4人に、それぞれちゃんとした秘密の彼女がいるなんてね!」

 読みの鋭さは、このパパラッチが記者としての本質を備えているからかもしれない。その言葉通り真実を暴く為、観覧車に乗り込む二人をじっと凝視していた。


   ■ ■ ■


「……そろそろ突撃してきそうだな」

 観覧車のゴンドラに乗り込んだ風丸が、高度を上げた事で視界が広くなった下の様子を見ながらそう呟いた。

「突撃って……?」
「下見てみろ、円堂。俺達が降りて行くのを待ち構えている」
「でも、あの連中って隠し撮りが専門なんじゃないのか?」
「……隠し撮りだけじゃ、面白い記事が書けないと思ったんだろう」
「そんな……」

 こんな姿を見られていると思うだけで、背中にびっしょり汗をかいているような円堂である。そこに面と向かって根掘り葉掘りしつこく聞き出そうとされたら、どんな事になるか判らないと軽く青ざめていた。

「大丈夫。あいつの応対は俺がする! お前は一言も口をきくな」
「風丸……」
「ゴールを守るのがキーパーなら、キーパーを守るのはDFだ」

 きっぱりそう言い切った風丸の横顔は、いつもより男らしく円堂の眼に映った。
 ゆっくりと観覧車は回り、遠く小さく見えていた人影がだんだん大きく見えてきた。ゴンドラの外から係員の手が伸び、外される入り口のロック。ゆっくり動き続けるゴンドラからまず風丸が降り、それから女装の為いつもみたいに大股で移動出来ない円堂の為に手を貸してやる。

「転ばないよう、気をつけて」
「あ、うん…。ありがとう……」

 円堂の手を引いたまま、自分の背後に隠すようにして風丸は、待ち構えているパパラッチの許へと足を進めた。

「おい。そこの君!」
「あら? 私の事?」

 明らかに声に怒りの色を滲ませている風丸の呼びかけに、少しも動じる様子を見せず、そのパパラッチはカメラを向けた。

「ああ、そうだ! こそこそと俺達の後をつけて、隠し撮りなんかして……。そんなことをして、お前楽しいのかっっ!?」
「楽しいのかって聞かれれば、楽しいって答えるわ。だって、私たちの新聞を楽しみにしている読者がいるんですもん。読者の期待には応えたいし」

 今まで散々、取材相手を困らせるような記事をでっち上げてきた連中だ。人から批難されたり抗議されたりするのも、慣れているのだろう。強気で不遜な態度は、風丸の強い語調でも崩れることは無い。

「でっちあげのスキャンダル記事で、読者を釣っているだけだろう。書かれた方の身にもなってみろ!!」
「……でっちあげって言うけど、100パーセントのでっちあげなんて私たちは書かないわよ? 今まで書いてきた記事だって、そのうちの何パーセントかは『本当の事』が入っているから、皆もそう思うんじゃないの」
「何パーセントかの本当の事、って……」

 自分の胸の中を見透かされたような気持ちになって、風丸の言葉は途中で途切れる。

「それに今日はね、風丸くんにじゃなくて、そちらの彼女にインタビューしたいんだけど」

 記者特有の勘の鋭さを感じさせる視線を、風丸の後ろに隠れるように張り付いている円堂に向けた。

「インタビュー?」
「そう、その彼女が本当に風丸くんの彼女かどうかから始まって、いつどこで出逢って、どんなお付き合いをしているのかとか、風丸くんと円堂くんの噂は知っているのかとか」

 自分の名前が出たことで、女装した円堂は小さく身体をぴくりと震わせた。

「お前っっ……!? まだ、そんな事を言っているのか!」
「そりゃ、疑いたくもなるわ。あの記事を出した途端、実はあの四人にはちゃんとお付き合いをしている彼女がいます、みたいな事を言われちゃね。このデートだって、あの記事の内容を打ち消すためのカモフラージュかも知れないでしょ?」
「……何故、そう思う」

 風丸の手が、ぐっと握り込まれたのを円堂は繋いだ手に伝わる力の強さで感じていた。

( ……マズイぞ。風丸の奴、そうとう頭にきてる。 )

 今にも切れそうな風丸の様子に円堂は、この一件の元凶であるパパラッチたちへの怒りは少し抑えられていた。

「風丸くんも、この新聞の記事を読んだんでしょ?」

 そう言うと、あの問題の紙面を開いて見せた。

「ああ……」
「この紙面の風丸くん達の写真、私が撮ったのよ。だから判る。円堂くんとサッカーしている時の風丸くんの笑顔と、今そこの彼女とデートしている時の笑顔が全然違うって事がね」
「…………………」

 それは、違いもするだろう。
 このデートそのものが嘘で塗り固められたもの。こうして円堂とデートの真似事をしていても、本当のところは心の底から楽しめるものではないのだから。

「私ね、この記事を書くためにずっと風丸くんと円堂くんを追っていた。練習中だけじゃない、学校生活の中のちょっとした遣り取りや表情もずっと。だから、気がついた。本当に二人は仲良しなんだって」
「それは、今更言われるまでもない。俺達は幼馴染で親友なんだからな!!」
「親友ねぇ……。ねぇ、風丸くん。あなた本当にそう思ってる?」

 パパラッチの言葉が癇に障る。

「……何が言いたい」

 イラつきを抑えたその声は、低く冷たく風丸の口から吐き出された。
 ニヤリと、パパラッチが笑ったように見えた。


   ■ ■ ■


「円堂くんって、彼の人柄や頑張りを知れば、きっと皆魅かれる。それは私もそう思う。だから、円道くんに彼女がいても可笑しくないなぁ、って。色んな所に…、ううん、世界中に友達がいるような彼だし、本当に円堂くんって、お日様みたいに誰にでも公平にその笑顔を振りまくんだなぁって思った」
「ああ、そうだ」

 ちゃんと判っているじゃないかと、風丸は思う。こんな性質の悪い連中でも、円堂の凄さが伝わっているのが、少し誇らしくもある。

「だけどね、風丸くんは違う。円堂くんにだけ、特別な笑顔を向けてるよね?」

 胸を突かれた。
 その一言に。

「お前……」
「それにね、風丸くん達を取材していて良く聞いた言葉なんだけど、風丸くんはファンになったり応援したりするのは良いけど、彼女になるのは二の足を踏むんだって」
「なぜ……?」

 自分に対する意外な評価に、思わずそんな言葉が口をつく。

「見比べられちゃうからだって。風丸くん、美人だもの。やっぱりそれ相応に釣り合いが取れないとね」
「そんな…、そんな見た目だとかで決めるような軽いことなのかっ!?」
「うん、そうだよね。風丸くんならそう言うと思った。だって、その後ろの彼女、言っちゃ悪いけど、ねぇ……?」

 濁した言葉の続きは簡単に予想できて、風丸は腹の底から怒りが込み上げてくるのを感じた。

「ああ、ごめんね。風丸くん、怒っちゃった? そりゃ、風丸くんが付き合おうと思ったぐらいの彼女だもん、風丸くんにとっては一番可愛い彼女よね」

 神経を逆撫でするいやらしい物言いに、そろそろ風丸も自制心が利かなくなりそうな気がしていた。

「で、ここで風丸くんに質問。そこにいる彼女と円堂くん、どっちが風丸くんにとって大事?」
「なっっ……!?」

 突然の問い掛けに、答えに窮する。

「今まで彼女を作らなかった風丸くんが、初めて付き合っても良いと思えた彼女と、十年来の幼馴染で親友でそっちの噂さえ立ちそうなほど仲の良い円堂くんと、どちらかを選べって言われたら、風丸くんはどちらを選ぶ?」

 どちらも円堂自身。
 相手を喜ばせるような答えも、円堂を悲しませるような答えもしたくない。

「俺は……」

 すぅぅと、大きく息を吸い込む。
 こんな相手に、どこまで自分の本気が通じるか判らないが、この事に関してはもう逃げないと腹を括る。

「どっちも大事だ」

 そう、どちらも大事。
 この胸に抱えている未分化な感情は、そのどちらでもないのだから。
 友情であれ、恋愛感情であれ、今はそれを本気で受け止めようと思っていた。

「うっわ~~っっ! それって、かなり都合の良い答えじゃない!! ねぇねぇ、彼女! あなたはそれで良いの?」

 からかうような、どこか高慢な響きを持った声。
 相手の気持ちを逆立てて、円堂から何か言質を取ろうとしている。

「……彼女を困らせるなっっ!! これ以上、何かするなら、お前が女の子でも容赦しないぞ!」
「私を殴るの? そんな事をしたら、雷門サッカー部の名誉に傷がつくわよ? っていうか、それだけで雷門ジャーナルの一面が飾れちゃうけど?」

 勝ち誇った声が、風丸の耳に響く。


   ■ ■ ■


「……本当にそれで楽しいのか?」
「 ――― !! ――― 」

 ぎょっとした風丸の表情と、その後ろから聞こえた小さな声の問いかけ。

「お前は黙ってろっっ!」
「ようやく口を利いてくれたのね」

 焦ったような風丸の声と、ますます勝ち誇ったようなパパラッチの声が重なる。
 制しようとする風丸の手を押し留め、一歩円堂が前に出た。
 フィールドの外に出れば、かなり小柄な円堂だ。ましてや、こんな女の子の格好をしているとは思いもつかないパパラッチは、その正体にまだ気付いてはいない。

「……もう止めよう、風丸。こんなやり方は、あいつ等と同じことになる」
「でも……」

 その声に含まれる強い響きに、風丸はこうなったら引く事を知らない強いキャプテンの存在を実感する。

「落としたりしたら悪いから、それ預かっていてくれ」

 そう言うと円堂は、音無から借りていた眼鏡を外し頭のリボンを取りそれを風丸の手に預ける。俯いていた顔を上げ、強い光を宿した瞳で、相手をじっと真正面から見つめた。

「その写真、本当にいい写真だよな。写す相手の心まで写し出せるなんて、お前本当に写真が好きなんだろ?」
「えっ……!? あなた、もしかして、円堂くんっっ!??」

 ようやく、ここに至って風丸のデート相手が女装した円堂だと気がついた。

「ああ。お前達があんな記事を書いたものだから、それを打ち消す為にこんな事をした。だけど、『嘘』を演じたって、それはやっぱり嘘でしかない。お前達の書いた記事と同じに」
「それでも良いのよ! それを喜んで読んでくれる人達がいるんだものっっ!! お陰で素敵なスクープが手に入ったわ! あの円堂くんが人目を忍んで女装姿で幼馴染とデートだなんて!!」

 カシャカシャとカメラのシャッターを切る音が連続で響く。

「いい加減にしろ!! もう我慢も限界だっっ!」

 カメラを構えたパパラッチの行動を止めさせようと、風丸が手をかける。

「なによっっ!! 邪魔しないで!」

 もみ合う二人の間に円堂は手を伸ばし、その大きな手でパパラッチのカメラをすっと大事そうに取り上げた。

「あっ、返して!!」
「……可哀想になぁ。お前、こんな場面が撮りたい訳じゃないよな。あんなに良い写真が撮れるのに」
「円堂……」

 円堂はパパラッチから取り上げたカメラを、まるで自分がいつも大事にしているサッカーボールを扱うように手の中に収めていた。

「……どんなに良い写真が撮れたと思っても、そう言ってくれる人がいなければ、それはちっとも良い写真じゃないのよっっ!! 誰からも評価されないものなんて、存在する意味ないでしょ!? だから、私は皆が喜ぶようなスキャンダラスな写真を撮るようにしたの!!」
「お前、それ本気でそう言っているのか?」

 そう言った円堂の眼が、悲しそうに揺れている。

「な、何よ! 何が判るの? あたしがこんな事をしなきゃいけなくなった気持ちがっっ!!」

 風丸は捉まえていたパパラッチの腕を離した。
 パパラッチの叫びの中に、かつての自分と同じモノを感じたからだった。

「……そうか、お前もそうなんだな。認めて欲しい。好きで頑張っていることなら、なおさらに」
「風丸くん……」
「だけど好きな事を偽って傷つけて、それで何かを手にしても虚しいだけだ。後には悔いしか残らない」
「俺、お前が撮ってくれたこの写真好きだぜ? 俺と風丸をこんな風に撮ってくれて、嬉しいくらいだ。だからこそ、スキャンダラスな写真なんて言って欲しくない」
「円堂くん……」
「もう止めろよ。このカメラが泣いてる。こんな事に使って欲しくないって」
「…………………」

 高慢なほどの強気の顔は、本当は弱い自分を隠す仮面に過ぎない。今、それはこの子の顔から外れ落ちようとしていた。

「写真、好きなんだろ? 本当は撮られた人にも喜んでもらえるような写真を撮りたいんだろ?」

 円堂の、その子にかける言葉はどこまでもあたたかい。

「……なれるのかな。こんな私でも」
「なれるさ。自分が本当に良いと思える写真を撮り続けていれば、きっとな!! 嘘が入っちゃ、本物にはなれないんだぜ? 俺さ、本当に本当を重ねて本物になっていくんだと思うんだ」

 風丸の、円堂の言葉がパパラッチの心を開放する。
 強気の姿勢を崩し、その子はポロポロとその場で泣き始めた。


   ■ ■ ■


 ひとしきり泣いた後その子は、そんな自分を円堂や風丸他、後方支援部隊のチームメイト多数に取り囲まれているのに気がついた。

「もう、大丈夫?」

 俺の横から木野がハンカチを出し、相手の子の涙を拭ってやる。

「あ、あの…、この皆は……?」
「まぁ、言うなれば対雷門ジャーナル実行部隊、みたいなもんかな」

 そう言ったのは半田。

「対雷門ジャーナル……」
「ああ、さっき言っただろ? このデート自体があの記事を打ち消す為の作戦だったって。だけど、やっぱ嘘はいけないよな、嘘は!!」
「っていっても、いきなり自分から正体バラすなんて、何のために俺達がバックアップについていたんだ? あぁ?」

 と、少し凄んで見せたのは染岡。

「だけど、こっちの方がキャプテンらしくて良いッス」
「それでこそ、キャプテンですよね!」

 一年生コンビの壁山と小林も円堂の言葉に同意する。
 格好はまだ女の子のままだけど、気持ちはすっかりいつもの円堂に戻っている。そのニパッとした笑顔には、誰も逆らえない。

「じゃ、撤収するか」

 そんな所は真面目な染岡が、作戦終了のケジメとして撤収を促す。それを ――――

「折角だからさ! このまま皆で遊ばないか!? 滅多にないことなんだし♪」

 そんなウキウキとした語調で円堂が提案した。

「おいおい、そんな勝手なことしたら雷門や鬼道が怒るぞ」
「いーじゃん、いーじゃんv どうせバレたんだし、後の事はそいつの胸の中次第だし。だいたいこの面子で遊ぶなんて、今までなかったんじゃないか?」

 言われて見れば、と風丸は思う。

( 円堂に木野、それから半田に染岡。壁山と小林……、オマケで俺か )

 本当ならあと二人、栗松と宍戸もいれば良かったなと小さく呟く。 

「なぁ、知ってるか。あいつら、雷門イレブンが今みたいに有名になる前から、ずっと雷門でサッカーやってきた連中なんだぜ」
「風丸くん……」
「部員が少なくていつ廃部になるかハラハラしていた時代から思うと、本当にここまでやってこれたのもあの円堂くんの笑顔と元気のお陰だなって」

 円堂と二人でサッカー部を立ち上げた木野がしみじみと言葉を続けた。

「それじゃ、円堂くん達って1年の時は練習や試合はどうしてたの?」
「試合なんて出来るわけないさ。部員がマネージャー含めて4人しかいなかったんだ。練習場所も貸してもらえなかったし」
「そんな、酷い状況だったんだ……」
「でもね、円堂くんのサッカーが好きだって気持ちは本物。当たり前に本当の事を真っ直ぐにやり続けてたら皆がついてきて、沢山の仲間も出来て、そして今の雷門イレブンがあるの」

 今までの苦労を全部知っている木野が、優しく微笑みながらそう語る。

「おおい、風丸も秋も早く来いよ!! 遊ぼうぜ!」

 いつの間に移動していた円堂達が、人波の向こうから手を大きく振っている。

「円堂くん! そのままの格好で良いの!?」
「あぁ、コスプレと思えば良いんじゃねぇ? 周りに皆もいるし、面白がってもらえればさv」
「もう、円堂くんったら」

 最初はあんなに恥ずかしがっていたのに、開き直ってしまえばこれである。そんなお祭り集団に加わるべく、木野も嬉しそうに皆の下に駆け寄っていった。

「……皆、円堂くんの事が好きなのね」
「ああ」
「大変ね、風丸くんも」
「?」

 物言いが変わった。あの刺々しさが消えている。

「風丸くん、好きでしょ? 円堂くんの事」
「……ああ」

 ここに来て、もう嘘はない。

「どうする? それを記事にするのか?」
「……円堂くんが言ってたでしょう? わたしの胸の中一つだって」

 まだ瞳の端に光る涙を残しながらふわりと笑うその様子に、風丸も小さく笑みを返し、そして人波の中に紛れていった。



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Date:2012/03/11
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