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□ GOっ子達の色んな話 □

【企画・七色他校】 どっちがこわい? 【天河原・万能坂・海王学園】


 雷門中にブロック大会で負けたことで、天河原の隼総、万能坂の磯崎と光良と篠山、海王学園に至ってはキャプテンの浪川だけでなく監督やコーチ、その他のチームメイト全員がフィフスセクター本部に呼びつけられていた。

 呼びつけた幹部は、そんな彼らを嘲り、罵倒し、さんざんその自尊心を傷つけた。誰もがその悔しい思いに、拳を握りしめ、唇を噛みしめて、荒ぶる怒りをどうにか抑え込もうとしていた、その時だった。

 真っ先に雷門に敗北を喫した隼総がきっと顔を上げると、一言幹部に向かって言葉を吐き捨てた。

「って、そんなに俺らを詰るんなら、俺らと同じだけの特訓して化身出して、それからあの雷門に勝ってから言えよっっ!!」

 ダンっ! と、足を踏みしめ、全身でそう訴える。

「き、貴様っっ!! お前はフィフスセクターのシードでありながら、その上司である俺に楯突くのかっっ!?」
「ああ! この歳で判りたくもなかったけど、無能な上司を持ったサラリーマンの悲哀をひしひしと感じてるぜっっ!!」

 いつもと違う、隼総。
 こんな熱い奴だったか? という視線が他校のシード達の間で飛び交う

「……そんな生意気な口を叩いて、無事に済むと思っているのか!? お前だけじゃないぞ! 天河原中サッカー部を廃部にするだけじゃなく、廃校にだって出来るんだからな!!」
「一体、どんな理由で廃校にするんだ? まさか、自分たちが出した八百長の指示通りにならなかったから、なんて言うんじゃないだろうな?」
「理由なんていくらでもつけられる! 在職中の教職員が、生徒に淫らない行いをしたとか、理事長や校長が私学交付金を不正に着服したとかな!」

 隼総の表情に、にやりとした笑いが浮かぶ。

「そう、それがお前たちの常套手段だよな。そんなみんなでっち上げの嘘で何人もの人生を破壊するんだ、お前たちは!!」

 皆が、その成り行きを息を殺して見つめている。
 頭に血が上り、今にも血管が切れそうなほど激怒している幹部も怖いが、そんな幹部を前にして一人闘いを挑んでいる隼総も怖い。

 雷門がフィフスセクターの『管理サッカー』に反乱の意を表明して、苦しい戦いを続けているのは、ここにいる誰もが知っている。フィフスセクターに逆らう事、それは自分たちの将来を棒に振る事。

 さっき幹部が言ったように、サッカー部だけではなく学校そのものが無くなってしまう。希望した高校にだって、本来なら入学できる条件を満たしているにもかかわらず理由不明で落とされる。その処置は、大学入試だって就職にだって、暗い影を落とし続けるのだ。

 それが怖く無い人間などいるのだろうか?

「お、お前っっ、お前なんかは、さっさとフィフスセクターから出ていけっっ!!」
「ああ、言われるまでもない。俺もシードを辞めるつもりで、今日はここに来たんだ。これで、ようやく本当に好きなサッカーを自由にやれる。雷門の奴らのようにな」

 ふふふっと余裕の笑みを浮かべ、いつ頭の血管が切れてもおかしくない幹部を後目に、他の仲間たちに意味ありげな笑みを見せてその場から出てゆこうとする。

「……か、必ず潰してやる!! お前も、天河原もっっ! このフィフスセクターの名に懸けて!!」

 とうとう我慢出来なくなったのか、隼総が笑い出した。

「良いねぇ、その台詞! 本当に組織の下っ端らしくて、俺達のような年少の者をいびるしか楽しみの無いあんたにピッタリだよ!! ついでに記念撮影してやるよ」
「雷門が勢いづいているからって、お前まで調子に乗るな!! いいか、言っておくぞ! お前がシードを辞めたからと、今までお前がやってきた事が帳消しになる訳じゃない。フィフスセクターがサッカー関係者に恨まれているのなら、当然お前にもその恨みは向かう。街中で、どこの誰とも知らない奴にいきなり刺されないとも限らないぞ!!」

 いきなり始まったこの事態に茫然としていた磯崎だが、ふと隼総の手元を見ると、今の状況は幹部の表情から怒声、その恐喝とも取れる内容まで克明にムービーで撮影されていた。

( おい、どういうつもりだよ、隼総…… )

「撮るな!! いい加減にしろ!!」

 隼総の携帯を取り上げようと伸ばした腕を、難なく躱し軽いステップで幹部を翻弄する。磯崎の目は隼総の指が、メールの送信ボタンを押すのをはっきりと捉えた。

「……もう、遅いよ。あんたがここで喋った事は全部音声データと動画にして、あっちこっちにバラ撒いたから。あんたさ、口が軽いんだ」

 その一言で、さっと顔色が変わる幹部。
 現在は、個人でも世界中に情報を発信できる時代だ。
 一個人のさりげない呟きが、世界を変えることだってある。

 自分のしでかした失態に気付き、雷門に負けたシード達を叱責する段ではなくなった幹部は、何も言わずに部屋を飛び出していった。


  ■ ■ ■


( …今ので寿命、三年縮んだ。いや、四年 )


 ふぅぅぅ、と磯崎は冷や汗を拭う。

「……隼総、お前一体どうしたんだよ? 幹部相手に、あんな啖呵切って」
「ん? まぁ、今まで堪りに堪っていた鬱憤をぶつけただけだけど? だってさ、俺より年下の剣城が勝手にシード辞めて、楽しそうに雷門でサッカーやってるの見たら、なんだか馬鹿らしくなってさ」

 さっぱりした顔で隼総は、磯崎にそう言う。それから、ぐるりと周りを見回し、言葉を続けた。

「お前らは、そうじゃないのか? 今のサッカー、楽しいか? 自分の本当にやりたいサッカーか?」

 雷門に吹いた小さな風は、いつしかフィフスセクター内にも嵐を巻き起こしつつあった。

「……お前は、お前は負け続ける悔しさや惨めさを知らないから、そんな事を言えるんだっっ!!」

 拳を震わせているのは海王学園の浪川だ。

「隼総、お前今のサッカー楽しいかって聞いたな? ああっっ! 俺は楽しいぜ!! フィフスセクターの傘下に入って、シードにまでしてもらって!! 勝つ喜びを俺達に教えてくれたのは、フィフスセクターだ!」

 それは間違いなく海王学園みんなの思い。

「勝つ喜び、かぁ。確かにそれも悪くない。でもサッカーって、『勝つ』だけが価値なのか?」
「隼総……」

 気のせいかもしれないが、なんとなくふわっと隼総の雰囲気が変わったような気がした。そう、ほんの少し。

「俺も、そう思っていた。雷門に負けた直ぐは。でもさ、うちの喜多が言ったんだ。俺達の『本当の勝ち』ってなんだろうって、な」
「……『本当の勝ち』?」

 誰かが小声で繰り返した。

「筋書きの上での勝ったり負けたりって、それって絶対『本当』じゃない。だから、今負けたのだって、俺達にとっては『本当の負け』じゃない。『本気』の試合をしていない者が、『本物』になれるはずもないってさ」

 隼総の言葉に、皆しんと黙り込む。

「じゃぁ、お前たちとやった雷門の勝ちも、『本当の勝ち』じゃないのか?」

 それは誰が訊いたのだろう?

「……お前は、そう思うのか? あの雷門と戦って」
「いや、あれは本物だった。だけど、俺達は……」

 誰もが思う。
 フィフスセクターの手の内にいる間は、自分たちは決して『本物』になれないと。どんなに強く、負けることがなくても、それはしょせん『フィフスセクターのシードだから』と言われてしまうのだ。

「目指すものを見失っていたんだな、と喜多は言ったよ。キャプテンである自分が、外圧に屈して『心の在り方』を見失っていた。自分の名前に恥ずかしいと」

 隼総のふわりとした感じは、さらに強くなる。

「……俺は、天河原に残りたいんだ。シードだと、一つ所に落ち着くことも出来ないからな」
「でも、天河原サッカー部が……」
「ん……、一応言質は取ったけどな。あの幹部を処分したうえで、もっと巧妙に事を運ばれたら廃部や廃校もあるかもしれないけど、それならそれで良いと喜多が言ってくれた」
「隼総……」
「そうなった時は、皆で同じ学校に転校してサッカー同好会から始めようぜ!! って言ってくれてな。それこそ、十年前の雷門の例もある訳だし」

 そう話す隼総の姿が眩しい。
 たった一人で雷門に立向った隼総。
 負けはしたが、その試合でとても貴重なモノを得ることが出来たのだろう。そんな隼総の姿を見て、磯崎は何か熱いものが胸に忍び込むのを感じた。ドキドキするような、足が浮くような、何かできそうなそんな予感。

「……自分の名に恥ずかしい、か。天河原中のキャプテンのフルネームは何というのかね?」

 隼総たちの会話をじっと聞いていた海王学園の監督が、唐突に声をかけてきた。

「あ、えっと、喜多一番です」
「喜多一番……、北の一番、か」

 口の中で呟き、そっと片頬だけで微かに笑む。

「確かにそうだな。そいつが動いちゃ、われらも困る。ああ、われらも見誤っていたようだ。この船が目指すべき水平線の先を」
「監督?」

 善峰が首を傾げて、監督の顔を覗き込む。

「俺がお前たちに勝利の喜びを感じさせたいと、目の前の偽りの勝利に飛びつかせたのが間違いだった。力はついたが、お前たちの心は狭い港の中で、大きな重たい錨に繋ぎとめられてしまっていた」
「監督……」

 部員が不安そうに声をかける。

「……仰ぎて正す羅針盤、か。俺達も、重たい錨を巻きあげて、大海原に出港だ。誰にも指図されない、自由なサッカーをするために」
「監督がそんなこと言って、大丈夫なんですかっ!?」

 皆が、口々に言う。
 やはり、廃部や廃校の怖さに縛られているのだ。

「ああ。で、済まないが隼総、先ほどのデータを俺の携帯にも送ってくれないか?」
「ええ、それは構いませんが……」
「こんなことを言う幹部がいるような組織に、加担したくない。子ども達を大事に思うなら。決別すべきと理事や校長に談判する!!」

 海王学園の校風は、海の男らしく荒っぽいが、その実曲がった事は大っ嫌いな率直さがある。あの恐喝紛いな発言は、学園の上層部を怒らせるのに十分だろう。
 来た時とは異なり、どこか吹っ切れた清々しい表情で海王学園の一団は引引き揚げて行った。

「なぁ、磯崎……」

 ちょんちょんと、磯崎の袖を左右から引く光良と篠山。

「ん? なんだよ、お前達」
「……俺らもシード辞めれば、万能坂に残れるのか?」
「ああ、多分。シードさえ辞めれば、一応フツーの中学生だろ? 俺達。フィフスセクターに言われたからって、言う事きく義理はもうない訳だし」
「なら、俺も……」

 と、小声で光良と篠山が呟く。

「良いのか? お前達。今までシードだから与えられてた特権や保証が無くなるんだぞ?」

 そう、シードとしての特権。
 それは、エリートとしての将来を保証すると言う約束。

「……今が楽しく無くて、大人になってエリートになっても、もうその時には、今の自分には戻れない訳だし」
「インチキで手に入れたエリートコースなんて、いつか嫌になりそうだから」

 磯崎たちの会話が耳に入ったのか、部屋を出る前に隼総が最後にこんな声をかけてきた。

「インチキなのは試合内容だけで、俺達が苦労して手に入れたサッカー力は『本物』だぜ? それまで否定する必要はないからな!!」

 ヒラリ、と手を振って隼総も部屋から出て行った。
 磯崎達三人が、顔を見合わせる。

「じゃ、俺達三人も……」
「そうだな。もう、いいよな?」
「では、そーゆー事で♪」

 磯崎・光良・篠山の三人も、すっぱりとシードを辞めた。
 晴れ晴れと、肩が軽い。もう二度と、ここへは来ないと決意して、三人は、その部屋を後にした。


   ■ ■ ■


「隼総っっ!!」

 フィフスセクター本部の通りを挟んで前のカフェで待っていた喜多が、隼総の姿を見るなり、そう声をかけた。

「喜多、待たせたか?」
「あ、ああ。お前からの中継を聞いて、気が気じゃなかった」

 あの時、隼総の通話相手はこの喜多だったのだ。もし自分に何かあれば、この録音しながら聞いていた内容と、メールに送付された動画とを持って警察に連絡してくれと頼まれていた。だから、そう言う言葉が嘘じゃないのは、薄らと額に浮かんでいる汗が物語る。

「心配かけて、悪かったな。でも、こうでもしないとあいつ等に良い様にされてしまうからな」
「それにしても、大胆だな。大人相手に、あれだけの喧嘩をするなんて」
「歳と成りだけは大人でも、頭の方がそこまでじゃなかったみたいだぜ?」
「もう、お前は! 本当に、恐かったんだぞ!? お前に何かあったらって……」

 真面目な顔をして、真剣に心配してくれる。
 隼総には、それが嬉しかった。

「……安心しろ、喜多。星になったあいつみたいに、俺は燃え尽きて無くなってしまったりはしないから。いつでも、お前の側にいてやるからさ」
「なっ……! 馬鹿な事言うなっっ!!」

 真っ赤な顔をして、頼んでいたアイスコーヒーをストローで一気に吸い上げ、むせてしまう。赤くなった顔の、その瞳にじんわり浮かんだ涙は、はたしてどちらのものだろう?

( ……あんな奴、こわくなんかないさ。そう、お前に嫌われてしまうよりは、ずっと怖く無い。喜多、お前がいたから、俺勇気が出せたんだ )

 涙を浮かべながら、笑う喜多の姿を愛おしそうに見つめる。
 これから、本当の時間を重ねて成りたいものになるんだと、隼総はそっと胸の中で呟いていた。



  2011年10月24日脱稿






   === あとがき ===

素敵な企画を五十嵐様が立ててくださったので、さっそく参加させてもらいました。【企画・他校だって七色卵】
■使用タイトル 「どっちがこわい?」                                 
■使用セリフ( …今ので寿命、三年縮んだ。いや、四年 )
ブロック大会後、負けた対戦校のシードを集めて、フィフスセクターの本部でお説教を食らう話。
若干隼喜風味v (あ、帝国の御門くん達を入れ忘れましたっ! テヘ、ペロっ(^_-)




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Date:2012/03/15
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