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□ GOっ子達の色んな話 □

全て無かったことにして

 ―――― 元気にしてる? 京介。中学で、もう新しい友達は出来た?


 メールが届く。
 優しいあの声が、そのまま文字になったような。

 カコカコカコ
 カコ、カコカコカコ ―――――


 俺は元気だ。友達は必要ないから、作らない。


 そう打ち込んで、送信する。
 すると、すぐにまた ――――


 京介、友達は必要だよ。一人じゃサッカーも出来ないからね


 俺はもう一度、キーを打ち込む。


 サッカーは出来るさ。チームメイトと友達は別もんだからな


 それだけ打ち込んで、送信する。
 送ってから、5分も経たないうちにメールの着信音。


 久しぶりに京介の顔が見たいな。いつなら来れそう?


 そのメールを見て、携帯のスケジュール表を確認する。
 初戦は負ける予定だったのに、神童が余計な事をして勝ってしまったものだから、今後の予定に変更が生じてしまった。その調整と打ち合わせの為に、一度フィフスセクターの本部に顔出しをしないといけない。と言うよりも、今回の不手際を糾弾されるべく天河原の隼総ともども呼び出しを喰らっている。

( ……学校を休めば、呼び出しの前に顔を出せるな。フィフスのメディカルセンターだし )


 日にちをもう一度確認して、その日にちをメールで送信する。
 相手からの「待っている」のメールを受信した。
 多分、今日のメールのやり取りは、これで終わりだろう。そのメール文をじっと見つめたあと、剣城は自分の携帯をポケットにしまった。

 そんな剣城を見るともなく見ていた、天馬がぽつりと呟く。

「剣城って、よく学校の中でメールしてるよな。一体、誰に送っているんだろう?」
「……誰にって、フィフスセクターの人間になんじゃない? だって剣城は、フィフスの監視者だもんね」
「う~ん、そうかなぁ。なんだか剣城の表情がいつもとちょっと違って見えたから、特別な人にかなって思ったんだけどさ」
「そんな事、どうでもいいよ天馬。次、教室移動だよ」

 信助の言葉に、天馬はまだ少し気持ちを残したまま、次の授業の為にその場を離れた。


  ************************


 梅雨の合間にしては、風がさわやかな日だった。昼食前の散歩を楽しむ入院患者の姿に混じって、剣城と車いすに乗った少し年上の少年の姿が、メディカルセンターの中庭の木陰にある。

「今日、学校は?」
「ん……、この後用事があるから、休んだ」

 車いすの少年は、剣城と面差しが似ていた。
 剣城も、雷門に居る時よりは、少し柔らかな表情をしている。

「それにしても、それが今通っている中学の制服?」

 その少年は、剣城の姿を見て少しおかしそうに口元を抑えた。

「違う。俺はあいつ等と狎れ合うつもりはないから、その意思表示だ」

 剣城はぷいっと、顔を背けてそう言う。

「でも、友達って良いもんだよ、京介」
「俺には兄さんと、自分のサッカーがあればいい」
「また、そんな事を言う。チームメイトとは友達になれないのかい?」
「そんなこと……。兄さんが一番知っているだろう? チームメイトなんて、ライバルであっても、友達なんかじゃない。兄さんのその足だってっっ!!」
「……この足は、俺の実力の無さが招いた結果さ。誰も恨んでなんかいないよ」

 そう言って、車いすの少年はそっと微笑んだ。

 剣城兄弟は、幼い時からそのサッカーセンスが秀でていた。優秀な人材を求めていたフィフスセクターのスカウトの目に留まり、両親に支払われた多額の契約金と引き換えに、二人はシード候補としてフィフスセクターのエリート教育を受けることになった。
 日々の厳しい特訓と、激しいポジション争い。
 不必要なまでに高められた競争意識は、まだ幼さが残る子ども達の精神を殺伐としたものに塗り替えてしまった。

 危険性の高い空中必殺技の特訓中に、体勢を崩したチームメイト。
 そのまま落ちれば、変な角度で落ちることは間違いなく、大怪我になる事は目に見えていた。
 するとそのチームメイトは、その隣で同じ技を練習していた兄を踏み台にして体勢を立て直した。踏み台にされた兄は、単身でバランスを崩した時よりも、より酷く体を高所からグランドに叩きつけてしまった。体を捻って落ちたため脊髄を痛め、半身不随となってしまったのだ。

「俺、兄さんのプレイが好きだった。流れる水のような、無駄のない綺麗なプレイが」
「ありがとう、京介」

 今も変わらない兄の笑顔を見て、剣城は胸の内で更に誓いを固くする。
 この兄だけは、絶対俺が守る!! 
 そしていつかまた、二人でサッカーグランドを駈けるんだ、と。

( そのためにも、俺は…… )

 特別訓練生が、練習中にそんな大事故にあったとなればフィフスセクターの管理能力が疑われる。剣城の両親にはさらに見舞金名目で大金を渡し、半身不随になった兄は治療の為と説得されて、半ばメディカルセンターに隔離された。
 メディカルセンターの医療技術は、日本でもトップクラス。そこで、最高の技術で治療を受ければ、まだ成長過程にある剣城の兄なら、機能を回復できる望みはある。ただそのためには、馬鹿にならない治療費とフィフス内でのそれなりの地位も必要なのだ。

( 何が何でも、フィフスセクターの中で力をつけて、兄さんを治してやる! )

 最高の医療技術を表の顔とすれば、それに見合うだけの裏の顔もある。
 まことしなやかな、薄暗い噂もメディカルセンターには流れていた。

 剣城の兄のような、常識の範囲外の特訓中に大怪我をする練習生は少なくはない。その怪我をした練習生を使って、バイオサイバネティックな実験を行っているという噂も耳にする。そして、その被験者達はいつの間にかセンターから消えている。

 そう、ここにいる兄は、剣城に取ってフィフスセクターに囚われた人質のようなものでもあった。


 ************************


「あら? 今日もお兄さんのお見舞い?」

 顔見知りの看護士が、二人の姿を見かけてにこやかに微笑みながら声をかけた。藤色の髪の色がノーブルな印象を与え、おっとりとした雰囲気が看護士にふさわしい癒しのオーラと同調する。

「ええ。本当に兄想いの奴で」

 剣城の兄が、ほんの少し頬を赤らめ挨拶を返した。

「こんにちは、久遠さん。いつも兄がお世話になっています」

 礼儀正しく京介は久遠看護士に挨拶をした。

「こんにちは、京介くん。あなた達って仲が良くて羨ましいなぁ」
「久遠さんは、一人っ子なんですか?」

 看護士の言葉を受けて、剣城の兄が嬉しそうに会話を続ける。

「ええ、そうなの。私もお兄ちゃんでもお姉ちゃんでも、弟でも妹でも良いから欲しかったなぁ」

 そう言って、ふふっと笑う。つられたように兄も柔らかな笑みを浮かべている。
 このメディカルセンターは、決して兄にとって100%安全とは言い切れない場所ではあるが、この看護士ならなぜか信頼できると、そんな思いを剣城は抱いていた。そんな時、マナーモードにしていた剣城の携帯が振動した。思わず、ピクリと反応する。

「京介?」
「ああ。本部からの呼び出しだ。ちょっと行ってくる」
「……無理はするなよ」

 すっと変わった二人の空気感を、看護士も感じていた。

「じゃ、久遠さん。すみませんが、兄を病室まで連れて行ってもらっていいですか」
「それは私の仕事ですもの、遠慮はいらないわ」
「それじゃ、お願いします」

 剣城は二人の前で軽く頭を下げると、そのまま病院の中庭を出て行った。

「本当に良い弟さんね」
「そう言ってくれるのは、久遠さんだけですよ。あいつ、あんな見た目だから他の看護士さんからは距離置かれているみたいで」

 と、少し悲しそうに呟く。

「私の昔の知り合いにもいたのよ。見た目で損している人。不器用で素直じゃなくて、ひねくれてて。でも、そんな自分が嫌で変わりたいと思っていた優しい人」
「久遠さん?」
「大丈夫。京介くんも、ちゃんと自分の居場所を見つけることが出来るわ。本当の自分になれる場所を」
「久遠さんにそう言ってもらえて、俺も嬉しいです」
「さぁ、そろそろ病室に戻りましょうか? 今日の昼食は何かしらねv」

 明るく笑いかけながら、久遠冬花看護士は剣城の兄の車いすを押して行った。
 早出出勤だった冬花の勤務時間は、この昼食を済ませたら終わりである。

「それじゃ、お先に失礼します」

 まだ勤務時間が残っている同僚に声をかけ、冬花はメディカルセンターを後にした。センターから出て、十分距離を取ったのを確認してから冬花は登録している番号の一つに電話をかけた。

「……はい」
「あ、お父さん?」
「冬花か?」
「今日、お兄さんの所に京介くんが来たわ」
「うむ……」

 短い会話が続く。

「それで京介くん、本部の呼び出しを受けてるの」
「ああ、だろうな。円堂から先日のホーリーロード初戦、雷門は負けろと指示されたと連絡があった」
「……負けろと言われて、負ける守くんじゃないものね」
「そう言う事だ。おそらく、今回の不祥事の責任を追及されるのだろう」
「責任って、まだ中学一年生なのに……」
「場合によっては、入院している彼のお兄さんの身に、何らかの危険が及ぶかもしれない」

 淡々と予想される事態を、久遠は話す。

「それを防ぐ為に、私がいるんでしょ?」
「ああ。だが、お前も無理はするな」
「分かってます、お父さん」

 この時の為に久遠と冬花は分籍をし、住まいも二度ほど変えた。メディカルセンターに就職する際出した冬花の身辺調査票には、両親の名前は実の親の名前が書かれていた。『久遠』の姓は、祖父のものと偽り早くに両親を亡くした天涯孤独の身の上となっていた。住民票を調べても、単身世帯であることが表記されているのみ。
 メディカルセンターとしては、センターの内情が漏れにくい人物と判断され、採用された。

「本当にだぞ」
「今、私があるのは、あの時頑張ってくれたお父さんがいるから。私も、お父さんみたいな大人になりたいの」
「冬花……」

 頼もしい娘の言葉に、久遠は胸に詰まるものを感じていた。


  ************************


「ったく! お前のお蔭で、俺までとばっちりが来たんだぞっっ!!

 フィフスセクターの本部に呼び出され、モニターが設置されたとある一室に通された途端、先に入室していた隼総に怒号を浴びせられた。

「俺のせい? 違うんじゃないのか、隼総。俺の所は11人中、4人しか試合に参加していなかったんだぞ? その4人相手に、化身まで出して戦ったのに負けたお前らの方こそ、よっぽど問題なんじゃないのかっっ!?」
「なんだとっっ!? お前が、フィフスの怖さをあいつ等に叩き込んでないから、4人も反乱分子を出したんだろう!!」

 ふっ、と皮肉っぽく鼻で笑う。

「まぁ、それこそが雷門ってか? 天河原と比べて、やはり破格の存在なんだろうな。格下の天河原に格下のお前、良い組み合わせじゃないか」
「剣城、貴様っっ!!」

 プライドを傷つけられた隼総が、怒りで顔を真っ赤にしている。シード同士とはいえ、常に敵対している関係である。いつ互いを蹴落とすか、その隙を窺っているようなものだ。

「お前たち! いい加減にしろ!!」

 鋭い一喝が飛んでくる。聖帝の側近の一人、試合運行を管理している幹部だ。

「格下を格下と言って、どこが悪い? どうせ天河原中も二回戦では負ける予定だったんだからな」
「なんだとっっ!?」

 勝敗指示は、試合運行幹部が聖帝に承認を得てから、各学校長や顧問・監督、そしてチームにシードがいる場合はそのシードにも通達が出される。ただ機密を守るために、その通達は試合前三日と決められていた。初戦が始まったばかりの今の時点では、まだ二回戦の勝敗指示はその幹部と聖帝が知るのみである。

「なぁ、そうだよな? 天河原の二回戦の相手、ダークホース的に優勝候補の一角にと位置付けた万能坂中を当ててるのはさ」
「剣城、お前……」
「何人送り込んでるんだよ、あそこには」

 剣城は、頭から抑えに掛かろうとしている幹部の出鼻を挫く。簡単に処分なんか、受けるつもりはない。青筋を立てた幹部が、その拳を振り上げようとしたところで、幹部を呼び出す携帯が鳴り響いた。その着信音は、組織の中で唯一取り決められている聖帝のもの。振り上げた手を慌てて下ろし、急いで携帯に出る。

「え? あ、はぁ、はい。いえ、でもっっ!! それでは、示しが……。はぁ、分りました。それでは、仰せの通りに」

 苦虫を噛み潰したような顔で、剣城に向きなおす。

「……聖帝からの御言葉を伝える。隼総、お前は本部に戻ってこいとのお達しだ。たった4人の雷門イレブンに負けた天河原には、向こう一年間一切フィフスセクターからの恩恵は与えない。シードも引き揚げさせる、勝敗指示も出さない。これから一年、練習試合にしろ公式戦にしろ勝ちたかったら、本当の実力で勝ってみろとのご指示だ。ああ、もちろんラフプレイには、今までと違って厳しく当たって行くとのことなので、下手をすると向こう一年間は一勝も出来ないかもしれないな」

 ぐっと、隼総が唇を噛みしめる。天河原は、隼総がシードでなければ幼馴染や小学校の友達と通っていた筈の中学校だった。自分の力で、自分が行くはずだった中学校を勝たせることが出来る。それはやり方は間違っているかもしれないが、隼総にとっては嬉しい事ではあったのだ。

「そして、剣城。お前には、そのまま雷門での監視活動を続けろとのお言葉である。今まで以上に、事細かに連絡を入れるようにと」
「あ、はい」

 剣城も自分で予想していた以上に軽い処置に、面食らっている。

「おかしいじゃないかっっ!! 雷門から反乱分子を4人も出して置いて、なぜそのまま任務を務めることが出来るんだ!? 俺が本部に召還されるのなら、剣城だって同じだろう!!」

 任務に出たものが任務に失敗し本部召還となる時は、地位の降格や地獄のような特別訓練と言う現実が待っている。

「あ~、うむ。確かにワシもそう申し上げたのだが、聖帝は笑ってこう仰ったのだ。『円堂のいる雷門で、サッカー馬鹿を4人に抑えたのは上出来だと』。という訳で、今回の措置はこれで終わる」

 物凄い目で睨みながら、隼総が部屋を出て行った。

( ふぅ、どうやら皮一枚のところで首は繋がったようだな。今の俺には、シードを外される訳にはいかないんだ )

 心の中で強くそう思い、兄の顔を思い浮かべる。

「……剣城。聖帝がお呼びだ」

 隼総が部屋を出たのを見計らい、幹部が苦々しげにそう言葉を伝えた。

「聖帝が?」
「ああ。どんな御用かワシは知らぬが」

 それは剣城にしてもそうであった。
 あれこれ考えてみたが、やはり心当たりはない。
 ならば、となにも構えずに聖帝の間を訪れる。

 薄暗い照明、たくさんのモニター。地球儀を模したフィフスセクターの勢力図標の奥に壇上に、聖帝の椅子に腰かけたイシドシュウジがいた。

「お召を受け、参上いたしました」

 壇上に向かって膝を折り、深く頭を下げる。

「剣城か」
「はい。今回の寛大なるご処置、ありがたく言葉にもなりません」
「構わん。お前は見どころのある奴だからな」
「有難き幸せ」

 臣下の礼を尽くして、形式ばった返答を繰り返す。

「なぁ、剣城。お前にとって、『サッカー』とはなんだ?」
「は?」

 思わず、虚を突かれた。間抜けな反応を示した自分を恥じる。

「……サッカーは、俺にとって憎むべきものです。そこに『サッカー』があるのなら、叩き潰すのみ!」
「ほぅ、それが今のサッカーでも?」
「今のサッカーも、昔のサッカーも関係ありません。その為に、俺はシードになったのです」

 剣城の言葉を聞いて、組んだ両手越しにイシドシュウジこと聖帝が、くくくっと笑う。

「頼もしいな、剣城。今のサッカーをも叩き潰すと言い放つお前なら、私の良き右腕になってくれそうだ。期待している」
「期待に応えたいと思います」
「もう、下がってもいいぞ」
「御意に」

 剣城はそう言って、聖帝の前から退室した。
 誰にも咎められることなく、本部を後にする。
 その胸の中では、一つの言葉がずっと繰り返されていた。


 『円堂守のサッカー』は、大好きだった。
 だけど、そのサッカーが引き金になって、『今のサッカー』になってしまった。
 今の『管理サッカー』と言う、腐りきったものに。
 そして、そんなものの為に、兄は ――――


 ああ、全て無かった事にして ――――
 
 
 初めてサッカーボールに触れたあの頃に戻れたら。
 兄と二人、ルールも知らぬまま無邪気にボールを蹴っていた頃に ――――


 それは今ではもう、願うべくもないこと ―――― 


( 兄さん、いつかまた、絶対俺たちのサッカーをやろうな )


 そう、剣城は心の中で呟いた。



 2011年07月08日脱稿




   === あとがき ===

来週のあの車いすの少年は誰っ? もしかして、京介くんのお兄さん!? と思ったら、思いっきり滾ってしまって、またもやだぁぁぁぁ~~~~と書き飛ばしてしまいました。
IFネタでは、私京介くんのお兄ちゃん、死なせてしまっているんですね^_^; 
いやぁ、うん。生きててよかったよ、ほんと。ましてや、ほぼ同時に公開された冬花ちゃんのナース姿も、もしかしてそうなの? そういうことなのっっ!? ってなっちゃって、妄想が暴走しています。
毎週毎週書きたくなる小ネタが2~3個出てきて、どうにか書き終わったらまた次の回が入ってと、1週間が短すぎます!! だれか、私を止めてください!! っか、書く時間がもっと欲しいっっ!! 切実に!!!




 
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Date:2012/03/15
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