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□ イナGOでもしも… シリーズ □

京介くんがこんな理由で『あの言葉』を拒絶したとしたら…

( サッカーやろうぜ!! )


 あの言葉が、耳について離れない。
 
「くそっっ!! 虫唾が走るぜ! その言葉にはよっっ!!」

 河川敷での、初めての円堂との対決。
 シュートを打って来いと言ったあいつに、俺は必殺技のデスソードを叩き込んだ。針の穴をも通す正確なコントロールのもと、まともにぶつかれば脳震盪は免れない程の威力を込めて。それを円堂は、事も無げに見切り、ほんの僅か首を傾げただけで遣り過ごした。まるで俺のシュートなど、止める価値もないと言わんばかりに。

 良いシュートだったぞ、と叫ぶ円堂の声を背中で聞いて俺は河川敷を離れた。

 俺としては、勝負を挑んだつもりだった。自分の必殺技が、円堂に通用すかどうか。通用すれば、円堂はもう自分にとっては何ら価値の無い人間として忘れることが出来る。もし、受け止められれば、それをバネに更に円堂への恨みを募らせることが出来る。だが、円堂は……。

「……結局、お前はあの頃のようには、もうサッカーはしないんだな。そして今度は、『させる側』になった」

 自分の中で、抑えようのない苛立ちと焦燥感と腹の中に巣くって離れない苦いものが込み上げてくる。苛立ち紛れに、足元に落ちていた清涼飲料水の空き缶を、思いっきりガードレールに叩きつけた。


  ■ ■ ■


( サッカーやろうぜ! 京介!! )

 ……懐かしい声を聞いて、俺は浅い眠りから目が覚めた。枕元の時計を見れば、まだ朝の4時前。外は薄暗く、季節柄しとしとと細かい雨の降り続く音が密やかに聞こえてくる。

「サッカーやろうぜ、か……。今となっちゃ、これほど虫唾の走る言葉もないな」

 明けきらぬ夜の終わりに、しめやかな密やかな囁きにもにた雨の音を聞きながら、俺の視線はあの遠い日の事を思い出す。

 俺に取っても、まだサッカーが『楽しいサッカー』であった頃を。
 
 俺には、五歳違いの兄がいた。両親が共働きだったせいもあり、年が離れている分、留守がちな両親に替りよく面倒を見てくれた大好きな兄だった。俺がサッカーを始めたのも、兄と一緒に見ていたテレビ中継が動機の一つである。

 サッカーが大好きな兄。

 自分より少し上の年代の活躍をテレビ画面の中、瞳を輝かせて追っている兄の姿に、俺も『幸せ』に似たキラキラとした気持ちを感じていた。
 繰り返し繰り返しビデオを見て、そして見終わると兄は楽しげに、こう言うのだ。

 サッカーやろうぜっっ!! 京介!! ――――

 幼い俺の日々は、そうして過ぎて行った。


 中学に上がった兄が、誇らしげにサッカー部のユニフォーム姿を見せてくれた日の事は良く覚えている。やっと、あの憧れていた選手たちと同じフィールドに立てると、喜んでいた兄の笑顔を。


   ■ ■ ■


 ……だが、残念な事にその中学は、雷門のようなサッカーの強い中学ではなかった。練習試合でも、公式戦でも、一度も勝てたことのないチーム。人一倍熱心に練習していた兄は、やがてそんなチームのキャプテンになっていた。
 あの円堂をお手本に、成績不振でテンションの上がらないチームメイトに「サッカーやろうぜ」と声をかけ、諦めないサッカーを目指した兄。

 ……どれだけ練習しても、強くなれないチームはある。
 ……どれだけ真面目に頑張っても、一勝すらできないチームがある。

 それは、勝負の世界では当たり前の事。
 いずれ、淘汰されるべき要因。

「京介に、一度は兄ちゃんが勝った姿を見せたいな」

 そう、兄が言ったのは中学三年の梅雨に入る頃だった。
 
 中学三年。

 夏の大会が終われば、引退して受験体勢に入る。
 地区予選の一回戦で負ければ、そこでお終いだ。
 夏が始まるのと同時に、『終わってしまう』中学三年の夏。

 雨が続いて、外での練習が出来ない日が続いた。
 室内練習では、思うように成果は上がらない。
 やがて、大会に出る前からチームメイトの士気は下がってくる。
 室内で柔軟や基礎をやったら、あとはだらけた空気が流れる。

 今まで、一度も勝ったことが無いのだから、何を今更必死になるのかと言わんばかりに。

 誰も、兄の言葉に耳を貸さなかった。
 だから兄は、一人で走るしかなかった。
 言ってもダメなら、行動で示すしかないと。

 ……雨の中、兄は倒れるまで一人で走り続けた。


   ■ ■ ■


( 兄ちゃん!! 兄ちゃん、しっかりして!! )

 病院に運ばれた時は、もう意識不明の危篤状態だった。
 体は燃えるように熱く、高熱による痙攣で、手足がピクピク動いているのが怖かった。あわあわと口元が動き、熱に浮かされ、何か譫言を言っている。

 かすれ良く聞こえないそれに、俺は耳を近づけ聞き取ろうとする。
 その言葉は ――――


 サ、サ…… やぁ、ぅあ ろ…… ぜ……。 サ……カ………


 それが、兄の最後の言葉だった。


( うわぁぁぁぁっっっ!!! 嫌だっっ!! 嫌だ、兄ちゃんっっ!!! )


 俺の中で、『楽しいサッカー』が死んだ瞬間だった。


   ■ ■ ■


「ちっ! あいつと、この雨の音のせいで嫌な事思い出しちまった」

 あれから俺は ――――

 サッカーに復讐するために、サッカーを続けている。
 『円堂守』が残したサッカーを憎み、そのサッカーよりももっと下らないサッカーに成り下がった今のサッカーを嘲笑いながら。

「……下らなくても、それに意味などないとしても、どんな学校でも一度は勝つことが出来るフィフスセクターのシステムだけは、評価してるぜ。練習してもしなくてもいつかは勝てる。サッカーに打ち込み過ぎて、俺の兄貴のような人間を出さないこのシステムはな」

 自分のその言葉が、本当の自分を裏切っていることに目を瞑る。


 夜明けが近いのか、ほんのりと東の空が明るくなってきたようだ。
 降り続く雨は、まだ止みそうにはない ――――



 2011年06月22日脱稿



   === あとがき ===

優一兄さんが本編に登場する前の完全妄想、京介くんの過去捏造話です。
いや~、あの時の京介くんの拒否反応ぶりが凄かったので、これはきっと過去になにかあったなと、妄想してしまいました。でも、円堂くんのあの言葉は、過去1500人の老若男女を落としてきた魔法の言葉♪ いつか京介くんも、『楽しいサッカー』を取り戻してくれると思っています(*^^)v 




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Date:2012/03/12
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