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□ GOっ子達の色んな話 □

いいんじゃね? 好きなんじゃね?


 ポーン ――――


 思わずパスしてしまった。
 だってあいつが、パス下さい! なんて可愛い声で言うもんだから。
 すぐに、両隣から突っ込まれたけどさ。

 なんで、パスを出すんだって。

 なんでって言われても、理由はやっぱり『可愛い』の一言だろ?

 そりゃ、あいつは今の中学サッカーの現状を分かってないと思うよ、俺も。
 でも、本当に分かってないのかな?
 フィフスセクターの勝敗指示に逆らったらどんなことになるか、俺達や三年の先輩達を見てれば、多少は察しがつくというもんだろ?

 その先輩たちが、止めろ! するなっっ!! って言う事をやろうとするのは、どうしてなんだろう。剣城のような俺達を馬鹿にしたような奴じゃない限り、怖く無い訳ないだろうし、不安もあるだろうに。
 自分がサッカー初心者だという、身の程も知っているような奴なんだからさ。

「ありがとうございます! 浜野先輩!!」

 俺がパスしたボールを持って、ドリブルで切り込んでゆく松風。
 あー、上手くなったな、あいつ。
 一生懸命に練習してたもんなぁ。

 負けると決まった試合に向けて。

( 胸が、ざわざわする )

 なんでこの足は、グランドに張り付いているんだ?
 なんで、こんなに息苦しい?
 ゴールを目指すあいつ等が、ゴールを守る三国先輩が、眩しすぎて見ていられない。
 何もできない、自分。

 ( 息苦しくて、陸にあがった魚みてぇだな、俺 )

 色んな思いが頭の中を駆け巡る。
 怖いよな、自分のせいで誰かに迷惑かけたら。
 不安だよな、自分がもうサッカー出来なくなるかもしれないとしたら。
 
 松風、お前チームでサッカーするのは初めてだって言ってたしな。
 今まで、一人でドリブルの練習しか出来なかったって。
 そんなお前の方が、本当はもっとずっと怖さも不安も大きいのかもしれない。

 だけど、お前は嘘がつけないから。
 なんにでも、真っ直ぐにぶつかって行く奴だから。
 自分が一番大好きなサッカーに、嘘はつきたくないんだよな、絶対に!!
 上の奴らには、そんな松風の行動はマイナスでしかないんだろう。

( あ~、内申ってどんだけ意味があるんだぁ? ちっとも本当の書いてねーのにさー )

 それでも、そんな内申でも三年の先輩たちには重要で。

( 他の部の奴らに知られたら、思いっきり馬鹿にされるだろうな。インチキだ八百長だって )

 サッカー部に所属するだけで、それは一種のステータス。
 内申で、大きくものを言うステータス。
 それじゃ、そうと知りながら野球部やバスケ部を選んだ奴らは馬鹿なのか?

 ……いいや、違う。

 やつらは、『それ』が大好きだから、『それ』を選んだ。
 一生懸命練習して、本気の試合で実力をぶつけ合って、勝って負けて、笑って泣いて。
 そうして、いろんな色合いの思い出を作って、中学校を卒業してゆくんだろう。

 そうしたら、今 俺達がやっていることって……。

( ……なんだよ、この気持ち悪さ。ほんとーに俺、サッカーが嫌いになっちまいそう )

 大きなため息をついて、俺は前線に上がって行った神童や松風、西園の後ろ姿を見る。


 ―――― 浜野先輩!! ――――


 松風の声が、聞こえた気がした。

「先輩、かぁ。そうだよなぁ。後輩がいなきゃ、先輩にもなれねーんだよな」

 あんな事があったのに、こんなサッカー部に入ってくれた二人の後輩。
 忘れようとしていた『何か』を持ち続けている、大事な大事な後輩。

「こんな俺でも、あいつらの先輩になってもいいのかなぁ……」

 小さく口の中で呟く。
 ただ見守るだけの試合は、本気で勝ちに行くと言った4人のメンバーで、本当に勝ちを手にしていた。


  ■ ■ ■


 初戦突破したとはいえ、勝敗指示を無視した行為に部内は二つに分かれていた。神童や松風を中心にした、『自分たちの本当のサッカーをやる!!』と腹を決めたメンバーと、フィフスセクターの報復を恐れ萎縮しているメンバーとに。

「……どうなってしまうんでしょう。一度ばかりか二度までも、勝敗指示に従わなかったら……」

 不安と恐れで今に押しつぶされそうな顔をして、速水が言葉を絞り出す。

「今度こそ、潰されるだろうな」

 その言葉を受けて、倉間も吐き捨てる。
 三国先輩以外の三年生も、険しい表情は変わらない。
 険悪な視線が、神童や松風の上に集まる。

( ……なんか、ものすげぇマズイ雰囲気じゃね? )

 このままでは、神童達に非難が集中する。
 俺と同じものを感じたのか、霧野が助け船を出した。

「もう勝っちまったもの、今更ひっくり返しようがないもんな。潰すとしたら、どんな方法で来るかだ」
「ああ、俺もそれを考えていた。試合のVTRを見た限りでは、非難される点は見つけられなかった。となると、試合内容に難癖付けて棄権させる事はしないと思う。もしそんな通達が来れば、俺は断固抗議する!」
「神童……」

 これが、何かあれば涙していたあの神童か?
 雷門中サッカー部キャプテンとしての強さを、その表情の上に見る。

「……正攻法で来るとは限らんだろ? 不慮の事故を装って、選手の何人かが怪我でもさせられれば、不戦敗は免れない」

( おお~ぃ、そんな物騒な事、言っちゃだめだって!! )

「事、事故って……。嫌ですよぉ~!! 足か腕が折れちゃうなんて!!」

 ほらぁ、南沢先輩の言葉を真に受けて、心配性の速水の顔がもう青ざめている。

「しかし、そんな事をしたら犯罪だろう。そこまでのことはしないだろうが、些細な事を大きく取り上げて、それを不祥事と事を大きくして出場停止くらいの事は考えているかもな」

 慎重に考えを纏めながら、三国先輩が発言した。

「だから、できる限りの用心をして欲しい。人目の少ない道は歩かない。出来るだけ一人にならないようにする。窮屈かもしれないが、日々品行方正に振る舞ってほしい」

 はぁぁ、と誰かのため息が大きく聞こえた。

「俺が話したいことは、それだけだ。俺達は二回戦に向けて練習を始めるが、無理強いはしない。無理強いをするサッカーはフィフスセクターのサッカーと同じだからな」

 それだけを言い残し、キャプテン達は部室を出て行った。
 出て行ったあと、部室内はザワザワとした空気に包まれる。

「まったく! 神童があんな何も分かってないような松風なんかに感化されるから、こんな事になるんだ!!」

 ガン! と部室の椅子を倉間が蹴り飛ばした。

「……備品に当たるな、倉間。そんな事でFWのお前が怪我をしたら、話にもならん」
「でも、南沢先輩!!」

 何か考えている風な南沢先輩。

「次も、俺達には負けろと指示が来るんだろうな」
「ああ、多分な」

 そう答えたのは、ずっと黙っていた車田先輩だ。

「その指示に従えば、俺らの評価は変わるだど?」
「どうかなぁ? 二度も指示を無視したチームのメンバーを、最後に言いなりになったからと、無かったことにはしないだろう」

 口元に手を当てながら、霧野が言う。

「……やっぱり見せしめで、廃部にされちゃうんですね……」

 泣きそうな声で、速水が呟いた。
 もう俺の胸の息苦しさは、限界突破。
 思わず俺は、叫んでいた。

「いいんじゃね? もう、廃部にされるなら、俺ら自由にやっても!!」
「浜野っっ!?」

 俺の言葉に、みんなの視線が一斉に集中する。
 みんなの眼が怖い!
 でも、もう後には引かない!!

「なぁ、俺ら何か悪いことしてる? 円堂監督も言ってたけど、試合の勝ち負けはやってみるまで決まってないって。それなのに、わざと『負ける』って、サッカーや相手チームを馬鹿にしてね?」
「今更、そんな事を言うなよ。それが、今の中学サッカーだろっっ!?」

 なぜか、必死な倉間。
 俺にはこの時、倉間の必死さの裏にあるものにまだ気付かないでいたけど。

「勝てば次に繋がる、か……」

 ぽつりと、南沢先輩が口にした。

「南沢、お前……?」

 意外な言葉を聞いたというように、車田先輩と天城先輩が南沢先輩を見ている。その二人よりも顔色を変えたのは……。

「次の相手が、どんな無茶をしてくるか分からないんだ!! 今無理をして、大怪我でもさせられたら、先輩たちが高校でサッカーが出来なくなってしまう!」
「倉間、お前……」

 びっくりした。
 いつも憎まれ口しか叩かないこいつが、こんなにも先輩思いの奴だったなんて。

「結構、良い後輩じゃないか」

 あの南沢先輩が、ほんの少し笑っていた。

「そんな風に思ってくれているのなら、少しは先輩らしいところも見せたくなるな。試合で本気になるところとか」
「南沢先輩!!」

 ふっと、部室内の風が変わった。

「……後輩って良いもんだな、浜野」
「へへっ、そーすっね! 車田先輩」

 俺は腕を頭のの上に回し、いつものようにへらっと笑って見せた。

「でも、済みません。俺、倉間ほど先輩思いじゃないみたい。自分がやりたいって気持ちで言ってます」
「やりたい、ってサッカーを?」
「そう、自分のサッカーを。本当はもう、管理されてやりたいようにできなくて、こんな息苦しい気持ちになるならサッカーなんてって思いもあったんすよ。でもやっぱ俺、サッカー好きなんじゃね? って気持ちを思い出してしまったから」

 にひひと、笑う。
 それは、あの松風達の姿を見てしまったから。

( だって、あっちの方が楽しそうだし )

 俺の足も、グランドに向かう。

「じゃ、俺も練習に行きます」

 ひらひらと後ろ手で手の平をひらめかせ、部室を後にした。


  ■ ■ ■


 広いグランド上には、シュート練習をしているキャプテンと三国先輩。一年坊主二人は、パス練だ。

「お~い! 俺も仲間に入れてくれ!!」

 手をぶんぶんと振りながら、パス練をしている二人に近づいてゆく。

「浜野先輩っっ!?」
「浜野先輩、ありがとうございます!!」

 うんうん、いいよな♪ この、先輩って響き。

「浜野、お前……」
「へへv こっちの方が楽しそうだから、俺も混ぜて♪」

 俺の側に近づいてきたキャプテンと三国先輩が、真剣な顔をして俺を見る。

「いいのか、浜野?」
「ん、いいっすよ。俺にそれを聞くよりも、部の存続を考えずに、自分のやりたいサッカーをやるって決めた俺のワガママの方がアレでしょ?」
「浜野……」

 気持ちはみんな、同じなのだ。
 後はどれだけ、ワガママとも言える『自分の気持ちに正直』になれるかどうか。
 本当の、自分のサッカーをやりたいという気持ちに。

「西園~、デイフェンスラインの練習するぞ。松風は、そのラインを突破する練習な」

 ボールを片手に、ウインクを決めて俺はゴール前についた。俺の隣には、チビのくせにそのファイトは、超ドでかい西園。こいつの物凄いジャンプ力を生かしたディフェンスプランを考えてやりたいと思う。

( 後で、キャプテンと相談してみよう )

「そら! 攻めてこい、松風!!」

 手にしたボールを、松風の足元にパス。そのボールを見て松風はキャプテンの方を見、目配せするとタンっ! と走り出した。

「いいか、西園。ディフェンスは相手の動きをいかに見極め、その進路を阻むかが勝負だ。先を読むんだぞ」
「はい! 浜野先輩!!」

 いいね、いいね。
 本当に、『先輩』って響き、いいんじゃね?

 見せてやるよ、俺の本気。
 びっくりするなよ!!

 松風の動きに合わせて、すぃとその一歩先を塞ぐ。松風が反転すれば、同じようにこちらも反転、前に出さない。
 すいっ、すいっ、すぃ~と。
 松風の足をすくう波のように。

「うあぁ、凄いです!! 浜野先輩! まるで俺の周りに海流があるみたいです!!」

 言え、言え、もっと言え!
 お前の声が、言葉が、俺のやる気に結びつく。

「三国先輩……」
「ああ、久しぶりに見るな。浜野のあんなプレイ」
「ええ。まるで水を得た魚のようなプレイですね」

 二人のにこやかな笑顔も、俺には嬉しい。
 そうだよな!
 大好きな事をやるって、こんな気持ちだよな。
 だから、俺は ――――

「浜野先輩っっ!!」

 松風の声が俺を呼ぶ。
 やっぱり、俺は ――――



 ―――― 好きなんじゃね?



 そう叫びたい気持ちで、思いっきりサッカーボールを蹴っていた。
 
 

  2011年07月10日脱稿





   === あとがき ===

天河原中戦後の浜野くん視線のSSです。浜野→天馬っぽいですが、腐までいかないかも? 
円堂世代のメンバーと違って、なかなかGOっ子はサッカーに素直になれない子が多いようです。
一人ひとり落としてゆく必要がありそうですね♪ 
あっ、見ようによっては南倉っぽくもあるかな(笑)



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Date:2012/03/15
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