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□ イナGOでもしも… シリーズ □

天馬くんがこんなシュート技を会得したとしたら…


「はぁぁぁ~、シュート練習って言っても、普通に強く蹴るだけじゃダメなんだよなぁ」

 夏の遅い夕暮れがとっぷりと暗くなるまでシュート練習をしていた天馬だが、その手応えはいささか心もとない。隣を歩く信助が、心配そうに天馬の顔を見上げる。

「そうなんだよね。僕のぶっとびジャンプも、もともとはヘディング技を磨こうとして、シュート技に変化したもんだし」
「天馬の長所を生かさないとダメって事かしら?」

 と、後ろを歩く葵もそう言う。

「俺の長所……」
「なにがあっても諦めないこと!!」

 考え込む天馬の隣から、信助がポンと。

「そうね。それから小回りが利く事かしら?」

 葵も同じように、天馬の長所を上げる。

「あとそれから、見かけによらずタフだよね~!!」

 この言葉は、二人同時に口に出された。
 そんな事を話しながら歩けば、もうすぐそこは木枯らし荘。

「じゃぁ、また明日!」

 そう言って、天馬は木枯らし荘の玄関を潜った。


  ■ ■ ■


「お帰り、天馬」
「ただいまぁ~、秋姉。お腹すいた~~」

 木枯らし荘に着いた途端、天馬のお腹の虫がぐうぐうと大騒ぎしだす。

「うふふ。もう夕食の支度は出来てるわよ。早く手を洗って、食べにいらっしゃい」
「やったぁ! 夕飯は何?」
「秋姉特性のカツ丼よ。生野菜たっぷりのサラダと具だくさんのお味噌汁付きv」
「秋姉のカツ丼、大好き!! タレがちょっと甘くてコクがあって。卵はトローリ半熟でタレと混ざってまろやかだし、揚げたての豚カツはさっぱりしていて脂っこくないしジューシーだし!」

 言っている側から、よだれが出そうになる。

「はいはい。そう言ってもらえると作り甲斐があるわ。本当、早くいらっしゃいね」

 秋はニコニコと笑いながら居間に入って行き、天馬は自室に駆け込むと大急ぎで部屋着に着替え、手を洗って食卓に着いた。

「う~、モグモグ。うん! 美味しい!! 秋姉は料理の天才だねっっ!!」」
「あらあら、すきっ腹に不味い物なし、ってね。そんな時は、普通のご飯でもすごく美味しく感じるものよ」
「そんな事ないよ、秋姉!! 本当だったら!」

 顔にご飯粒をつけたまま、天馬が力説する。

「……ああ、俺もそう思うな。秋の料理は最高だって」

 食卓を置いている台所の横の部屋から、突然聞こえた若い男の声。

「あ、あの……」

 天馬の大きな目が、さらにくりっと見開かれる。

「いつも秋から聞いてるよ。雷門中に入る為に、一人で沖縄から上京してきたんだって? 今年の雷門は、どうだい?」
「えっと、あの……、次の試合が準決勝で、相手が帝国学園で、俺もシュート練習しろって言われて……」

 思いもかけない人物の登場に、天馬はびっくりしたまま。
 秋が悪戯気に微笑んでいる。

「雷門対帝国かぁ、懐かしいな。どこかで対戦しないと、次に進めないライバル同士だからな。天馬、シュート練習付き合ってやろうか?」
「ええ! 本当ですかっっ!! お願いします!!」

 その申し出に天馬は勢いよく答え頭を下げたため、思いっきり食卓に頭をぶつけてしまった。


  ■ ■ ■


 帝国学園戦当日、天馬達は一人少ない十人で帝国と対戦することになった。硬い帝国のディフェンスを破る為の必殺タクティクスはその決め手を欠き、未だ完成していない。もともと戦闘力の高い帝国イレブンであるが、更にその中に数人のシードを抱えていると言う。

 帝国側の猛攻を、GKの三国がバーニングキャッチで防いでいたが、シードが化身を出し、とうとう力負けして先制点を許してしまった。そこで、前半戦は終了した。

「先制を許した今、後半はなんとしても点を取りに行かないとならない!」

 ぎりっと拳を握りしめ、神童が言う。

「点を取ると言っても、あのディフェンダーの壁を破らないことには、無理ですよぉ」
「ちゅーても、エースストライカー不在じゃ、今のままじゃ無理っしょ」

 そう、雷門は今、決定的なFW不足に陥っていた。悔しそうな表情を浮かべているのは、唯一のFWである倉間だ。他にも決定力のある神童もFWに上がれないことはないが、双方ともに技巧派であって、パワーで押し切るようなシュートを打つタイプではない。必殺タクティクス・アルティメットサンダーでは四人の部員がパワーを込めたボールを正面から打ち返すほどのキック力を要求される。この五人分のパワーをでもって相手ディフェンダー陣に風穴を開け、前線で待っている得点力のある選手にボールを繋ぐと言う戦術だ。

「くっ…、俺がやっても倉間がやっても力不足なのは否めなかった」

 悔しそうに握りしめた神童の拳に、今にも涙が落ちそうな気配だ。部員みんなの気配を読み、円堂が何をか言おうと口を開きかけた時だった。

「あ、あの~、俺、ちょっと思いついたことがあるんですけど……」

 その円堂の先を制して、天馬が発言する。

「思いついた事?」
「はい! あの、一人じゃパワー不足なら、二人でならどうだろうって……」
「二人?」

 天馬の提案を、吟味するように神童が問い返した。

「……なるほど。俺と神童でアルティメットサンダーを打て、ってことか」

 内容を把握した倉間が、ぼそりと確認の言葉を口にする。

「だ、だめでしょうか?」

 不安げに天馬が、神童と倉間の顔を見比べている。

「よく気が付いたな、天馬。お前たちの誰かが言いださなかったら、俺がそう指示を出そうと思っていた」

 にっこりと笑いながら、円堂が部員達の顔を見回す。

「……監督である俺が指示して、お前たちを動かすのは簡単な事だ。でも、一度試合に入れば、いつでも監督の指示が仰げるとは限らない。自分たちの発想力や判断でゲームを運ぶ事の方が断然に多い」
「監督……」
「強いチームと言うのは、どんな場面でも諦めず、今何が出来るかを探し続けるチームだと俺は思う。その為には、お前たちの心が『自由』でないといけないんだ」

 『自由』、その言葉を求めて今、天馬達は戦っているのだった。

「やってみるか? 倉間」
「ああ、もちろん。お互い、あいつ等から送られるパスに合わせる練習はずっとしてきた。お前とタイミングをあわせるのは、そう難しいことじゃない」

 ようやく、一縷の望みが見えてきた。

「……だけど、最終的にそのボールを誰が受けて、シュートに持ち込むかが今度は問題になる」

 皆の話を冷静に聞いていた霧野が、ぽつりと発言した。
 確かに言われてみれば、そうだ。
 アルティメットサンダーを発動させるのに、このやり方だと六人がかりでとなる。そうなった場合、残っているフィールドプレイヤーはDFの信助と車田、MFの天馬しかいない。
 信助もシュート技を持ってはいるが、これは高さのあるセンタリングなどを上げられた場合のものだ。弾道の低いアルティメットサンダーに合わせるのはとても難しい。天馬は、じっと自分に視線が集中していることに気が付いた。

「えっ、あれ? お、俺ですか!?」

 自分を指さし、わたわたとする天馬。

「だから言ったろう? シュート練習だって。天馬、お前の事だ。もちろん、やってきたな?」

 信頼を込めた瞳で、天馬を見る円堂。その瞳の光は、天馬に自分をずっと大きく強く感じさせた。

「はい! もちろんです!! 俺、絶対シュート決めます!!」

 その闘志溢れる天馬の返事が、そのまま後半戦開始のホイッスルと重なる。


  ■ ■ ■


 後半も帝国に押され気味だが、ギリギリのところで最終防衛ラインを守り切っている。人数の少なさ、エースストライカーの不在など、不利な条件を抱えた雷門。常勝軍団の帝国は、そんな雷門を無意識に侮り隙を見せた。その隙を前線に上がっていた天馬が突き、ボールを奪取すると、自陣エリアまでそよかぜステップで運ぶ。

「浜野先輩っっ!!」

 天馬の声と同時に、浜野にパスが渡る。浜野はアルティメットサンダーのイグニッションキーだ。渾身の力を込めたキック、ハイスピードでのパス回しでパワーを蓄積したボールが神童と倉間が待ち受けるペナルティエリアラインに轟音を上げて飛びかかって行く。

「倉間っっ!!」
「まかせろ! 神童も遅れるなよっっ!」

 パスを受けた瞬間、びりびりとした振動とメキメキと軋む脚。これほどサッカーボールを重たいと感じたことはない。

「くっっ!! みんなの想い、必ず受け止める!!」
「この俺が、負けるかよぉ!!」
 
 二人の足が向かってくるボールの中心線を挟んで上下に綺麗に揃い、全身のバネを利かせて大きく振り切る。

「天馬ぁぁぁ!!」
「いっけっっ――!」

 今こそ一つになった雷門イレブンの想いを乗せたパスが、前線で待つ天馬の元へ、炎を巻き上げながら、一直線に突き進む。さしもの帝国DF陣も、アルティメットサンダーの威力に、その侵攻を留めることは出来なかった。帝国DFに当たり、多少の威力低下はあったものの、ほぼそのままの勢い。

「よ~し! 俺が決めてやる!!」

 このパスは、この勢いのままゴールに叩き込む。トラップしたりキープしたりしたら意味がない。天馬は口の中で1,2,3とボールとのタイミングを計る。教えてもらったあのシュートを放つために。足を振り上げるタイミング、振り切るタイムミング。シュートコースの角度を調整して、みんなの想いに自分の想いを乗せる。

「新ペガサスショットっっ!!」

 天馬の掛け声、その足元から放たれたシュートは大きな翼を羽ばたかせ、逞しい後足で大地を蹴り光の速度でゴールに突き刺さる。

「……で、出来た! 出来たっっ――! 俺のペガサスショット!!」

 歓喜の雄たけびを上げる天馬。その周りを、嬉しそうな表情のチームメイトが取り囲む。

「凄いシュートだな、天馬! いつのまに、あんなシュートを?」

 少し興奮気味の神童が、声を弾ませて尋ねる。

「へへ、教えてくれる人がいたんです。その人のお蔭です!」

 出来ないことを、出来るようにするのが練習。その練習時間などほとんどなかった状態で、必死で食らいついてモノにした天馬の粘り勝ち。一気に、勝運が雷門に傾いた瞬間でもあった。


  ■ ■ ■


「よっ♪ 円堂! 久しぶり!!」

 雷門ベンチの近く、懐かしい旧友との再会。

「……やっぱり一之瀬、お前か。天馬にペガサスショットを教えたのは」
「ああ、相手は帝国だって聞いてな。普通のシュートじゃ通用する相手じゃないし」
「うふふ。こんにちは、円堂くん」

 いつもより、少し華やかな雰囲気を纏った秋。

「天馬から聞いてるわ。なかなか大変そうね、監督業も」
「まぁな。フィールドに入って、あいつらとボールを蹴りたくなるのを我慢するのが大変だ」
「でも、良い選手たちじゃないか。チームワークも悪くない」
「だろ? 俺の可愛い教え子たちだからな♪」

 目を細めて、フィールドを見つめる円堂の瞳は、あの頃のフィールドから出されて、落ち込み焦っていた円堂とは、もう違う。自分はフィールドの外に居ても、心はあの子たちと一緒に今も走っているんだと、秋は感じた。

「……でも、まさか鬼道くんが帝国の総帥になっているなんて思わなかったわ」
「それは、俺もだ。音無も知らなかったみたいだし、急な就任っぽいな」

 そう言いながら円堂は腕を組み、帝国ベンチに視線を走らせる。すっと一之瀬が円堂の隣に立ち、前を見据えたまま、言葉を紡いだ。

「……円堂、お前同様に、だろ? なんか、今の日本の中学サッカー界、変な事になっているみたいだな。あの少年サッカー法、あれって一体なんなんだ?」
「俺に聞くな。俺には難しい話は分からないんだからさ。ただ、今のサッカーは本当のサッカーじゃない! 俺は、本当のサッカーをあいつ等と一緒に取り戻すだけだ」

 三人の視線が、帝国ベンチの総帥・鬼道の下に集中した。


「……懐かしい顔ぶれが揃っているな」

 ゴーグルをサングラスに変え、相変わらずその視線を晒さないまま、口元に微かに謎の笑みを浮かべて鬼道が声を出した。

「ああ。円堂と一之瀬、その隣にいるのはあの頃の雷門のマネージャーか」

 鬼道が帝国に戻って来るまで、総帥代行を務めていた佐久間が、そう答える。

「あれぇ? ここにも懐かしい顔があるでしょ?」

 相変わらず飄々とした物言いの土門。この男も、昔から変わっていない。土門も一之瀬と同じアメリカのプロチームで活躍している。一之瀬の帰国に同行して自分も帰ってきていた。

「……お前は雷門イレブンだろ? どうして帝国ベンチにいる?」
「嫌だなぁ、佐久間。俺、在学期間は雷門より帝国の方が長いんだけど」

 確かにそれはそうだ。円堂が中学2年になり、本格的に雷門でサッカー部が始動した事を察知した前総帥の影山の指示で、スパイとして送り込まれたのが土門だ。

「ああ、まぁ、そうだったな」

 不承不承、佐久間が認めた。

「なぁ、鬼道。お前、このでっかいゲーム、どうゲームメイクするつもり?」

 土門のにやりとした顔は、一之瀬よりは現在の中学サッカー界の現状を知っているのかもしれない。

「何のことだ? 土門。俺はこのゲーム、帝国のサッカーで勝つつもりだが」
「へぇぇ……、『帝国のサッカー』でね。フィフスなんとかのサッカーじゃないんだ」

 はっとしたように佐久間が身じろぐ。

「まぁ、それを聞いて安心した。俺達、しばらく日本にいるから、そのうち昔の仲間集めてサッカーやろうな!」

 土門は去り際に片手を上げて、ウィンク一つ送ると、軽い足取りで雷門ベンチへと向かっていった。

「鬼道さん……」
「まぁ、いい。土門は目端の利く人間だ。使い勝手の良い駒が増えるのは、むしろ好都合」

 鬼道が描くビッグゲームの戦略に、土門と言う手駒が増えたことは間違いない。


 自分たちの応援席に、アメリカのプロリーグで活躍している一之瀬と土門の姿を認め、さらに意気があがる雷門イレブン。

 子ども達には、子ども達の戦いがある。
 大人には、大人の ――――

 それでも変わらないものは、このサッカーに賭ける熱い想い。
 大人が、子どもに出来るのは、技を伝え、想いを伝え、さらに力強く羽ばたいてゆけと、背中を押すことかもしれない。


 今、大空を翔けだした、このペガサスの様に ――――


  2011年08月13日脱稿





   === あとがき ===

イナGO16話を勝手に妄想してみました! 
帝国戦、実はひそかに南沢さん復帰を願っているのですが、そうでない場合、こーゆー展開もありかと。
京介くんをここで雷門に加えるには、まだ時期尚早な気がしますし。
円堂くんも天馬くんにシュート練習させようとしてるしねv 
それに、そろそろ一秋展開も見たいなぁ、という希望も加えて、どーせなら天馬くんが最初に覚えるシュート技は、一之瀬くんのペガサスショットが良いんじゃない♪♪ なぁぁんて思ってしまったんですね。
次の放送が入る前の、たわいのない妄想文として、楽しんでもらえたら嬉しいですvvv





 
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Date:2012/03/12
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