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□ イナGOでもしも… シリーズ □

京介くんが円堂くんの大ファンだったとしたら…



 ……それは、憧れだった。

 まだ幼稚園にも行っていなかった俺が、テレビに映し出されたその情景に釘付けになった。
 沢山の笑顔の中で飛び切り明るい、まるで太陽のようなあの人の笑顔を見た時には、それこそイナズマに打たれたようだったと今でも覚えている。

 少し大きくなって初めて正式にクラブに入れた時は、飛び上るほど嬉しかった。
 いつか、あの人たちのようなサッカーをするんだと、その思いだけで。

 最初は、分らなかった。

 まだ、俺は幼すぎるほど子どもで、何よりも「サッカー」そのものが分っていなかった。
 だから、コーチや監督など大人の言うことを一生懸命に聞いて、その通りに頑張った。
 大人の言う通りに頑張れば頑張るほど、サッカーの実力も学力も上がって行くので、親も喜ぶし、チームメイトも更に競い合って、ますます強く成績も良くなっていった。

 サッカーをすれば、体力も学力も上がると言うことで、同じような運営方針のクラブが全国規模で展開されていった。

( 何か違う…… )

 そう思うようになったのは、小学3年生の頃だった。
 俺は多分、他の子よりも上手い部類だったのだろう。
 上手い子は上手い子だけを集めてチーム編成をするので、滅多な事では試合に負けることはなかった。
 それぞれが個人の力を最大限に伸ばすことを求められ、相手の戦力を分析しつくした上で立てられた戦略に従って試合を行う。それはまるで、出来上がったシナリオをなぞるような淡々としたものになっていた。

 気が付けば、チームメイトとサッカーそのものについて熱く語った事もなかった。
 大好きで始めたはずのサッカーは、俺が幼い時に感じたあのサッカーへの情熱、わくわくして楽しくて、いつまでもボールを追っていたいと思っていた、胸を焦がすような熱さを失っていた。
 
 ―――― この試合に勝てば、一つ上の中学校に行ける。
 ―――― 練習で集中力が鍛えられているから、勉強でも有利。
 ―――― まぁ、その為のサッカーだろ?

( なぁ、みんな! そんな事は関係なく、サッカーを楽しもうよ!! )
( はぁぁ? やった分、頑張った分の見返りもなくやるサッカーなんて、無駄なだけだろ? )

 そう言われた時の、冷ややかなチームメイト達の視線。
 あれから俺はサッカーについてチーム内で語ることを止めた。
 あの人が残した伝説だけが、俺の心の支えだった。

 廃部寸前だった、部員不足で試合すらできずにいた弱小サッカー部の初代キャプテン。
 公式の試合どころか練習試合さえできなかったチームに突然申し込まれた、優勝校との練習試合。

 試合は負けた。
 大量得点差で負けた。

 だけど、キャプテンは負けなかった。
 最後に取った1点は、どんな勝利よりも大きかった。
 

「そうだよな。そこから、雷門の伝説は始まったんだからさ」

 俺は、部屋を片付けながらあの頃集めた古いサッカー雑誌の切り抜きに目を通していた。
 同じ時を過ごすことの出来なかった憧れの人の面影を追って、何軒古本屋や図書館を回ったか。

「あんたみたいに、俺も一人で頑張ったんだぜ? だけど、その結果がこれだからな」

 上位ランクのチームに編入され、さらにその上の組織、「シード」の一員になるまでに。
 そこで知ったのは、今までのサッカーの解体と、管理サッカーへの強制移行という現実だった。
 それも皆、廃部寸前だった弱小チームがサッカーの『強さ』で日本一、いや世界一になった実績を裏付けに、「雷門のように」を合言葉に。

「……今のサッカーなんて、俺がやりたいサッカーじゃねぇ。くっだらねぇモンに成り下がっちまった」

 この状況を打ち壊すだけの力は、もうどこにも無かった。
 どの学校も、管理サッカーへ移行しつつあったからだ。

「皮肉なもんだよなぁ。最後まで今までの、そう円堂守が残したサッカーを守り続けている雷門に、俺が破壊者として派遣されるなんてよ」

 雷門は、今でも中学サッカー界の最高峰ではある。
 そして、管理サッカーに対抗し続けている唯一の学校でもある。サッカーを支配しようとしている「フィフスセクター」にとっては、なんとしても排除せねばならない存在である。
 いや、雷門を潰すわけではない。潰すのは、「今の雷門サッカー部」だけだ。

「……組織の常套手段だからなぁ。監督や顧問、部員の全員を入れ替え、組織の人間を送り込むってやり方はさ」

 そうして、過去の栄光や実績もそのまま引き継ぎ、「新生雷門イレブン」として支配されたサッカー界でも最高位に君臨する。
 
「なぁ、楽しませてくれよ? 仮にもお前らはあの栄光の雷門イレブンなんだぜ。俺達にあっけなく叩き潰されてしまうほど、弱くはないよなぁ。俺をがっかりさせないでくれ」


 本当なら、そう、本当なら ――――


( 今の俺の実力なら、十分お前たちの仲間になれたよな。俺が、後10年早く生まれていたら…… )


 そう思う想いと同時に湧き上がってくる、言いようのない怒り。

( だが! 俺の期待を裏切るような体たらくな状態なら、あんたが残したサッカーでも、俺は容赦なく叩き潰す!! あんたが残したもう一つの種が、こんなクソ面白くもないモンを蔓延らせた罪の償いとしてな! )

 憧憬と憎悪。
 相反する二つの心を抱えて。

「俺たちが雷門イレブンになったら、また新しい伝説を作ってやるよ。無名だった雷門を日本一・世界一にしたあんたのように、あんたのサッカーでもなく、管理サッカーでもない、新しい俺のサッカーで!!」

 十年前、幼い京介の心に円堂が撒いた種は、京介の滾るような熱い想いを糧に、今大きく花開こうとしていた。



2011年05月12日脱稿




  === あとがき ===

……て感じで、本当は京介くん、サッカーに対しては純粋な熱さを持っている子だと良いなぁ、と予想しています。
ただ、自分はシードの一員だし、ある程度裏を見てしまっているから、素直になれないというかシニカルになってしまうんですね。
早く神童キャプテンのもと、雷門イレブンの仲間になってデレちゃえばいいのにっっ!! て思っています(*^^)v


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Date:2012/03/11
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