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□ イナGOでもしも… シリーズ □

狩屋くんがおひさま園出身だったとしたら…

 月山国光との試合に勝利して、天馬達は雷門中に戻ってきた。今回は狩屋の活躍で、勝機を掴んだと言っても良い。前半、自分の疑心からチームワークを乱していた霧野は、改めて狩屋の姿を瞳に映していた。

( ……あの時、天馬があいつはシードじゃない。狩屋もそれをプレイで証明してみせるって。だから俺も信じる! と言ってくれなかったら、俺も本当の姿を見損なっていたかもな )

 今年の新入部員テストの時、どうしてこんな初心者を久遠監督は入部させたのだろうと思ったが、さすがかつてイナズマジャパンを率いていた名将だけの事はある。先見の明の確かさに、今になって唸らずにいられない。

( それにしても、狩屋がシードじゃないことは分かった。なら、なんであんなにも俺を目の敵するんだ? )

 シードでなければないで、またその疑問は深くなる。その疑問を抱えて、今は一年生同士楽しそうに語り合っているその姿に視線を走らせた。


  ■ ■ ■


「あれ? あそこ……、旧部室の前に誰かいるよ?」

 そんな天馬の声に、近くにいた部員の何人かが言われた方向に目を向けた。

「誰だろ? 髪の長い女の人だね。誰かのお母さんか、お姉さん?」

 視力が良いのか信助が、旧部室前に佇む人影の詳細をみんなに教える。

「……それなら、サッカー棟の受付の方に回るだろう。わざわざこんな校庭の隅の、旧部室へは来ないはずだ」

 冷静な分析は剣城らしい。
 その声に、一瞬にして軽い警戒心が皆に走る。

「……取り敢えず、誰か確かめることが先決だな。不法侵入者ならば、すぐ警備員を呼ばなくてはならなくなる」

 きっぱりと、そう告げたのは神童だった。今回の勝利もあって、ますますキャプテンらしさに磨きがかかる。
 きりっと口元を引き締め、皆の先頭に立ってその不審者の元へと歩み寄る。近づいてくる雷門イレブンに気付いたのか、その人影は向きを変え、待ち受けている感じさえする。

「あの、サッカー部に何かご用ですか?」

 近づけば、不審者と言うよりはどことなく威厳のような迫力のある女性だった。年齢は二十代の後半かもしかしたら三十代に入っているかもしれない。整った容貌、すっと伸びた立ち姿、女性らしからぬ冷徹にも見える射抜かれそうな眼。さらりと真っ直ぐで長い髪は、そのままこの女性の曲がった事を許さない気質を表しているような気すらする。

「……まずは、全国大会第一回戦勝ち抜けおめでとう」

 硬質な澄んだ声がそう告げる。

「あ…、はい。ありがとうございます」
「それで、ここに私が来た用件なのだけど……」
「はい、なんでしょうか?」

 その女性と神童のやり取りは、まるで監督からの指示を受ける様だと、ふと霧野は思った。

「円堂くんに吉良瞳子が来たと伝えてきてもらえるかしら?」
「円堂くん……? 円堂監督にですか!?」

 事も無げに現雷門中サッカー部監督を、そう子ども扱いにするこの女性は……。
 ざわっとした空気が、メンバーの上に流れる。

「俺、監督を呼んできます」

 そんな中、いち早く動いたのは狩屋だった。


  ■ ■ ■


「お久しぶりです!! 瞳子監督!」

 狩屋が円堂監督を連れて来るや否や、円堂監督はその女性に向かって懐かしそうに大きな声をかけた。

「あなたもね、円堂くん。どう? 監督業の方は?」
「まだまだです、俺。学ぶことが多くて、考えることも多い。いつも鬼道に助けてもらっています」

 円堂監督は、自分の後方に控えていた鬼道コーチに信頼の籠った視線を投げかけた。

「……あの頃と同じね、あなた達二人は。今日の試合ぶりと、今のあなた達を見れば、ここは上手く機能しているようね」
「監督……」

 何気に円堂監督の口から、その言葉が零れる。

「元、監督よ。今は、もうどこのチームも率いていないんだから」
「あ、はい……」

 軽く窘められる。ははは、と小さく円堂監督が苦笑いを浮かべた。
 その時、遅れてやってきた音無先生がまぁ、と小さく感嘆の声を上げた。どうやら顧問である音無先生も顔見知りの人物のようだと気づいた霧野が、小さく音無先生の上着の裾を引いた。

「……音無先生、あの人は誰なんですか?」
「あ、ああ、そうね。あなた達は知るはずもないものね。あの人は、瞳子監督。私たちの監督だった人よ」
「監督だった……? 雷門サッカー部の?」

 怪訝そうな顔で、神童が頭を捻る。
 キャプテンの立場から、歴代の監督の名前くらいは把握している。その中には、そんな名前はなかったはずだ。

「ううん、違うわ。ねぇ、あなた達は聞いたことが有るかしら? 十年前、日本中の中学校が宇宙人を名乗る何者かにサッカーを武器にして、襲撃される事件があった事を」

 あの事件の本質は、政治の暗部に根差したものがあり、また当事者が多数の未成年者だったことも考慮されて、詳細は伏せられたまま首謀者だけを逮捕して速やかな法の裁きを受けさせ幕を引かせた。
 報道関係者にも深入りさせず、公的な発表を出させるだけに留めさせて。


 ……あの時の子ども達の、未来を守るために。


  ■ ■ ■


「……なんだか、聞いた覚えがあります。その襲撃を阻止する為に、地上最強のチームを作ったとかなんとか……」

 どこで聞いた話だったか、出所を思いだそうと眉を顰める霧野。

「確かその時のチームの母体になったのが、雷門イレブンじゃなかったですか?」

 はっと気づいたような顔をして、神童が音無先生に尋ねる。

「そう、その通り。日本国中キャラバンで走り回ってメンバーを集めて……、その時私たちを率いてくれたのが、瞳子監督なのよ」

 そんなに凄い監督が、今どうしてここにいるのか!?
 神童達の耳は、円堂監督と瞳子元監督の会話に傾けられる。

「狩屋を雷門に送り込んだのは、瞳子さんの差し金でしょう?」

 静かに、その事を口にしたのは鬼道コーチだった。

「コーチっっ!! それは、本当ですか!?」

 びっくりしたのは、狩屋が入部してから何かと被害にあっていた霧野だ。

「あら、良く気付いたわね。流石は天才司令塔」
「狩屋の転校書類を見て、すぐに分かりました。転校前の学校ではサッカー部に所属していませんでした。にも拘らず、あれだけの身体能力を持っている。これは、学校外でそれだけのサッカーの練習を出来る環境があると言う事。ましてや前の学校の住所は、あのおひさま園の近く。ならばと……」
「ああ、だから俺と鬼道は、狩屋が雷門で何をしようとしているのか見守っていたんだ。まぁ、その、霧野には迷惑かけたけどさ」

 申し訳なさそうに円堂監督が、困ったような笑顔を霧野に向けてくれた。


  ■ ■ ■


「……じゃぁ、監督たちは全部知っていて、俺を ―――― 」

 あの腹立たしさに包まれた日々はなんだったのだと、拳を握りしめる霧野。その手をそっと包んだのは、誰あろう、狩屋本人だった。

「……済みません、霧野先輩。これ、瞳子義姉さんからの絶対指示だったもので、逆らえなかったんです」
「えっ……、それって、どういう意味……?」

 大きな疑問符を抱えて霧野は、周りにいる大人たちに視線を走らせる。

「で、どうでした? 俺達雷門中サッカー部は、瞳子さんのお眼鏡に適いましたか?」

 堂々と、鬼道コーチがこの威厳溢れる元監督と渡り合っている。

「それは、どうかしら? マサキ、あなたから所感を話してちょうだい」

 いきなりの指名に、狩屋の体がピクっと緊張する。あれだけふてぶてしく猫を被る狩屋が、この有様。どれだけ恐ろしい存在なのだろうと、ごくりと息を飲む。

「……俺から見れば、技術的にはまだまだですが、十分伸び代もあるし気持ちも強い。ただし、選手層の薄さが致命的かもしれません」
「そう」
「それと、こう言ってはなんですが、これから革命を起こそうって連中な割に、『お人好し』が多すぎます。一言でいえば、甘ちゃんばっかり。他人を信じて、痛い目を何度見ても、やっぱり信じてしまう。一言で言えば、馬鹿の集団です」

 しれっと、そんな酷評を下す。

「お前! 狩屋っっ!!」

 髪の色よりも怒りで真っ赤になった霧野が、今にも殴りかかろうとしている。

「狩屋、そんな風に俺達の事見てたんだ……」

 寂しげな声音は、天馬の口から。
 それに気づいたのか、霧野から見れば腹立たしくなりそうなほどにこやかで優しげな、『作り物ではない笑顔』を狩屋は天馬に向けた。

「だけど、嫌いじゃない。そんな天馬くんの馬鹿正直さ。中途半端な正直さなら、ここまで思わない。イライラさせられるだけだから。でもここまで突き抜けた馬鹿なら、むしろ好きだよ。だから、俺はこのチームを助けたい!!」

 満面の笑顔で、狩屋は天馬に抱きついた。

「流石は円堂くんのチームね。あの頃の円堂くんのように、『人たらし』の才能のある子がいるわ。うちのマサキがあんなにも懐いて」

 その頃を知る鬼道コーチが、トンボサングラスの下の赤い瞳を困惑気に眇めた。あの頃の円堂監督の周辺で勃発していた痴話事を、またここで再現されるとは。


 ぷちっ
 
 ぷち、ぷちっっ

 ぶちっっっっぃいいいい


( あ……、今なにか切れた音がしたぞ…… )

 ひっそりと、鬼道コーチは胸の中で呟く。
 無邪気に天馬にじゃれつく狩屋の姿を、冴え冴えとした凍てつくような視線で突き刺しているのは、一人や二人ではなかった。

 そして、これが狩屋の『素』の姿なのだろう。
 瞳子からの指示で、判断者として送り込まれた以上、どうしても物事を裏から見るようにしていた狩屋にすれば、相手に警戒されないよう猫も被れば、揺さぶりをかけてチーム状況を見定める必要もあった。その揺さぶりのポイントに選ばれたのが、霧野だったと言うだけの話。


  ■ ■ ■


「……答えは出たわ。私たちも力を貸しましょう。聞こえたでしょう? 周吾」

 瞳子元監督は、誰かにそう声をかけた。

「……俺が雷門のセカンドに居た頃から比べると、随分と『雷門』らしいチームになったもんなぁ、ファーストの奴らも」

 旧部室の影から出てきたのは、今は無き雷門セカンドチームの10番・吉良周吾だった。

「お前……、セカンドの10番だった吉良か?」

 びっくりしたように、神童が確認を取る。

「なに? 吉良だって!?」

 その名に、ぴくりと反応した円堂監督と鬼道コーチ。
 この二人が赴任した時には、もうすでにセカンドチームは解体していた。退部した部員の名簿が、円堂監督の手に渡る事はない。したがって、そこにかつて『吉良周吾』の名前が載っていたことも知ることはなかった。

「はい。瞳子義姉さんとヒロト義兄さんの義弟の周吾です。二人の許可が出るまでは、自分の実力は七割程度に抑えておけって言われていたので、セカンド暮らししてました」

 セカンドとはいえ、その背番号は10番。
 十分、実力はありと認められていた証拠だ。

「さっきマサキも言っていたけど、選手層の薄さは私がカバーするわ。周吾、セカンドの選手の中で、見どころのある選手に働きかけてセカンドチームを立ち上げて欲しいの。人材が不足するようなら、こちらから何人か転校させても構わないわ」
「瞳子さん……」
「ウチの子達は、ヒロトや砂木沼達が扱いた選手たちだから、実力は申し分ないわ。ファーストチームに投入しても、十分引っ張ってゆける」

 ……正式な監督やコーチを差し置いての、傍若無人な采配は今も健在のようである。

「……ったく、あの頃とちっとも変りませんね。瞳子元監督」

 敵わないと、鬼道コーチが肩を竦める。

「いつでもファーストチームと入れ替われるくらいの実力を持ったセカンドが背後に控えるだけで、そのチームは何倍にも強くなれる。一人の選手に無理をさせないから、選手一人一人の負担も減るし、いつでもベストコンディションで戦える! ありがとうございます!! 瞳子元監督!!」

 今でもこうして、その手を差し伸べてくれる元監督の心遣いに、円堂監督は胸に熱いものが込みあげてくるのを抑えきれなかった。


  ■ ■ ■


 それから間もなくの事。

 周吾や狩屋の保護者として、雷門に来校するヒロトから熱い視線を送られる円堂監督の姿を、子ども達は目の当たりにすることになるのである。


 2011年10月13日脱稿





   === あとがき ===

来週の予告を見て、「あれっ? あれって瞳子監督だよねっっ!? どうして雷門に?」と思った瞬間に、このネタが降ってきました。
もともと狩屋くんがシードとは思っていませんでしたが、それならどーしてあんなにも霧野くんに突っかかるのかがわからなくて、まぁ、それはそれであれこれ考えてはいたんですが^_^; 
来週になれば、また見当違いの笑い話になると思うので、今のうちにとっとと上げてしまいます♪♪



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Date:2012/03/12
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