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□ GOっ子達の色んな話 □

【吹雪】 REINCARNATION 【雪村】

 ……幼い頃から、ずっと思っていた。
 鏡に、自分の顔が映るたびに。

 青紫色の髪、目じりの下がった優しい大きな瞳。

 『自分』の顔だと分かるのに、自分ではないような気がして ――――

「……お前、誰なんだよ」

 何度鏡に映る自分の顔に、そう呟いたか分からない。
 白恋中学校サッカー部キャプテン、雪村豹牙。
 それが俺の名前。

 俺は生まれついてのサッカー好きで、そんじょそこらのサッカー好きとは格が違うと、そう自負している。その根拠が何処にあるのかなんて、全く判らないが、フィールドを駈けるたび自分はサッカーをやる為に生まれてきたんだと強く感じていた。

 サッカーが好きだ!
 好きで、好きでたまらない!!
 もっと強くなりたい!! もっと、もっとだっっ!!!

 俺の中で溢れそうな、その想い。
 強くて、熱くて、激しくて ――――

 それだけに、俺は自分でもその想いが怖くなる。


 ―――― ソレハ、本当ニ俺ノ想イナノカ?


 鏡に映る自分の姿に違和感を感じるのと同じように、その想いは俺の心の奥底に巣食って大きくなるばかりだった。


  ■ ■ ■


「どうかしたのか? 雪村。思いつめたような顔してるぞ?」

 中学に入ってから親しくなった部員が、俺の様子に気付いてそう声をかけてきた。

「えっ? ああ。うん、何でもないんだ」
「また、あれか? 雪村。自分が他人の様に感じられるって奴?」

 もう一人、今度は幼馴染みの部員がこの会話に加わってくる。

「なんだ、それ? 思春期に入って自分を客観的に捉えられるようになると、なんたらかんたらって奴?」

 最初声をかけてきた奴が腰に手を当て、物珍しそうに俺の顔を覗き込んでくる。

「思春期関係ない。こいつは小学生一年くらいの時から、時々そんな事を言ってたんだ。鏡に映った自分を指さして、『これ、俺じゃないような気がする』ってさ」

 慣れたものか、俺の代わりそんな説明する幼馴染み。

「……それって、ヤバくないか? 詳しくは知らないけど、解離性なんとかって病気? 幼児期のトラウマが原因とか言う奴の」

 ああ良い奴だな、と俺は思う。真剣に心配してくれているのが良く分る。

「いや、そう言うんじゃないから」
「幼児期のトラウマなんて、俺が知る限りないもんなぁ」

 幼馴染みも、そう否定してくれた。

「多分、俺の中に『なりたい俺』っていうのがあって、今がそうじゃないからそう思うんだと思う」
「ああ、なるほど!! 理想の自分像と比べてなら判るかも。ナルシストの反対みたいなもんか」

 そんな会話で、場を取り繕う。

「んじゃ、雪村がなりたい『俺』ってどんな感じ?」

 そう問われて、俺ははたと考えた。
 そう言えば、具体的に考えたことがない。

「……そうだな。確実に点が取れるストライカーに俺はなりたい」
「ストライカーか。って、お前今でも白恋のストライカーじゃん?」
「そうだよ。お前のシュート、コントロールが良いから七割は決まるし」
「七割じゃまだまだ。俺は得点率十割を狙ってるんだ!」

 こういうサッカーに関した話なら、気持ちが良いくらい熱くなれる。

「十割って事は、必殺技ってことか?」
「そう。かつてのイナズマジャパンのストライカー、吹雪士郎みたいなストライカーが目標だ」

 俺はここで白恋中が生んだ偉大な先輩の名前を挙げた。イナズマジャパンの選手はどの選手も凄い選手ばかりだけど、その中でも俺はこの吹雪選手にとても強く惹かれていた。

「じゃあさ、雪村がやりたい必殺技ってウルフレジェンド?」
「……いや、エターナルブリザードをやりたいんだ」
「でも、エターナルブリザードはウルフレジェンドに比べたら、必殺力が劣るぜ?」

 二人はそう言って、俺の顔を見る。

「そうなんだけど、でも俺はエターナルブリザードを自分のモノにしたいんだ!」

 その時、俺は俺の中に響く声を聞いた。


 ―――ーソウサ、えたーなるぶりざーどハ俺ノ必殺技ナンダカラナ!!


( えっ? なんだ、今の声? 俺の中から聞こえた……? )


 それと同時に、俺は俺の中で蠢く『何か』を感じていた。


  ■ ■ ■


「今日からお前達のコーチを務める吹雪士郎さんだ。まぁ、彼の事は俺が今更述べるまでもないな」

 あの日、にこやかな監督の横に立っていた吹雪先輩。
 先輩の姿を見た途端、俺の体に衝撃が走った。
 俺の中で蠢いていた『モノ』がもぞりと頭をもたげた、そんな戦慄めいた感じと一緒に。

 それからだった。
 あの、『自分ではない感じ』が一層強まったのは。
 せっかく憧れの先輩と大好きなサッカーの練習が出来るのに、この足元の無さはなんだろう?

 俺は、俺は、一体 ――――


 誰ナンダ? ――――


 鏡を見るたび、俺はそう呟かずにはいられない。自分が自分でなくなってゆくようで例えようのない恐ろしさを感じていた。

「雪村? どうかした?」

 そんな様子は、コーチに就任して日が浅い吹雪先輩に、目敏く気付かれてしまった。

「あ、いえ……、あの……」

 言葉を濁してしまう俺。
 吹雪先輩におかしな奴と思われたくなくて。

「大丈夫ですよ、吹雪先輩! 雪村のソレ、いつもの事ですから」
「いつもの事?」

 俺の代わりに、そう言ったのはあの時話していた奴だ。

「癖? みたいなもんだと思いますよ。雪村って鏡に映る自分が自分じゃないみたいに思える時があるみたいで」
「自分じゃない……?」

 わー! バカっっ!! 止めろ!!!
 お前は幼馴染で、そんな俺に慣れっこになって何とも思わないだろうけど、普通なら病院行くか? のコースだぞ!! 
 いや、俺も自分は病気じゃないと断言できるけど!!

「雪村……」
「は、はい!」

 俺の眼を見つめて、瞳の奥を揺らしながら吹雪先輩がこう言った。

「練習が終わったら、少し話をしようか」
「えっと……。はい、分かりました」


 その後の練習は、俺を見た吹雪先輩の瞳が気になってとても練習どころではなかった。


  ■ ■ ■


 その日の練習後、皆は帰り、部室には俺と吹雪先輩の二人だけ。二人だけになって、もう十分以上は経つのに、吹雪先輩は何も語ろうとしない。その沈黙が重たくて、俺は自分から尋ねていた。

「……あの、俺に話ってなんですか?」

 吹雪先輩がゆっくりと顔を俺に向け、かすかに唇を震わせた。

「雪村は自分が自分であると言う事に、自信がないのか?」

 そう問う吹雪先輩の眼は、怖いぐらいに真剣だ。

「俺はまだ未熟だから、自信が有るか無いかと訊かれれば、やっぱり無いです」

 本当は吹雪先輩が何を訊いているのかを察しながら、そんな答えを返す。揺らぐ『自分』と言うものを、サッカーの実力に置き換えて。

「僕が聞きたいのは、そんなことじゃない」
「吹雪先輩……」

 吹雪先輩は俺を見つめて、それから大きなため息をついた。

「そうだね。こんな話は、あまり人にしたくないし、知られたくないよね。でも、もし雪村があの頃の僕のような状況なら、僕は雪村を助けたい!! あの頃、キャプテンや皆が、そうやって僕を助けてくれたように」
「あの頃のって……、どういう事ですか? 吹雪先輩」

 躊躇いは一瞬。

「……僕が丁度雪村と同じ年の頃、僕は二重人格者だったんだ。自分の中に存在する二つの人格の所為で、僕は僕である『吹雪士郎』と言う存在を希薄化させていたんだ」

 吹雪先輩は俺の眼を見つめると、そうゆっくり静かに話し出した。

「吹雪先輩……」
「雪村も、そうじゃないのか? もう一つの人格に、自分を取られそうな怖さを感じているんじゃないのか?」

 もう一つの人格。
 俺は、ああこの前話していた解離性何とかの事かと思う。確か、幼児期のトラウマが引き金になるとかなんとか……。

( えっ? それじゃ吹雪先輩は…… )

 目の前の、この穏やかな笑みを浮かべる先輩は、そんなトラウマを胸に抱いていたのだろか。俺は先輩の言葉に、俺のもう一つの人格を把握しようとしてみた。

 そいつはサッカーが大好きで、強くなりたくて、目標は吹雪先輩みたいなストライカーになりたくて……。

( あれ? それって、俺と同じじゃないか。じゃぁ、一体…… )

「僕もそれが怖くてね、その人格を消そうとしたんだ。でも、皆が必要としているのは、そちらの吹雪だって思ったら、自分の存在意義を見失って……、サッカーが出来なくなった」

 ……違う。
 別の人格なんかじゃない。
 分らなくて不安な『ソレ』も、間違いなく俺は『自分』だと言える。
 だけどそれならなぜ、『自分』が二人もいるように感じてしまうのか、それを知りたかった。

 そう、もう一人の『俺』を!!

「吹雪先輩にとって、その人格は要らないものだったのですか?」

 俺の質問に、先輩の眼が見開かれ、それから愛おし気に柔らかく微笑むようにほんの少し瞳が細められた。

「必要だった。失くしたくなかった、いつまでも、一緒にいたかった。だけど、それじゃダメなんだ! 僕にとってもアツヤにとっても!!」


 アツヤ ――――


 その名が、俺の中いっぱいに広がる。
 広がって、俺と『もう一人の俺』との境を一つに溶かしていった。


 震える先輩の手を取る。
 ああ、大人になってもこんな所は変わらないんだなぁと思う。

 優しくて泣き虫で、でも強い。
 だから俺は ――――


「大丈夫です、先輩。俺は俺だから。別の人格なんかじゃないって、今気付きました。もう、先輩を不安にさせるようなことはしません!!」
「雪村……」

 俺はぎゅっと吹雪先輩を抱きしめた。
 吹雪先輩の二重人格としてのアツヤでは出来なかった、それを。

「俺、ずっと先輩の隣でサッカーしていたいです。また、一緒に」

 呼び名は変わっても、またあの頃の様に。



 そう、俺は……



 お帰り、兄ちゃん ――――

 兄ちゃん、ただいま ――――




  2011年10月31日






   === あとがき ===

吹雪くんと雪村くんの関係が、こんなだったらいいな♪ と言う妄想文です。
アツシロ成分も含まれています(笑) 
ああ、そういえばハロウィンってそう言う日でもありましたね。
実体があるかないかですけど、まぁそーゆー事で^_^;




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Date:2012/03/15
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