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□ GOっ子達の色んな話 □

ライモン・ラプソディ


 月山国光戦が終わり、ようやく俺のストレスも軽減しつつある今日この頃。

 しかし、またもあいつの所為で俺は、頭を痛める日々を過ごしている。
 これもストレスと言えばストレスだが、あんな訳の分からない絡まれ方でない分、ぶっちゃけ気は楽だ。

 そのストレス源は、今日も元気にフィールドを走り回っている。

「ねぇねぇ、天馬くんvvv 一緒に走り込みに行こうよ♪♪」
「あっ、柔軟するの? じゃ、俺が天馬くんの背中押してあげる。うわぁ、天馬くんって体柔らかいんだ!!」
「天馬く~んv パス練しようよ!!」
「DF技の練習をしたいから、付き合ってよv 天馬くん♪」


 キリキリキリ、キリ ――――


 俺の隣で神童が、その狩屋と天馬の練習の様子を、胃に手を当てながら見つめている。見つめる瞳には、薄らと涙が浮かんでいる。

「なぁ、神童。狩屋に天馬を独り占めされたくなかったら、お前も一声かけろよ。天馬はお前のモンじゃねーぞってな」
「いや、でも、俺にそんな事言う権利はないし……」
「権利? 権利がどうしたって言うんだ?」
「こ、恋人とかなら、手を出すなって言えるけど、でも俺と天馬は……」

 と、真っ赤になって俯いてしまう。

 あ~、だぁぁぁっっ!! とじれったくなる。
 神童が天馬に、可愛い後輩v という以上の感情を抱いている事なんて、部員全員にバレバレだってーのっっ!! それを今更、何を言う!?

 そりゃ俺だって、入部当初から比べれば、あいつを見る目は変わったさ。
 最初はウザいだけの新入部員だったのが、その頑張りに、その熱意に、そして見せてくれた勇気に、俺は俺達は変わりたい!! と強く望んだ。

 天馬、その名の通り大空を羽ばたくその翼で、革命(かぜ)を起こした。
 変わらない方が、どうかしている。

「なら、言えよ! 俺と付き合えって」
「言える訳ないだろうっっ!! 天馬の気持ちが何処にあるのか分からないし、天馬の周りはああだし……」

 ぴっ、とフィールドを指さし、ふにゃぁと神童の顔が崩れた。
 天馬の周りには、一・二年生を中心にした人だかりが出来ている。

「霧野~~~」
「あ~ぁ、もう!!」

 天馬は天真爛漫、人を疑う事を知らない。
 時にはその爛漫さが気に触り、邪険にされることもある。それでも一生懸命頑張る姿を見れば、いつの間にか絆(ほだ)されてしまうのだ。
 俺が変わったくらいだ、当然皆も変わった。だから……


  ■ ■ ■


「おい! 狩屋!! この前月山国光で決めたチュインシュート練習するから、天馬を寄越せ!」
「え~、でも、俺まだ練習終わってませんもん。それに倉間先輩はFWでしょ? それなら、そこでものっすごく機嫌悪そうにしているFWの剣城くんと練習した方がいいんじゃないんですかぁ~v」

 猫っ被りな物言いと相反する、底意地の悪い視線をチロと剣城に投げかける。

「……………………」

 その裏表少年の挑戦を、剣城は無言で受け止めた。

「済みません、倉間先輩。もう少ししたらパス練終わるので、そしたら倉間先輩と練習します。それまで剣城と練習していてください」

 ペコ、と礼儀正しく頭を下げる天馬。
 前向き過ぎて、空気が読めない場合もままあるが、それでも常に先輩を立て、練習そのものには直向きで、サッカーに真摯に向き合う姿は今では雷門の指針となっている。

「あ、ああ。天馬がそう言うなら……。おい、剣城、こっちに来い!」

 不承不承ではあるが、取り敢えず天馬と練習できる約束を取り付けたことで倉間は良しとした。
 天馬も狩屋の側を離れ、次のパス練の位置についている。

「だけどさぁー、狩屋。やっぱ、お前天馬独り占めにしすぎだっちゅーの!! 他の奴との連携も大事っしょ?」
「そうですよぉ、俺だって足の速い天馬くんとの連携技を試してみたいんですから」

 残った浜野と速水からも、そんな声が上がる。

「……天馬くんを独り占めっていうけど、そう言う先輩方こそ独り占めしたいんじゃないんですかぁ? うわぁ、先輩だからって後輩にそんなことしちゃって良いのかな?」

 二人の胸の内を見透かして、にやりと含みのある笑いを見せる。

「狩屋、お前……」
「……仕方ないから、俺の練習が終わったら天馬くんをお返ししますよ。その間は、自分達で練習していてくださいね。倉間先輩といい、速水先輩といい、天馬くんがいないと自分の必殺技一つ、決められないなんて使い物にならないでしょ?」

 ……痛い所を突かれた。

 浜野の「波乗りピエロ」はドリブル技。絶妙な間合いで敵を抜いてゆくので、まぁ効果は△くらい。しかし、それに比べ速水の「ゼロヨン」は絶対サッカー向きの技じゃない。構えからして時間がかかるし、あれだけのスピードがたかがボールをカットするためだけに使われるとしたら、それ、使い方間違ってなくね? と言われても仕方がない。それに気づいていたから、速水もあまりこの技を使いたくなかったのだろう。
 でも、速水と同じくらい足の速い天馬がいれば、二人で超高速連続パスが出来る。一気に相手ゴール前まで駆け上がれるくらいに。速水の言う、連携技とはこの事だろう。

 倉間は……、まぁ見て通りだ。倉間単体の「サイドワインダー」では、フィフスセクターの息が掛かったチーム相手には通用しなかった。天馬のマッハウインドとサイドワインダーの連携技だったからこそ、決まったようなもの。

「ひ、酷いですよぉ~~。そんなに、はっきり言わなくても……」

 とうとう速水が泣き出した。

「じゃぁ、俺にこんな事言われないで済むよう、特訓でもしてください、速水先輩♪」

 フィールドに膝を付き、両手で顔を覆って泣きだした速水を浜野が慰めている。狩屋はふふん、と思いながらにこやかな、心からにこやかな笑みを浮かべて、天馬の元に走って行った。

 ぐすぐすと泣いている速水を連れて、浜野が俺たちの所に来た。
 浜野もやれやれ、といった顔をしている。

「成程なぁ。あんな愛憎渦巻く中に飛び込むのは、お前の心臓が持ちそうにないな。いや、俺も狩屋の猫っ被り攻撃を受けていた時は、とにかく腸(はらわた)が煮えくり返りそうだったけど」
「……だけど、狩屋の言う事は一理あるんだ。頭ごなしに否定することも出来ない。そして、狩屋自身が今の雷門にとって、大きな戦力である事は間違いないんだ」

 そう言って、またさめざめと泣く。
 あ~あ、面倒くせぇ!!
 また、泣き虫キャプテンに逆戻りかよ!!

 ……そう、俺が今、頭を痛めている原因はこれだ。
 

  ■ ■ ■


「あれ? 速水先輩どうしたんだろう?」
「ん~、目に砂でも入ったんじゃない? 天馬くんが気にすることはないよ。ホラ、キャプテンもそうみたいだしv あそこだけ小さなつむじ風でも吹いたんじゃないかな?」
「そう……、なのかな?」

 俺達を気にしながら、天馬は狩屋とのパス練を再開する。天馬も狩屋との練習で、体のキレが良くなったのは感じているようだ。とにかく、狩屋のバランス感覚は凄い。俺も、反射神経はまるで山猫のようだと思う。天馬も、それを感じているのだろう。そして臆面もなく、そのまま狩屋に言ってしまうのが、天馬だ。

「狩屋って、本当に凄いね! 俺もそんな風になりたい!!」

( あ、また天馬が何か狩屋を喜ばせるような事を言った )

 狩屋の表情が、ぱっと輝いたのを俺は見逃さなかった。

「天馬くんがそう言うなら、まだパス練続けても良いよ」

( 出来ればその方が、俺に取っても都合がいい。ずっと、このまま二人で ―――― )

 そんなお花畑のような事を、狩屋は思っていた。

( しかし、あの猫っ被りが、あそこまで天馬にぞっこんになるなんてなぁ、まったく思いもしなかったぜ )

 入部当初の狩屋の天馬に対する評価は多分、俺と大差ない。ただ、俺の立ち位置を狙っていた狩屋としては、俺を孤立させるために、あまり気に入らないと言うよりは、明らかに馬鹿にしていた天馬さえ味方につけようと『良い顔』をして接していた。

 そんな狩屋の『表』の顔に騙され、クラスメートとして、またチームメイトとして、いつも笑顔で付き合っていた天馬。人を決して『悪く』捉える事のない天馬。

 騙しやすかっただろう、そんな天馬は。
 こんな甘ちゃん、手玉に取る事なんて朝飯前 ――、と。

 だけど、違った。

 天馬は騙されていた訳じゃない。
 本気で、信じていた。
 サッカーに対する、狩屋の本気を! 真摯さを!!

 その真直さに、さしもの狩屋も折れた。
 敵わない、と思ったんだろ?
 そして、天馬の側の居心地の良さに気が付いた。

 気が付いてしまえば、その場所を誰にも譲りたくなくなる。たとえ化身使いのキャプテンが涙目で訴えても、元シードの剣城がその鋭い視線で射殺しそうに睨み付けても、どこ吹く風。

( 本当に欲しい獲物は、さっさと自分のモンにした者の勝ち。だから、俺を恨むなよ? あんた達がチンタラしてるのが悪いんだ )

 天馬に見せるニコニコした笑顔と対照的に、恋のライバル達にはそんな風に心の中で赤い舌を出して見せる。

( ……な、こと考えてやがるんだろうな、あの野郎は )

 散々、あいつの良いようにあしらわれたからか、今だと何故か狩屋の考えていることが手に取るように分かってしまう。

( えっ!? あれ? もしかして俺達って、似た者同士って事か? )

 そんな考えに行きつき、俺までドーンと気分が沈む。

( でも、まぁ、神童に誰かそんな目的で近づく奴がいれば、俺も同じ事するかもな )

 俺は思わず、遠い目をしてしまった。


  ■ ■ ■


「狩屋、俺そろそろ倉間先輩のとこに行くね」
「あ、ああ。じゃ、俺も練習付き合うよ。倉間先輩シュート練習だろう? 実戦で使えるようにするには、実際シュートコースを塞ぐDFの動きも読んだ方が良いだろ?」
「うん、そうだね! 練習に付き合ってくれてありがとう!! 狩屋!」

 今の狩屋なら、嬉しそうに笑う天馬の笑顔を見れば、どんな嫌な事も忘れてしまえるだろう。どんな理由を付けてでも、天馬の側から離れるつもりもない。そして、自分以外の誰かと天馬を、二人きりなんかにさせるものかという、狩屋の打算なんて知らずに天馬は笑っている。

( そう、これが問題なんだよなぁ…… )

 天馬は自分に向けられる、恋情や劣情、情動の全てを友情の一環としてとらえている節がある。仲良きことは美しきかな、とばかり誰をも受け入れてしまう。

 その結果が、この矢印の集中砲火だ。
 本人は、まったく気づいていないけど!!

「遅いぞっっ!! 天馬!」

 倉間の声が響く。
 あ、あいつもそうだっけ……

 その声に応えるように走り出した天馬が、思わず転びかける。
 何が起きたっっ!?
 天馬の足元には、いつの間にかフィールドに寝転んでいる狩屋の姿。このまま天馬が転べば、狩屋の上に倒れ掛かるのは目に見えている。

( はっ!! もしや狩屋の奴、皆の面前で事故チュー装って、天馬の唇奪う気かっっ!? )

 もし、そうなったら……

( ヤメテくれ~っっ!! 神童が再起不能になってしまうっっ! )

 そんな俺の心の叫びが聞こえたのか、今にも狩屋の上に倒れ掛かりそうだった天馬の体がグイと逆の方に引っ張り上げられた。そこには、明らかに鋭い眸に怒りの炎を燃やしている剣城が。
 テレポートでもしたのか? あの速さは、尋常じゃない。

「……狩屋、お前、今なにをしようとした?」
「え~、俺なにもしてないよ。ほら!!」

 と、フィールドに訳もなく横たわっている理由はなんだ!?

「……狙っただろう? 天馬との事故チュー」

 ギラリギラリ、こんな剣城の瞳を見るのはずいぶん久しぶりかもしれない。

「そうなのかっ!? 狩屋!!」

 倉間の眸は、底冷えのする蛇の眼で。

「やだなぁ、俺がこの神聖なフィールドでそんなことする訳ないじゃないか。それよりも剣城、天馬くんを強く抱き締め過ぎ!!」

 倒れ掛かった天馬の腕を取り、強く自分の胸に引き寄せ、そのまま抱きしめていた剣城。俺の隣で神童の、涙のダムが決壊した。
 俺の足元で、ガツンガツンとフィールドを固めている音がする。

「……もう、みんな誰も彼も天馬、天馬って……。分かってないなぁ、まったく!! 天馬の一番は、初めから親友の僕に決まってるじゃないかっっ!!」

 その叫びと共に、バフンと俺の足元で勢いよく砂煙が巻き上がる。
 
( あー、ぶっとびジャンプ、発射かぁ……。つか、信助お前もなのかっっ!? お前は、純粋無垢なマスコットキャラのピカ○ューじゃなかったのか!! )


 俺は完全に匙を投げた。
 俺の足元には、さめざめと、グスグスと泣き続けるMFが二人。FW二人とDF二人は、天馬争奪戦の真っ最中。流石に年長な三国先輩を始めとする三年生は、賢く最初から傍観を決めていた。

 残る一人は ――――

「……浜野、お前だけでも残ってくれて、俺は嬉しいよ」
「ん~、ちゅーか俺、漁夫の利狙ってんの♪ 鶴ちゃんはGETしたから、次はあの騒動から逃げだした天馬を狙ってさ♪♪」


 あああっっ!! 誰か、こいつ等をどーにかしてくれっっ!!
 毎日、毎日、同じことを繰り返しやがって!!
 神童がこの様じゃ、神のタクトもあったもんじゃない!!


 風が吹いて、少し自由になったサッカー少年たち。
 その雷門のフィールドから聞こえるのは、恋の鞘当て、調子ぱっずれの狂想曲 ――――


  2011年10月20日脱稿




   === あとがき ===

24話で狩屋くん、見事なデレを見せてくれました!! 
それを記念して、マサ天で天馬総受けのギャグを書きました♪ 久しぶりだったので、楽しく書けましたvvv 
狩屋くんがおひさま園出身の予想も当たり、かっこいい南沢先輩も見れたし、早々にフィフス本部に乗り込む円藤監督もvvv 見どころてんこ盛り24話でした!!                           
10月21日付RL87位でランキング入りしました♪ 



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Date:2012/03/15
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