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□ イナGOでもしも… シリーズ □

目金くんがオペレーション・コマンダーだったとしたら…


「はい。分かりました。いよいよですね」

 僕は久遠監督からの電話を切ると、軽い戦慄のような武者震いを感じた。

「……目にもの見せてやりますよ。今の、この腐った大人社会にね」

 幾面もあるディスプレイの光を受けて、かけた眼鏡のフレームがきらりと反射する。
 僕こと、目金欠流は10年前より雷門の知性を自認して憚らない。
 知的戦略で、仲間に勝利をもたらすのが自分の役目。
 その為のデータ収集・分析はお手の物。それらをプロファイリングして、展開の選択肢を探る。大学で情報処理学を学び、さらに大学院の研究室にも身を置いている自分には、専門の分野と言える。

「……あいつ等の支配が決定的になった時から、ずっと準備してきたんです。もう一度、あの熱くて楽しいサッカーを僕たちの後輩達に伝えるために!!」

 手駒は揃った。
 キャプテンのアップも終わり、臨戦態勢は整った。
 今まで雷門の後輩達を守ってきた久遠監督は、今回の勝敗指示に背いた責任を取らされた形で、雷門の監督を辞めた。

「くくく、あの理事長はこれで厄介払いが出来たと思ったんでしょうね。これが、雷門再生への布石の一石とも知らずに」

 キーボードを操作し、WEBに上げたパスワードを何重にもかけたファイルにアクセスする。ここには、このために準備してきたデータやネットワークなど、これから戦う為の武器がある。そのネットワークに上がっているIDのいくつかに、「GO」と指示を出した。

「さぁて、皆がどう動いてくれるか。期待しています」

 目金が最初のコマンド指令を発してから、10分後。
 また、目金の携帯が鳴る。

「よぉ、俺だけど」
「あっ、不動さん。さすがに、早いですね」
「まぁな。俺みたいなフリーライターなんかは、速さがなきゃやってられねぇからな」
「どうです? 例の写真、撮れました?」
「おぅよ、ばっちり撮れたぜ! 練習試合前に、相手校の保護者が対戦チームのキャプテンを買収にくる、なんてスキャンダルだからな」
「ええ、それもサッカーの名門として知られている雷門と、進学校としては有名な栄都学園ですから」

 通話中も目金はキーボードを叩く指を休めない。

「で、これどーするよ?」
「不動さんの腕で、週刊誌の記事にして欲しいんですよ」
「えっ? いいのかよ!? これ出すと、あの試合で負けた雷門に非難が集まるんじゃねーのか?」

 角度を変えたせいか、目金のかけた眼鏡が鏡のようになり、ディスプレイの上を走る光をそのまま映し込む。くい、と指で眼鏡の位置を変えた時、計算に基づいた冷徹さをたたえた瞳がその光の下に見えた。

「……それも計算の上です。3-0で負ける事を上層部から強要された雷門イレブン。その証拠ともなる買収現場の写真。それに背いた事で、解雇された久遠監督。これらのソースを上手くまとめて、雷門に集まる世間の非難の声を、雷門上層部やその上の存在に向けさせたいのです」
「その上の存在、フィフスセクターか」
「ええ。支配されたサッカーの現状や、フィフスセクターの存在を知っているのは、サッカー関係者のほんの一部にしか過ぎません。隠ぺいされた中での八百長。やらされた子どもたちも、サッカーを愛していればいるほど、そんな犯罪に加担したという罪の意識で口を閉ざします」
「……ひっでーな。そのうちグレるぞ。そのガキども!」

 ははは、と渇いた笑いを目金は零す。それをお前が言うのかと、心の中で思っても、あえて口にしないだけの分別を持った大人になっていた。

「ターゲットを叩く記事は得意だが、それやると間違いなくガキどもの心に傷がつく。俺は優しい記事は書けねぇからな。鬼道ちゃんの妹が中学校の先生じゃなく、新聞記者になってりゃ丁度よかったのに」
「音無さんには、雷門で子ども達を守ってもらう必要があります」
「分かったよ。書くよ、書く。気が重いけどな」

 そんなやり取りの途中で、PCのメール着信音が響く。そのサブジェクト名を見て、すぐに目金はメールを開いた。

「あ、不動さん。その記事に、もう一つソースを追加です」
「んぁ、なんだ」
「今、その音無さんからメールが届きました。練習試合の写真です。マネージャーの子が撮ったものらしいんですけど、良く撮れてます」
「それが、なんだ?」
「……雷門の子どもたちの、辛そうな様子が克明に。この試合、雷門の負けだったんですけど、3-0ではなく3-1。誰も実力の半分も出せない、最初から負けなければいけない試合なんてしたくありません。その想いが取らせた1点でしょう」
「……なるほど。そこを強調して書けってことだな」
「はい。期待してます。あと、同じような記事を日本各地で上げてもらうよう、動いています」
「日本各地?」

 不動が聞き返す。

「ええ。北は北海道から南は沖縄まで。僕たちの仲間は全国区でしょ? サッカーに関しての噂を専門的に集めてくれる、秋葉の仲間もいますし」

 その言葉に、不動は目金のオタクぶりを思い出した。

「確かに、そうだな」

 通話口越しに、小さく笑いあう。

「あの時、僕たちも結構危ない目にあっていた。でも、それを助けてくれる大人がいたから、今の僕たちがいる。そう、思いませんか?」
「ああ、まったくだ。今度は俺たちが、その大人の役割を果たす番」

 その場にはいないけど、がっしりと手を組む感じが伝わってくる。

「そういやぁ、鬼道ちゃんはどーしてるの? 自分の妹が大変な時にさ」
「鬼道さんには、ビジネス的視点から追いかけてもらっています。これだけの組織が動くとなれば、当然資金面的な動きがあるはず。そこから核心に迫るために」
「ああ、らしいな」
「財前さんにも動いてもらってます。こちらは政界関係で。中学校という教育現場に介入してくるということは、何らかの政治的後盾が無いとできないこと。そこからも探りをいれなければ」
「凄いな、お前……」

 サッカー選手としては、まるで才能のないメンバーであったが、今のこの実務能力はどうだろう?

「だから、昔から言っていたじゃないですか。僕は、雷門の知性だと」

 実際は、今回のオペレーションの骨子を出したのは、久遠監督だ。その骨子に沿って具体的な段取りをしたのが目金で、この場合どちらも優秀だったと言う事だ。

「……キャプテンは、どう動く?」
「キャプテンは、あの時とちっとも変りません。熱くて諦めない、そんなサッカーをやるだけです」
「はは、あいつらしい。あいつに監督される奴らは大変だな。いつでも、どこでも『サッカー、やろうぜ!!』って引っ張りまわされるんだぜ?」
「いいじゃないですか。だって、きっとそのサッカーは、とても楽しいサッカーに間違いないんです」


 そう言い切った目金の言葉には、『円堂守』への絶対の信頼が溢れていた。
 神童達が本来のサッカーを取り戻す戦いに赴くその時は、もうすぐそこまで迫っていた。



 2011年06月09日脱稿




   === あとがき ===

イナGO5話・6話に出てきた目金くんがものすごく好みに恰好良かったので、つい妄想がさく裂しました。
久遠監督と組んで、こんな事をしていればいいなv という、100%妄想SSです。




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Date:2012/03/12
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