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□ イナGOでもしも… シリーズ □

天馬くんがこんな新必殺技を考えたとしたら…

 密かに練習に練習を重ねて完成した天馬のドリブル技『そよ風ステップ』は、あの神童をも躱す事が出来た。この技があれば天馬は、三国や車田・霧野達から託されたボールを相手エリアまで持ち込み、FWの南沢や倉間に繋ぐことが出来る。それも神童の指揮で。

( 俺は、キャプテンがフィールドで奏でる五線譜の線の一本になって、どこまでも走るんだ!! )

 音楽の授業で習った音楽用語は、ピアノを弾くキャプテンの影響かすんなりと天馬の頭の中に納まっていた。五線譜の上の音符はそのままサッカーボールでもあり、先輩達でもあった。

「あっ、でも……。試合中だと、先輩達からボールを回してもらうのを待つだけじゃなく、自分からも相手のボールを取りに行かなくちゃなんだよな」

 小回りの利く足と、意外と当たり負けしないフィジカル。
 ボールを持たせれば、かなり良い線まで行けるだろうと、天馬にも密かな自信がある。

「……『そよ風ステップ』の発動回数を増やすには、俺も相手からのボールをカットする技も磨いた方がいいな」


 そう決めた日からまた、天馬は特訓を始めた。


  ■ ■ ■


 大会が始まった。

 特訓していた技はまだ完成と言えなかったが、天馬は場合によっては、それを使うつもりでいた。フィフスセクターへの反旗を掲げた雷門を潰すため、相手校はどんな手でも使ってくる。明らかなファールや反則技だって、躊躇いなく繰り出す。

 ぶっちゃけ、フィールドの上では審判こそが『神』
この『神』の眼さえ掻い潜れば、ファールはファールではなくなり、反則も反則でなくなる。フィールドプレーヤーが手で押し込んだゴールでさえも、それを審判がそうではないと判じれば、決勝点ともなりえるのだ。

 試合序盤、巧みにゴールを決めた選手の周りを複数の選手で囲うようにして、審判の目を潜り抜けた相手チームのゴールも、そんな疑惑プンプンなゴールだった。先制点を取られた雷門イレブンだったが、試合時間はまだまだ十分ある。取り返す気満々で試合に臨む。だが、相手はこの先制点を決勝点とすべく、徹底した守備固めをしてきた。
 まず、雷門エリア内に選手を置かない。自エリア内でボールをキープし続けている。従って雷門選手は、上がらざるを得ない。FWはもちろんMFまで上がる事で、中盤に空白が出来てしまう。その空白を目ざとく見つけるとマークされていない相手チームの選手が走り込み、そこに絶妙なタイミングでパスを出される。カウンターアタックだ。そんな戦法で、再三ゴールを脅かされる。

 とにかく、ボールのキープ率の高さが異常だった。

 正確なパスと、叩き込まれたフォーメーション展開。相手チームのスローインの時には、最低でも三人の選手が取りに来る。そして確実にパスを繋ぎ、場合によっては自エリアに戻して時間つぶしのようにキープし続ける。
 雷門からのスローインやフリースローの場合は、その倍の人数でボールをもぎ取りに来る。そんな試合展開で、刻一刻と試合時間は無くなっていっていた。

「まずいな。このままでは時間切れになる」

 ハーフタイム、重い口調で神童が言った。
 サッカーは、タイムプレイだ。決められた時間が過ぎれば、そこでゲームオーバー。

「徹底してますからね、あいつらのマーク」

 消え入りそうな声の速水。

「って、こっちもそれなりにマークしてんのによぉ」

 と面白く無さげに倉間がドリンクのボトルをダン! と置く。

「どうした、どうした? お前ら。まだ、試合は終わっちゃいねーぞ!!」

 この状況でも、監督の声は明るい。

「監督……」

 指示を仰ごうと、神童は円堂の顔を見上げた。

「俺が指示するまでもないだろ? 神童お前なら、どうすればいいか分かっているはず」
「……はい。あいつらに渡ったボールの支配権をこちらに取り戻せば、雷門らしい攻めができます。でも、それが……」

 と、声を詰まらせる。それが出来れば、ここまで重たい空気にはならない。

「……俺が、俺が行きます!!」

 天馬が名乗りを上げる。

「松風、お前が?」
「俺が必ずボールを奪って、ゴール前まで持ち込みます! だから!!」

 皆が天馬の顔を見る。前半戦、あんなに敵チームに翻弄されたのはお前もだろうと、そんな表情を浮かべて。

「天馬~、大丈夫?」

 信介が、心配そうに天馬に声をかけた。

「だからお願いがあります、先輩。相手にボールが渡ったら、先輩方は相手選手にマンツーマンでついてください」
「マンツーマンでって、つまりお前一人で相手からボールを奪うつもりなのか?」
「はい! 俺、やれます!!」

 一対一の、タイマン勝負。
 しかし、サッカー歴の浅い天馬に比べ、相手チームの選手は皆、ボールの支配力は上だ。ボールを相手に渡さない、ただそれだけを武器にここまで勝ち上がってきたようなチーム。もちろん、フィフスセクターの勝敗指示の恩恵もたっぷり受けているだろう。

 無謀な気がした。
 だけど、それを否と言わせない瞳の輝きが天馬にはあった。

「……分かった。お前に任せたぞ、松風」
「はい! キャプテン!!」

 ハーフタイムが終わり、後半戦が始まった。


  ■ ■ ■


 天馬に言われた通り、ボールをキープした選手から、他の選手にパスが通らないようぴったりと各選手ごとにマークにつく。相手チームのDFには雷門のFWが、FWにはDFが。ボールの支配権を争って天馬が相手選手の足元に纏わりつく。パスが通せそうなコースが出来ても、すぐに天馬が回り込みコースを塞ぐ。

 小柄な天馬がボールを持った選手の周りを、右に左にと軽やかなステップで回っている。

 右・左・右 ――――
 右・左・右 ――――

 ターンして

 左・右・左 ――――
 左・右・左 ――――

 クルクルクル
 クルリ クルリ ――――

 フェイントで大きく右に出て、左から抜けようとする選手の前に小さく左で戻る。

「これは……」

 神童の眼には、そのステップは音楽を奏でているように見えた。
 いや、神童だけではない。
 その日、その試合を見ていた誰もが ――――

 ステップを踏むたびに、ピョコピョコピョコと天馬の左右の髪が揺れる。
 楽しげに、軽やかに。

 クルクルクル クルクルクルリ ――――

 まるで、ボールにじゃれつくように

「……俺の眼の錯覚かな。松風に尻尾があるように見える」

 相手チームのFWのマークに付きながら、霧野がぽつりと言葉を零した。

「可愛いな、あれ」

 相手チームの選手からも、そんな呟きが。

「子犬のワルツ、だ」

 神童の言う通り、まさしく今、フィールド上は癒しの空間と化していた。
 ほのぼのとした空気が会場を包み、天馬の動きにボールにじゃれつく可愛い子犬の幻影を見ている。コロコロとした幼い身体に丸い瞳を輝かせ、嬉しそうに楽しそうに、ボールや相手の足にじゃれつき、クルクル回る様の愛らしさ。

「はうぅぅ~~~~んvvv」 

 会場中から、そんな甘やかなため息も聞こえてくる。

 だが纏わりつかれた方は、ウザったくて仕方がない。右左右・右左右と三拍子で出される足は、通常右左右左で出される二拍子と違いリズムが狂う。自分がキープしているボールや足にちょっかいを出され、イライライラっとしたフラストレーションが昂じてくる。だから、つい天馬を振り払おうとした動作が乱暴になったのは否めない。
 持ち上げた足の膝頭が、勢いよく天馬の鳩尾にヒットする。



 キャイィィィ~~~ン!!! 

 子犬の叫び声が聞こえた、気がした。

 一瞬、会場内が静まり返る。
 次の瞬間!! 
 耳を聾するばかりの怒号とブーイングがその選手に浴びせられたのは言うまでもない。


  ■ ■ ■


 天馬の活躍で、無事危地を脱し勝利を収めた雷門イレブン。

「凄かったね、天馬!!」

 自分の事の様に喜んで、信介が天馬に駆け寄る。

「松風、あの技は……」

 天馬が見せた技を、神童が確認する。

「へへっ♪ 相手からボールを奪って『そよ風ステップ』を確実に発動するための技です」

 そう嬉しそうに言う天馬の姿には、先ほどの幻影の影響か、『ご主人様、褒めて褒めてvvv』と尻尾をパタパタとさせる子犬の姿が重なっている。

「……まったく、お前らしい技だな松風。しつっこくてウザったいお前に、ぴったりだ」

 と、悪態をつくのは南沢。あの後、天馬が奪ったボールは南沢に渡り、ゴールを決めていた。

「え~、南沢先輩ぃ~~~」

 しゅんと、尻尾が垂れた。
 だがあの時、間違いなく南沢も怒号を上げた一人だった。

「それにしても、恐ろしい技だな。あいつ、あの後観客の怒声にぶるぶる震えて、結局選手交代しちまったし」

 早々と着替えながら霧野が、言葉を続けた。

「そりゃ、怖いですよぉ。あれだけの観客から一斉に叱られれば、俺なら怖くて一生フィールドに立てないかもしれません」

 自分があの怒号とブーイングを浴びた訳ではないのに、ぶるると肩を震わせて速水も続く。

「いいか? お前ら。今日、松風が見せたように、一人ひとり『自分に出来る事』が必ずある。それを見つけ磨くことで、強くなれる!! お前たちの可能性は、無限大なんだぞ!!」
「監督っっ!!」

 選手たちの胸にまた一つ、希望の光が増える。

「それにさ、気が付いたか? お前たちには、お前たちの試合を見に来てくれる、力強い味方がいることに。お前たちが、お前たちの信じる『本当のサッカー』を続ければ続けるほど、味方は増えてくるんだ!」

 親指を立てて、にかっと笑う円堂。

 こうして観客を魅了し、相手選手をフィールドから抹殺する天馬の新必殺技、『子犬のワルツ』は完成したのだった。

 


 2011年06月29日脱稿





   === あとがき ===

イナGO8話の天馬くんの必殺技名があまりにも可愛かったので、こーゆーのも有かな? と考えてみましたv ようやく、このシリーズ8作目にしてイナGOキャラメインで書いたような気がします^_^; 



  
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Date:2012/03/12
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