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□ イナGOでもしも… シリーズ □

南沢先輩が万能坂戦に出るとしたら…


 人ごみに紛れて、俺は目の前で繰り広げられている試合を見ていた。
 フィールド上には、かつての仲間たちが傷つき、倒れ伏している。

「……酷いものだな」

 ぽつりと呟く。
 あの時、やってられないと判断した自分の正しさを実感する。

 だけど ――――

 ぎりっと、握り締められた拳。
 平常であれば冷静な視線が今は、ここしばらく感じたことがないくらい熱く激昂している。その視線の先には、雷門のエースストライカーの称号である、かつての自分の背番号10をつけた剣城がいる。

「結局、円堂監督もフィフスセクターの人間ってことだな。あの剣城にあのユニフォームを与えるんだからな」

 胸の内に満ちるのは、悔しさ。
 倒れ伏した選手の一人が、よろよろと立ちあがる。

( ああ、そうだ! 松風。お前のせいだ!! お前が神童を、三国を変えてしまったから、こんな事になってるんだぞ!? 指示に従えば、俺達三年生はそこで引退でも、お前たち一・二年生はまだ部活を続けることが出来る。こんな、痛い目に合わずに済んだんだぞっっ!? )

 心の中でそう叫びながら、視線は立ち上がった選手の動きを追っている。
 また強烈なシュート攻撃で小さな体が吹き飛ぶ。直接、渾身の力を込めた蹴りが松風の体を痛めつける。それなのに、松風はまだ立ち上がる。

( 対して実力もないんだ!! そのまま、地面にのびてろっっ!! 馬鹿っっ! )

 万能坂中の連中のやり方が手ぬるいと思ったのか、剣城がよくしなる全身のバネを生かしたシュートを高い位置から勢いよく松風の腹目掛けて叩き込む。弾け飛ぶように松風の体は、フィールドに叩きつけられた。

( 松風っっ!! )

 思わず、胸の中でその名を叫ぶ。
 フィールドで倒れていた仲間達からも、松風と声が上がる。

「……だから、辞めたんだよ。こんなの、俺が憧れた雷門サッカー部なんかであるもんか! 同じユニフォームを着た部員が、仲間を潰す所なんか見たくない」

 見ていられなくなり、背を向けようとした時、それでもそんな暴力に屈することなく立ち上がった松風が、剣城の問いに叫ぶように答える姿が目に入った。スタンドからの距離と、観客のざわめきで松風の声など聞こえようもないはずなのに、なぜかその声が言葉が、耳に心に深く突き刺さる。


 ―――― 俺、サッカーが好きだからっっ!!


「松風……」

 そんな松風の姿に、目を奪われる。
 しかし、その後の万能坂の行動は、スポーツマンシップに則るのであれば、決してやってはならないこと。

 松風の不屈の闘志をへし折るために、万能坂中はやり方を変えた。松風にボールを持たせて、攻めて来いとでも言ったのだろう。オウンゴールで先制されている今、点を取らないことには、先に続かない。
 そのボールを持った松風の足目掛けて、極悪危険なスライディングをかけてくる。最初の一撃はかろうじて躱せたものの、少し体のバランスを崩す。

「あいつらっっ!! 松風の足を折るつもりかっっ!?」

 体が怒りで燃えるように熱い!
 その後の、殺人的スライディング!! 怒りが殺意に変わる瞬間と言うものを、実感する。
 だが、次の瞬間、予想もしない光景に、怒りも殺意も一瞬凍結する。

 松風の小さな体を吹き飛ばすようなシュートを放った剣城が、その松風を庇うように自らの体で庇い、殺人スライディングの軌道から松風の足を守ったのだ。

「剣城、お前……」

 怒りの波動を感じた。
 物凄い程の、怒り。

 松風が持っていたボールを奪うと、そのままドリブルで上がり、デスソードを万能坂中のゴールに叩き込む。
 そこで、前半戦は終わった。


  ■ ■ ■


 霧野は前半戦で足を負傷し、後半戦には出られそうにない。
 どうした風の吹き回しか、敵であったはずの剣城はどうやら雷門イレブンに肩入れするようだ。闘志を残しているのはGKの三国と神童、それから新入部員の松風と西園の五人。残りの五人は試合放棄と言わんばかりにタッチライン沿いに並び、試合には関わらないつもりのようだ。

「……これが、あの雷門イレブンか」

 思わず、そんな落胆したような声が出る。
 こうして、自分たちの試合を外から見てみれば、フィールドの中に居た時には見えなかったものが見えてくる。

「こんなサッカーを見せられても、面白くないだろうな。俺が小さい時見たあの試合は、あんなに面白くてワクワクしたものだったのに」

 だが、どこかで剣城が今だけでも味方になってくれた事を、頼もしくも感じていた。

「剣城もとうとう松風に乗せられてしまったな。俺なんかと違って、正式のフィフスセクターのメンバーがその指示に逆らえば、どんなペナルティを加えられるか。考えるだけでも恐ろしい」

 何が剣城の逆鱗に触れたのか?
 恐らく松風の足を折ろうと、サッカー選手生命を断とうとしたことに、酷く怒りを感じたようだった。
 雷門イレブンとしての戦いと言うよりも、一人のサッカー選手として『サッカーを取り上げようとしているモノ』に戦いを挑んでいる。

「あいつ、本当はサッカーが大好きなんだな」

 大好きと、口の中で呟いたその言葉が、今の自分の気持ちに気付かせる。

 剣城が一人で先ほどの同じようにボールを持ってゴール前まで上がり、2回目のデスソードを放った。決まった、と思ったのもつかの間、万能坂中のGKもシードだった。化身を出し、剣城のシュートを難なくキャッチする。そのボールを前線に送り、受けた相手もシードだった。もう一体化身が現れ、あっと言う間に2点目を入れられる。これから先の展開が、克明に見えるようだった。

「十一人中三人がシード、うち二人が化身使い。実力が違いすぎる。潰されるな、あいつら」

 シード間でも、抗争のようなものがあるのだろうか?
 それとも、あの一点を取った事で剣城が裏切り者の烙印を押されたのか。
 後半早々、万能坂の選手は剣城一人をターゲットに、執拗なまでに破壊的攻撃を繰り返している。とうとう、あの剣城でさえもフィールドに倒れた。そんな状況でも、タッチラインに並んだ車田や倉間たちは動かない。

「あいつら! 何をしている!?」

 いつの間にか胸に灯ったこの熱いモノが心を急かせ、足を雷門ベンチへと向かわせた。倒れた剣城を手当てするために、今試合は止まっている。

「円堂監督!!」
「やっぱり来てくれたんだな、南沢」

 かすかに微笑む監督の表情には、信頼と言う文字が浮かんでいる。

「俺の名前、入ってますか?」
「ああ、勿論だ。お前は、雷門のエースストライカーだからな」
「俺、出ます!!」

 これが最後かもしれない。
 こんな奴らと戦えば、俺も潰されるかもしれない。
 いや、指示に従わなかった事で内申どころか、学校全体に迷惑がかかるだろう。

 だけど、もう許せない!!
 今やらなければ、きっとこれから先、俺はサッカーと真剣に向き合うことが出来なくなる。
 身体的に壊されるか、精神的に壊されるかの違いだ。

 俺は、俺のサッカーを守りたい!!
 サッカーが好きだという、この気持ちこそを守りたい!!

「南沢先輩、ありがとうございます!!」

 足を負傷し、悔しそうな顔で戦う仲間達を見つめていた霧野が、俺にそう声をかけてきた。

「霧野、お前のユニフォームを貸してくれ」
「はい、分りました」

 俺は霧野に借りたユニフォームを着て、円堂監督と共に手当を受けている剣城の側にゆく。

「……へぇぇ、戻って来たのか。雷門のエースストライカーさん」
「剣城……」
「だけど、残念だな。あんたの10番は俺がもらったぜ?」

 負傷した痛みを隠して、そう毒づく。

「審判!! ベンチに下がった霧野に変わり、南沢がFWで入る」
「ちょっと待て! 監督!! 俺は下がらないぞっっ!!」

 剣城が食い下がる。どこまでも強気の奴だ。

「ああ、勿論お前を下げるつもりはない。なんたって、ウチの戦力はああだしな」

 と、まだ動きだせずにいる部員たちにさっと視線を走らせた。

「だけど、これからは剣城、お前はDFに回れ。さっきみたいに一人で突っ込んでゆけば、お前の足が狙われるぞ?」
「そんな事は承知の上だ!! あいつらのやり方は許せねぇ! 本当のサッカーって奴を見せてやる!!」

 いきり立つ剣城の肩を軽く押し、円堂監督は言う。

「……お前が足を怪我すれば、お兄さんが悲しむぞ? お兄さんを悲しませるな。それに、お前に何かあったら、俺はあいつに顔向けできない」
「兄さんって……。円堂監督、何故知っている!?」

 円堂監督は、いつもの無邪気な子どもっぽい笑みとは色合いの違う、大人の影のある笑みを浮かべた。

「俺はこう見えても、お前たちの監督だからな」

 謎めいた言葉を胸に抱いて、俺と剣城はフィールドに戻る。

「南沢先輩!!」
「南沢、お前戻って来たのか?」
「南沢……」

 意外という表情と、戸惑いを隠せないタッチライン沿いの選手たち。

「わぁあい!! 南沢先輩だ!!」
「お帰りなさい!! 南沢先輩!!」
「南沢先輩、ありがとうございます」
「良く戻ってきてくれたな、南沢」

 フィフスセクターと戦うと決めた四人からは、対照的に明るい笑顔と元気な声がかかる。

「南沢先輩、いいんですか? 試合に出て、もし……」
「ん、ああ。こんな格好悪い試合しているサッカー部に在籍していたなんて、もうそれだけで内申はマイナスだろう? それなら神童の言葉じゃないが、逆らい続けて勝ち続けてみるのも面白い。なぁ、そう思わないか? 倉間」
「南沢先輩……」
「だから、倉間。もうしばらく、俺の隣を走ってくれ」

 フィールドに張り付いていた倉間の足が、俺に向かて駈けだそうとしていた。その後ろで、ガチャンガチャンと足元を戒めていた鎖が外れる音が聞こえたような気がする。

 最初、かすかなそよ風程度の風が、今変革の旗を揺らすほどの力を持ち始めていた。


  ■ ■ ■


 ジィー ジィー ジィー

 ある日の深夜。
 普段使わない、中学時代からの番号を載せた携帯が小さく着信を知らせる。
 円堂は、かけてきた相手も確かめずに通話に出た。

( 久しぶりだな ―――― )
( ああ。本当に久しぶりだ。今じゃ、表立っての連絡は取れない俺たちだからな )
( それにしても、この番号がまだ使えるとは思っていなかった )
( ん……、あの頃出会った奴らの中には、この番号しか知らない奴もいるからさ、消せないんだよ )

 微かな、沈黙。

( まぁ、おかげでこうして連絡を取る事も出来たんだが )
( 俺に、何か用件があってだろ? この電話は )

 そしてまた、僅かな間。

( お前に、預けたい選手がいる )
( 預けたい選手? )
( そう、昔の俺のような……、な )

 過去を懐かしむような、そんな声の響き。

( お前なら、いや雷門でなら、あいつを救うことが出来る。頼めるか? 円堂 )
( 何を今更。俺がお前の頼みを断った事があるか? )
( はは、そうだな。それじゃ…… )
( ああ、任せておけ )

 それだけの、短い会話。
 今も変わりのない、友の優しさに安堵する。

「いよいよ始めるんだな、俺達」

 誰にともなく、決意するように円堂は小さく呟いた。




 剣城京介が、雷門中サッカー部の監視者として派遣されたのは、円堂が雷門中サッカー部監督に就任する、ほんの僅か前の事であった。



 2011年07月21日脱稿




   === あとがき ===

イナゴ12話からの、もしもネタと言うか、先読み妄想です。
ただでさえ少ない部員数、ゲーム公式にキャラ紹介がなくても南沢先輩カムバ~~~ッック!! って、ことで書いてみました。
まぁ、意外や意外、あまりにも早い京介くんデレ期到来に、ちょっとびっくり&ニンマリvvv 
嫌いだなんだと言いながら、それでも体を張って天馬くんを守る京介くんに萌え~~~vvv、ですね。
管理サッカーへの革命の戦士として、6番目は意外な事に剣城くんだったので、7番目に立つのは南沢さんだったらいいなぁと思って書いてみました。天馬くんや神童キャプテンに批判的なメンバ-を動かすのに最適な人物って、きっと南沢さんだろうなぁと思ってしまうのです。
そして、先週に引き続き、絶対円堂くんと聖帝(豪炎寺くん?)は、繋がりがあるんだ!! と信じて疑わない今日この頃です(*^^)v



 

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Date:2012/03/12
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