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□ イナGOでもしも… シリーズ □

冬海先生が円堂くんの仲間だったとしたら…


 はぁぁ、と人目につかない校舎の影で私は、大きくため息をつく。目の前に広がるのは、あの頃と比べ物にならないほど、近代的かつ大規模になった雷門の姿。ここ近年で中・高・大と一貫した教育システムを持つ、名門私立校になっていた。だがそれを私は寂しげに見つめ、ぽつりと呟く。

「十年前の、あの少し古びた校舎の方が良かった。温かみがあって、雷門らしくて……」

 温かかったのは、校舎だけではない。
 そこにいる皆が温かかった。

 最初、私が雷門に赴任したのは帝国学園のスパイとしてだった。それを同じ帝国から送り込まれた土門に指摘され、私は雷門を追われた。
 いや、追われただけではなく、サッカーを、特に雷門のサッカーを憎んでいた影山の手で口封じまでされそうになった。そんな私の身の安全を図ってくれたのが、鬼瓦警部だ。警察の保護下に入り、身を潜めている間に私は考えた。

 どうして、こんな事になったのだろうと?
 私の人生、どこで間違えたのだろう?
 私は、何になりたかった?

 身を潜めている場所から、目的もなくただただ外を見ていた。
 色んな人が通るその時、私の眼に飛び込んできたのは、嬉しそうな顔をして、楽しそうな顔して、学校に向かう子どもたちだった。校門で、そんな子どもたちを迎える先生たちの顔も朝日のように輝いていて、そこにはいくつもの笑顔を溢れていた。

 涙が溢れた。
 そうだ、こんな私にも大好きな先生がいた。先生の、豪快に笑う顔が好きだった。
 陰気で卑屈なとこがある私は、小学生の頃からいじめられがちな生徒だった。その先生は、どんな理由があろうと、いじめは絶対だめだと強く言い切る先生だった。そして、クラスでいじめがあるのは、自分の想いが足りないからだと、私の前で頭を下げてくれたのだ。

 子どもであっても、一人の人間として見てくれた。
 子どもの笑顔を守るのも、先生の仕事だと言っていた。

「……だから私は、教職の道を選んだのだったな」

 失くしてみて分る、その大事さ。
 こんな私ではもう二度と、子どもたちの前に教師として立つことは出来ないだろう。

「冬海先生、雷門に戻ってきませんか?」
「雷門理事長……」

 それはまるで、天の神様からの言葉のようだった。

「で、ですが……、私は……」
「今のあなたは、とても良い顔をしている。子どもたちの事を、一番に思える本当の教師の顔です」

 そう言って、雷門理事長は私に向かって、手を差し伸べてくれたのだった。


   ■ ■ ■


「雷門理事長……、今あなたはどこでどうしていらっしゃるのでしょう?」

 ため息が、そんな言葉になって口をつく。
 私が最後に雷門理事長に会ったのは、五年前。
 一人娘の夏未さんは海外に留学されていて、雷門理事長お一人だった。

「理事長、何かあったのでしょうか?」
「ああ、済まない。冬海くん。……実は、私は雷門を去る事になった。教職員も大幅に入れ替えられる事になりそうだ」
「なぜ、そんな事に!?」

 私はびっくりした。雷門中は、その名の通り雷門家が代々子ども達の健全な育成を願って、心血を注いで作り上げてきた学校だ。それなのに、なぜ追われる事になる!?

「……詳しいことは、今は言えない。ただ、君は残る事になる」
「わ、私が、ですか?」

 私を残すことに、次の学校の運営TOPはどんな利点があると考えたのだろうか?

「残れる君に頼みたい。あの子達を守ってやってくれ」

 それが別れ際の言葉だった。

 ……私が残れた理由は、新しく理事長の椅子に座った金山郷造と言う人物の、人となりを見て分った。つまり、かつて帝国の強権の下に飼い犬同然だった私なら、ここ雷門でも同じように働くだろうと。

( 辞めてやる!! こんな学校などっっ!! )

 取り戻した教育者としての誇りを、もうドブに捨てるような事はしたくなかった。
 だが……、もし私が辞めたとしたら、どうなるのだろう?

 完全に金山理事長の言いなりになる人間が校長になって、子どもたちの顔も見ないような教育現場になってゆくのだろうか? 
 子ども達が理想を描き、夢を追う大事な学び舎は、ただの大きな鳥かごに過ぎなくなるのだろうか?

( だめだっっ!! ここで私が逃げ出したら、誰がその鳥かごのカギを外してやれる? 私一人では無理でも、時を待って、協力者が増えれば…… )

 金山理事長に反抗的な久遠監督を反面教師に、私は理事長を油断させる為に、あえて理事長の飼い犬を演じた。理事長代理として、本来なら理事長がしなくてはならないフィフスセクターとの連絡や報告などを任されるように。情報こそが武器になると、私は信じて。

 そんな思いで、過ごした五年間だった。
 久遠監督も、薄々は私の考えに気付いてはいたようだ。
 だからこそ、彼から連絡が来たのだ。


  ■ ■ ■


「ん? 非通知?」

 携帯の着信音が鳴る。ディスプレイを見て私は、さらに周囲に人影が無いことを確認して、通話ボタンを押した。

「冬海先生」
「ああ、君か」
「先生のお蔭で、上手く運びました」

 通話相手は、少し金属的な高音の残る青年の声。

「……こちらは、いつバレるか冷や冷やしたぞ」
「もう、大丈夫です。冬海先生に頂いた監督データのお蔭で、監督のすり替え工作は完了しました。この後、奴らが気づいても変更は出来ません。ホーリーロードのエントリーが終了しましたからね」
「監督の不在な部は、いかなる理由があろうとも公式戦には出場できないという、部活動条文か」
「ええ。本来なら雷門に来るはずだったフィフスセクター直属の監督も、別の中学校に行ってもらったので、もう監督の『空き』がなくなりましたしね」
「別の中学? 大丈夫なのか? その中学から、違う監督が来たと連絡されたら……」
「ご心配には及びません。行ってもらったのは、雷門と同じ私学で代紋中学校と言うところですが……」
「雷門と代紋、か。似た名前の中学があったんだな」
「実はここ、元々の学校名は桜の代紋中学と言って、警察関係者の子ども達が通う中学なんです。ここの特徴は、SPフィクサーズが取り入れたように、サッカーを通しての体術修練がメインで試合は二の次なんです。一応中学校のサッカー部として、フィフスセクターに登録はされていますが、カテゴリー的には地方の公立中学校の同好会と同じです」
「つまり、管理しなくても問題のない学校ということか」
「はい、そこが狙い目です。円堂さんは、そこの監督として承認を受けていたんです」
「まったく、承認の確認をさせられた私の心臓が、どれだけドキドキしていた事か。フィフスのオペレーターが、この入れ替えに気付いたらと、気が気じゃなかった」

 そう、あの金山理事長の目の前でかけていた電話は、まさにそれだったのである。円堂監督の承認の下に、本来の監督の名前も挙がっていたはず。別の誰かに再確認され、入れ替わりに気づかれて修正されたら、この時はまだ変更可能だったのだ。

「連絡されないという理由は、その学校が僕たちの味方だからです。鬼瓦さんや財前さんが力を貸してくれました。円堂さんが雷門の監督だってフィフスの幹部が気付くのは、ホーリーロードの開会式の時ぐらいでしょう。まさか、大会の目玉である雷門を監督不在で不参加にする訳にはいかないですから」
「それも、お前たちが作った十年前の栄光ゆえだな」

 少し間が空いたのは、気のせいだろうか?

「……それも、功罪って奴ですね。『雷門のように』を合言葉に、今のような事態になってしまったとしたら……」
「いや! それは、君たちのせいではない!! あの時も今も、大人な私たちのせいだっっ!!」
「冬海先生……」

 そうだ! 私は雷門理事長に約束したのだ。子ども達を守ると!!
 それは、今の子ども達だけでなく、あの時の子ども達も ――――

 また、少し間が空いた。

「目金くん?」
「ありがとうございました、冬海先生」

 きっぱりとした、若々しくも力強い声。この声は ――――

「円堂くんかね? 私は、礼を言われるほどの事は……」
「いいえ、冬海先生。先生のように、子ども達に目を向けてくれる大人が雷門にいる、って言うだけで俺達の力になるんです」
「円堂くん……」
「学校じゃ、どこで見られるかもしれません。本当なら、ちゃんとお礼をしたかったのですが、こんな形で申し訳ないです」

 通話口の向こうで、円堂が頭を下げたのが見えたような気がした。

「……頑張ってください、円堂監督。あの子達を、自由に羽ばたかせてやってください」
「分かりました! 俺の信念にかけてもっっ!!」

 力強いその言葉とともに、電話は切れた。
 ふぅぅ、と胸の底から大きく息を吐く。胸の中で蟠っていたものが、体の外に抜けて行ったような気がした。胸いっぱいに吸い込む空気の新鮮さに、体中が賦活するようだ。

「お願いしますよ、円堂監督」

 円堂の笑顔を思い出し、窓の外に視線を向けてみる。
 梅雨空にも関わらず、厚い雨雲の切れ目から一筋の光が差していた。
 まだまだ、道は険しいだろうけど、あの監督なら何とかしてくれる。
 そう思うと、今日一日くらいは、胃薬の世話にならずにすむかと冬海は思うのであった。


 2011年06月17日脱稿




   === あとがき ===

放映後の妄想ダダもれネタSS。今回は俺得すぎるなんと冬海先生のターンです!! (笑) 書いてみたいなぁ~、と思っちゃったらなんでも書くような奴なので^_^; これこそ、そうじゃない確率80%くらいはありそうなネタ。でも、書きたかったの♪ 読んでもらえたらうれしいです♪♪
GOの初回、冬海先生の姿を見て、1期であんなことをしたのになんでまた教職に復帰できたの? と疑問だったのです。
が、GOでの冬海先生の様子を見ると、どうにも上からも下からも突き上げを喰らう中間管理職の悲哀を感じて、もしかしたら本当はそんなに「悪」じゃないのかも? なんて思ってしまったんですね。

で、こんな妄想文を書いてしまいました(笑)
あ~、一応雷門には剣城くんもいるので、円堂くんが監督だって言う報告は上がるのは上がるんですが、上げる相手が聖帝(IFその3参照^_^;)なんで、まぁそーゆーことで。



 



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Date:2012/03/12
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