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□ GOっ子達の色んな話 □

【イナGO】 京介が京介に出会った夜 【絶チル】


 陽が落ち、夜の暗さが世界を染める頃、風に混じる微かなある気配を感じて僕は顔を上げた。

「……珍しいな。最近良く感じるようになった能力者の波動だが、これはいつもと色が違う」

 その波動に惹かれる様に、軽い足取りをふわふわと上下させた。そして着いたのは、河川敷のサッカーグランド。薄暗い照明の下、一つの人影がボールをドリブルで支配しながら、ゴールエリアから鋭いシュートを放つ。キーパーのいないゴールネットを大きく揺らし、サッカーボールはそのまま、シュートの反動でその人影の下に戻る。

「へぇぇ、サッカーの練習か。僕があの年代では、出来なかったことだな」

 もう一度、その人影は同じようにドリブルを始め、またシュートを放つ。その動きは連続したダンスのステップの様に、ほんの一瞬でも途切れることはない。

「この子は、自分サイドのゴールにキーパーさえいらないサッカーをしそうだな」

 かるく眇めた瞳、ちょっとした悪戯を思いつき僕は、その子がシュートを放った瞬間にゴールマウス内に移動した。そして、そのシュートを左手一つで受け止める。

「良いシュートだね。サッカーの練習かい? でも一人じゃ面白くないだろう。僕が相手をしてやるよ」

 その子の眼が、大きく見開かれていた。


  ■ ■ ■


 ……兄さんが、リハビリに励んでいた。

 もう一度、サッカーをするために!!
 俺が奪った兄さんの足。
 俺が知ればきっと気に病むだろうと、そんな素振りも見せずに、ただ黙々と。

( 兄さん…… )

 外国で手術を受ければ、そんなリハビリよりももっと早く足は治る。時間が経てば経つほど、リハビリの効果もなくなるほど症状は進んでしまう。
 その為には……

 あの時の、光景がフラッシュバックする。
 万能坂戦の時の、磯崎の言葉。

 一生サッカーの出来ない体にしてやるっっ!! ――――

 俺は思わず、その言葉を向けられた松風を体で庇っていた。
 こいつがどれだけサッカーが好きか、サッカーの為に一生懸命になれる奴か知っているから。

 サッカーが純粋に大好きで、愛していて、だからみんなでサッカーが『出来る事』が何より大事なもので ――――

( ああ、俺のサッカーはあいつらに近いんだ )

 だけど、兄さんの為にはフィフスセクターのシードとしての務めを果たさなくてはいけない。その任務の中には、あの磯崎の様に対戦相手のサッカー選手としての生命を断つ行為も含まれている。

「くそっ、くそっ、くそっっっ!!!」

 そんな気持ちを、ただサッカーボールにぶつけていた。

( 泣きたくもなるだろうな、こんな奴に蹴られるボールも )

 ふっと頭に松風の言葉が過った。
 頭に過った言葉を蹴散らすようにゴール目掛けて放ったシュートが、ゴールネットをザンッと揺らす前に、受け止められていた。

「あっ……」

 いつの間に、ゴールマウス内に入ったんだ、こいつ!?
 見た目は大学生くらい? でも、学ランを着ているから高校生かもしれない。直線的に切り揃えられた髪が、その男に鋭さのようなものを与えている。どこか、得体のしれない奴だ。

( ……こいつ、目が気にくわねぇ )

 すると ―――

「良いシュートだね。サッカーの練習かい? でも一人じゃ面白くないだろう。僕が相手をしてやるよ」

 気に食わないそいつの目が細められ、俺はそいつに笑いかけられた。

「……あんたじゃ、俺の練習相手にならない。怪我をする前に、そこをどけ!」
「そうかな? 結構良い線いってると思うんだけど?」

 その男は受け止めたサッカーボールを器用に指先でクルクル回している。そして、どこか人を馬鹿にしたような笑みを浮かべた目で俺を見る。

「ほら!」

 男が手にしたサッカーボールを、俺に向かって投げてきた。

「俺は忠告したからな」

 俺は気を高め、剣聖ランスロットを具現化する。これであいつが驚いて逃げ出せば、それで話は片が付く。

「へぇ、これは凄いね……。ミラージュとも違うし、僕の知らない能力みたいだな」
「お前……」

 そいつは驚くどころか、俺の出した化身に常とは違う関心を見せている。

「今度こそ、そこをどけっっ!! 骨折くらいじゃ済まないぞっっ!」

 ランスロットと同調して、俺はロストエンジェルをゴールに叩き込む。
 弾けた気が、飛び散る羽のような残像を見せている。

「ああ、やはり。君も、翼ある者」

 衝撃が納まったゴールマウスの中から、顔色一つ変えずに男が出てきた。
 手には、ゴールネットを突き破ったはずのサッカーボールを抱えて。

「このボールが、君の心を伝えてくれた。随分、苦しい思いをしているんだね?」

 そいつの目に浮かんでいた笑みは、先ほどとは違う心配げな保護者のような色に変わっている。

「お前……」
「何も言わなくても良いよ。自分の力を大人に良いように使われて、君の心は血を流して苦しんでいる。責任や負い目で心を溢れさせて、君が君である為にとても大事なものを封印して」
「何を言って……」

 俺には、こいつの言っていることが分からなくて……、いや、分かるからこそ、最大の警戒心を向けた。

「大事な者を守るために、自分の身を顧みないところまであの子たちと同じ。ねぇ、君。今の自分が苦しいのなら、助けが必要なのなら、僕の所においで」
「ば! 馬鹿じゃねーのかっっ!? お前みたいな、胡散臭そうな、どこの馬の骨かも分からないような奴の所へなんか行くはずがないだろうっっ!!!」

 俺のそんな言葉にも、男は動じない。

「僕の所にはね、君のように持っている力を大人に利用されて傷ついた子ども達がたくさんいるんだ。君の力はちょっと特殊だけど、僕の所で訓練すれば、もっと強く高く自由に飛べるようになる」

 サッカーボールを片手に抱え、もう一方の手を俺に向かって差し出す。
 俺にも、分かる。
 この男が、ただ者じゃないことは。
 俺のシュートを片手で止められる者が、ただ者な訳がない。

( 自由…… )

 その言葉は、毒のように俺の体を駆け巡る。

 自由に、心のままに、俺のサッカーが出来たら!!

「ね? だから、僕と一緒においで」

 差し出された手が本当に救いの手の様に見えて、俺は思わず ――――


 パァ、パパパパッッ パァァァ ――――

 けたたましいクラクション。
 河川敷の横を走る道路で、二台の大きめな車が行き違う時に鳴らしたクラクション。
 その音で、俺ははっと我に返った。そして出しかけていた手を、慌てて引っ込める。

「……そうか。残念だな」
「……その手を取ったら、もうここには戻れなくなる。そんな気がして、俺とあんたじゃ住む世界が違うはず」

 くっ、と小さく口元だけで笑われた。

「察しの良い子だね、君は。まぁ、その通りなんだが」
「今でも十分犯罪者めいたことやってるんだ。これ以上の犯罪行為はしたくない」

 男が手にしたサッカーボールを俺に投げよこす。

「じゃ、僕も無理は言わない。そうだね、せっかく出会えたんだ。記念に、こんな言葉を君に贈ろう」
「言葉?」
「そう、言葉。僕が今の君よりもまだ小さかった頃、信用していた人から貰った言葉さ」
「…………………」
「君は、まだ子どもだ。だからこそ、君はどこへでもゆける、なんにでもなれる。未来を創るのは、君だよ。周りの大人の言葉に惑わされるな」
「どこへでも、なんにでも……?」

 その言葉を、小さく口の中で繰り返す。

「さて、と。最後になんだけど、名前聞いてもいいかい?」
「もう会わない奴の名前を聞いてどーすんだよ」
「どうもしないさ。ただ、君の名前を知りたいだけ。だめかな?」

 得体のしれない怪しい男だけど、でもフィフスセクターにいる大人たちと比べれば、まだ何か近しいものを感じる。

「……京介。剣城京介だ」

 俺が名乗ると、そいつの目がまた面白そうな笑みを浮かべた。

「京介、そうか。君、京介君って言うんだ。じゃ、今度は僕の番だね」

 そこで一呼吸、間があった。

「僕も京介、兵部京介。君と同じ名前だ」
「えっ?」

 俺がびっくりして、そんな間抜けな声を出し時には、兵部京介と名乗った男の姿は俺の目の前から消えていた。ただその声だけが、まだ俺の耳に伝わってくる。

( 小さい京介君、忘れてはいけない。君は、本当は自由だってことに。その自由を守る為に、君はもっと強くなれ!! )

 逢魔が時が見せた幻覚のように、覚めればそこにはなんの痕跡もなかった。

「俺は、何を見たんだ……」

 だけど、あの言葉は胸に響いている。
 俺に差し伸べられた手の先にあった、瞳の色はきっと嘘じゃない。

 
 君はどこへでもゆける、なんにでもなれる ――――
 

「兄さん、兄さんが自分の力で歩けるように頑張るのなら、俺は兄さんが好きな自由で楽しいサッカーを取り戻す!!」

 その言葉は、どこかで見ているかもしれないもう一人の京介に聞こえるように、大きくはっきりと京介の口から発せられた。
 あたりはすでに夜の闇に包まれていたが、空には月も星もある。瞳を閉じた闇の中は歩くこともままならないが、その闇を見据え瞳凝らせば必ず光はある。

「……兄さんならこの話、どう思うかな?」

 今日は兄さんの顔も見れずに帰ったが、明日ならこの話を手土産に面会にゆこうと京介は思う。
 多少、都合の悪いところは脚色しなくてはならないが。



 これは、そんな剣城京介が兵部京介に出会った夜の話 ――――




  2011年08月04日脱稿




   === あとがき ===

 根っからのサンデー愛読者なもんで、最初GOのキャラ紹介で剣城くんの名前を見た時から、やってみたかったパロです^_^;
イタ回としては、萌えどころ満載なGO14話。それなりにリア充な雷門イレブンの中で、剣城くんだけが重い十字架を背負っているのがちょっとかわいそうになって……。子ども好きな兵部さんに応援に来てもらいました♪
剣城くんがパンドラに入ったとしたら、開花できる能力はやっぱりサイキックかな? 
実は「中の人」繋がりで、信介くんがレベル3~4くらいのサイコメトラーな話も考えていました。そのうち、書くかもしれません(汗)





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Date:2012/03/15
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