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□ GOっ子達の色んな話 □

フォルティシモ -祈りを込めて-


 ホーリーロード一回戦、天河原中との試合は2-0で雷門の負け試合。そう勝敗指示を出されていた事を、大会直前のミィーティングで知らされた途端、部員の多くは練習する意味を見失い、そのままユニフォームに着替えることもせずにミィーティングルームを出て行った。

 そう、誰も負けなければいけない試合の為に、練習をしようと思う者はいないだろう。これが実力が及ばなくて、万が一でも勝てないような相手であればまだ諦めもつく。本気を出せば勝てる相手でも、わざと負けなければいけない。

 これほど、『心』が痛むことがあるだろうか?

 神童の心は揺れていた。
 自分個人の思いは、円堂監督に伝えたとおり、もう無様な試合はしたくない! 本気で勝ちに行きたい!! 

 ……だが、雷門中サッカー部のキャプテンとしては、部員の不利になる事を率先してやる訳にはいかない。特に受験を控えている三年の先輩達に迷惑をかける訳には ――――

 その二つの思いの中で、神童の心は揺れていた。


  ■ ■ ■


 その日、雷門の練習グラウンドに姿を見せたのは、一年生部員の天馬と信介の二人だけであった。

「先輩達みんな、来ないね」
「ああ。でも、俺達は俺達に出来ることをやるだけさ!」

 二人だけで練習して、その日の部活は終えた。
 大きな大会前ならば、もっと高揚した気持ちになれるはずなのに、天馬の気持ちも練習から外れるとやはり沈みがちになる。学校からの帰り道、ふと夕焼けに赤く染まる河川敷のグラウンドに目をやると、一つの影が軽妙なステップでボールをキープ、シュート地点を色々変えながら、ゴールにシュートを放っていた。

「キャプテン……」

 一人、黙々と練習している神童。
 その周りには誰もおらず、まるで厳しい戒律の元修行を積む禁欲的な聖職者の面持ちさえ感じさせる。
 サッカーは11人でやるチームプレイ。
 それなのに、たった一人で…… と思うと、天馬の心はたまらないものでいっぱいになる。

「キャプっ……!!」

 声をかけ、走り寄ろうとした天馬の手は大きな手でぐいっと掴まれた。

「誰っっ!?」

 こんな時だ、天馬の警戒心はいつもより高くなっている。掴まれた手を、勢いよく払いのけた。

「俺だ、俺! お前らの監督だよ」
「監督…? え、円堂監督っっ!?」

 円堂の手が自分の横で上下に振られ、天馬に横に座れと合図していた。

「……監督、ずっとここに」
「まぁな。俺は言ったはずだ。ここで特訓した時に、あの時集まったのは、本気でサッカーをやりたいと思っている奴らだと」
「はい、そうです」
「あの時いなかった神童が、今、あそこにいる。あいつがあそこにいる限り、またあいつ等も集まってくる。俺はそう思ってるんだぜ♪」

 もう太陽は沈んでしまいそうだというのに天馬の眼には、円堂のまっすぐ神童を見つめる瞳に翳る事のない太陽が宿っているような気がした。

「……俺、三国先輩を怒らせてしまいました」
「ああ。あいつ等も大変だよな。な~んで、こんなヘンテコな事になっちまってるんだか、頭の悪い俺にはさっぱり分からねぇよ」
「監督!?」

 びっくりして円堂を見つめた天馬に、円堂はにぱっと笑って見せた。

「だってそうだろ? 八百長で、最初から勝ち負けが決まっている試合で、フィフスセクターの言うとおりに動いた奴の方が評価が良いなんて、絶対間違っている!!」
「そうですよね、監督!」
「頑張って練習をしてきた奴らが、力いっぱい戦う。その姿こそが評価されるべきであって、奴隷のように上の言う事を聞くだけの自分を持っていない奴なんぞ、本当のサッカーの前では評価以前だと俺は思う」

 そう言う円堂の言葉から天馬は、円堂の本当のサッカーへの燃えるような信念と、子ども達からそのサッカーを取り上げた存在への憤りを感じた。
 もう一度、天馬がグランドに目をやると、いつの間にか神童の姿は消えていた。

「あ、キャプテン帰っちゃった……」

 天馬の声は聞こえたはずなのに、円堂は身じろぎもせず誰もいない夕闇に沈もうとしているグランドを見つめている。真剣に、怖いくらい強い力の瞳で。しんと静まり返った空間で、なにか重い音が小さく響いているのに天馬は気付いた。

「あれ? なんだろ、この音」

 きょろきょろしている天馬の様子に気付いたのか、円堂が天馬が座っていた方とは反対側の耳に付けていたイヤホンを差し出した。

「音楽、聴いていたんですか?」
「ああ。俺が昔からここ一番! って時に聴いていた奴だ。親父が若い頃、この曲に勇気をもらったって聞いて、聴いてみたらすっかり気に入ってさ。お前も聴いてみるか?」
「はい! 聴かせてください!!」

 円堂が天馬の耳に、イヤホンを挿してやる。
 ズン、と来る重低音。
 男臭い、ボーカルの歌声。

 聴いたことのない、時代を感じさせる歌声に耳を傾ける天馬の顔に、ぱぁと浮かぶ表情。
 そう、それは共感 ――――


  言葉にならない 胸の熱い滾り
  拳を固めろ   叩きのめされても

( ああ、そうだ!! 言葉なんかに出来ないんだ。俺がサッカーが好きだって気持ちは! )

  激しくたかぶる 夢を眠らせるな
  あふれる思いを あきらめはしない

( 夢は見るものじゃない。叶えるものだって俺は思う! こんな状態だけど、俺は絶対諦めない!! )

  愛がすべてさ  いまこそ 誓うよ  
  愛を込めて

( 俺も誓う。俺がどれだけサッカーが好きか、この想いのすべてを込めて。だから ―――― )

  強く 強く ――――


「監督」
「ん、どうした?」

 天馬の顔が、先ほどのしょげ返っていた表情とはまるで別人だ。

「この曲、俺も欲しいです。タイトル教えてもらえませんか?」
「ああ、いいぞ。この曲のタイトルは ―――― 」

 タイトルを聞いた天馬の眼がまぁるく見開き、それからにかっと円堂とよく似た笑みを浮かべた。


  ■ ■ ■


 一人、河川敷での練習を終えた神童が自宅に戻ってみると、意外な人物の来訪を受けていた。

「あ、お久しぶりです。鬼道さん」

 応接室で寛いでいた鬼道に、そう挨拶をする。
 同じ財閥の御曹司同士、歳は離れているがサッカーという共通点が二人を近しいものにしていた。加えて、雷門サッカー部の顧問は鬼道の実の妹である。

「……こんな時間まで、練習か?」
「……はい。ホーリーロードの予選も始まりますし」
「そうか。去年は準優勝だったからな。今年は優勝を取りに行くか」

 透き通った紅の瞳で、射抜くように見つめられる。
 まさか、初戦敗退の指示を受けているとは言えない。

「お、俺は……」
「優しいお前の事だ。受験を控えている三年生達を、指示に従わないことで泣かせたくないと思っているんだろう?」
「 ―― !! ―― 」

 暫しの沈黙が、二人の間に蟠る。

「……フィフスセクターの指示に従えば、内申が良くなって志望校にも入りやすくなります。先輩の中には、どうしてもそこに入らないといけない先輩もいるんです。俺だけの想いで、動いていいものかどうか……」
「今の三年生も、そう思っているんだな。今さえ我慢すれば、高校に入りさえすれば、自由に本当のサッカーが出来ると」

 ふっと、鼻で笑われたような気がした。
 鬼道は応接室の椅子から立ち上がり、壁際のオーディオや雑貨などを何気に見ながら、話を続ける。

「鬼道さん……?」
「そんな保証がどこにある? サッカーを支配すると言った連中が、中学サッカー界の支配だけで納まると、お前は思っているのか?」
「鬼道さん!? それは……」
「今の三年が中学に入学すると同時に、中学サッカーはフィフスセクターの管理サッカーに移行した。言わば、今の三年生達はフィフスの管理サッカーの一期生のようなもの。高校に入れば、そこからまた、同じような手段で高校サッカーをも支配するようになるだろう」
「そんな、まさか……」

 足が小さく震えているのにも、神童は気付いていなかった。

「内申や進学の事をちらつかせて、あろうことか神聖なスポーツであるサッカーに『八百長』を持ち込んだんだ。今度は大学受験や推薦をエサに、同じことをするだろう。」
「そんな、そんな……」
「従うものがいるから、それは権力になる。従わなければ、ただの虚言だ」
「……………………」
「今、やらなければ、ずっとこのままだぞ。『八百長』をやらされているお前たちが、もう嫌だっっ! と声を上げない限り」
「でも……」
「よく考えてみろ。お前たちは、もうすでに大事なものを無くしているんだ。ならば、これ以上何を恐れる?」

 無くした、大事な物。

 それは ――――

 神童の胸に沸々と湧き上がる、熱い想い。
 この想い、無くす訳にはいかない!!

 ぎゅっと拳を握りしめ。唇を噛みしめて、体を満たす熱さに心を乗せる。

「鬼道さん! 俺っっ!!」
「……迷いは吹っ切れたようだな。そんなお前に、俺からのエールだ」

 弄っていたオーディオに持ってきたUSBを差し込み、再生させる。
 クラシックしか聴いたことが無い神童が初めて耳にする音楽。

「この曲は……?」
「俺の親友の一番お気に入りの曲だ。聴くと元気がでる」

 ほんの少し表情を和らげて、鬼道はそう言った。

「そして、お前の為の曲でもあるな」

  
  遠くに離れて   いても分かりあえる
  わずかなぬくもり わかちあったように

  すべての祈りが  叶えられるまで

  愛がすべてさ   いまこそ 誓うよ  
  愛を込めて    強く 強く ――――


「ff(フォルティシモ)、この曲のタイトルだ」
「フォルティシモ……、俺の必殺技と同じ名前 ――――」


 強く、強く、もっと強く!!


( 俺が、この閉ざされた道を切り拓いてやる!! 後に続く者たちの為にも、自分の為にも!! )


 あっと、神童は思う。
 心が自由になった瞬間、自分の背中を押す小さな風を感じた。
 この風は、きっと ――――

「ありがとうございます、鬼道さん。俺、勝ちに行きます!!」
「それでこそ、雷門中サッカー部キャプテンの顔だ、神童。本物の楽しいサッカー見せてくれ」

 二人は交わした言葉を、誓いとするようにしっかりと握手を交わす。
 新生雷門の、反撃の幕開けであった。




 2011年06月30日脱稿




   === あとがき ===

天馬君の必殺技絡みで1本SSを書いたのですが、やっぱり神童くんの「フォルティシモ」でも書きたくなって。で、「フォルティシモ」といえば、私的には「ff」なんですよ! (ffっても、フィットボール・フロンティじゃないですよv) 
歌詞的にも、グッとくるものがあるんでえいやっ!! と、書き飛ばしました。
内容はイナGO9話の前半あたりをベースにあとは、妄想つめこみ♪ です!!

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Date:2012/03/15
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