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□ GOっ子達の色んな話 □

【イナGO】 超次元番外の弟子ユウイチ 【ケンイチ】

 
「俺がいつ、この足をお前に治して欲しいと頼んだっっ!?」

 薄々は気付いていた事。
 だけど、今までは確証を得ることは出来なかった。
 しかし、その現場を見てしまった以上、俺はもう黙っている訳にはいかなかった。

「兄さん……」
「お前は何をしようとしているっっ!! 今やろうとしていることが、お前が本当にやりたいことなのか!?」
「………………」

 京介が唇を噛みしめ、視線を床に落とす。

 ねぇ、京介。
 俺が気付いていないとでも思っていた?

 俺は、お前が生まれてからずっと、お前を見てきたんだ。
 だから……、すぐ分かったよ。

 お前が、俺に嘘をついていることなんて。
 でもその嘘は、優しいお前が俺の為についている嘘。

 なぜ、そんな嘘をついているのか?
 
 問いかけるまでもない、その答え。
 それは、お前が俺に負い目を感じているから。
 俺の足が動かなくなったのが、自分の所為だと思っているから。

 そんなことはない! と何度も俺は言った。
 お前が無事で良かったと、何度も何度もお前に伝えた。
 

 だけど――――
 ……その言葉は、お前を更に追い詰めていた。


「それじゃ、俺が今まで兄さんの為にして来たことは、全て無駄だったのか……」

 震える声、握り締められた拳。
 小さな振動で壊れそうな、ガラス細工にも似たお前の姿。

「京介……」
 
 今、この言葉を吐けば、もっとお前を追い詰めるかもしれない。
 しかし、お前の目を覚まさせるには、迷いを断ち切らせるには ――――

「俺の為じゃないだろ! お前がやっている事は、俺に怪我を負わせた、その負い目から目を背ける為のもの。自分の為のものだろ!?」
「兄さん!!」
「京介、俺を見くびるなっっ!! この足は、俺が自分自身で治して見せる! だからお前は、お前の守るべきものを守れ!!」

 ああ、お前にこんな思いをさせていた自分が、悔しい! 情けない!!
 流すつもりのない涙が、ぽつりと手の甲に落ちてしまう。

「兄さん……」

 だけど、俺は信じている。
 きっとお前に、この想いが通じると!!

「お前が、俺達のサッカーを裏切ると言うのなら、ここから出て行け!! 今すぐに!」

 ……そうだ、京介。
 お前が今いるべき場所は、ここじゃない。

 あの仲間達が待つ、フィールドこそがお前の居場所 ――――

 俺の剣幕に押され、病室を出た京介。
 気づいてくれ! 俺が何を望んで、お前を叱責したかを!!
 そんな俺の祈りは、ちゃんと京介に届いていた。

 病室の窓から、駈けてゆく京介の後ろ姿を見送る。
 みるみる小さくなる後ろ姿、走る足取りにもう迷いはない。

「そうだ、京介。お前が本当にやりたいサッカーこそが、俺達のやりたいサッカーだ。だから京介。俺がフィールドに戻るまで、そのサッカーを守り抜いてくれ」

 ベッドの上からでは見えなくなった京介の後ろ姿を見送るために、俺はベッドから下り立ちあがると、窓辺に近寄り小さく口の中でエールを送る。新しい、今日という日を胸に刻んで。

 そして ――――

「先生。俺、言えました。優しいだけじゃダメなんですね。優しさを貫くには強さが必要。俺は、もっと強くなります。あいつを守るためにも」

 俺は胸が詰まり、一度言葉を途切らせ、胸の中で深々と頭を下げた。

「感謝します、先生。俺をここまで導いて下さって」

 
 そして俺は、この先生に出会った時の事を思い出していた。


  ■ ■ ■
 

「よし。今日のリハビリはここまでにしよう。良く頑張ったね」

 いつもの若い理学療法士の先生と違い、その日の先生はとても落ち着いた感じの四十歳くらいの先生だった。

「はい、ありがとうございます。でも俺、もう少し頑張りたいんです!」
「ん~、頑張る気持ちはとても大切ものだけど、無理はいけないよ? 一つずつきちんと段階を踏まないと、故障に故障を重ね兼ねないことにもなるからね」

 その声と言葉は説得力に溢れていて、聞いていると素直に従いたくなる。穏やかな雰囲気と深い知性、そして何か途轍もなく大きなものを感じさせる。

( ……最近、週に1~2回くらい顔を合わせる先生だけど、なんだか本当は、とんでもなく凄い先生なのかもしれない ) 

 一目で人を惹きつけ、魅了する。
 胸の内を打ち明けたくなるような、そんな先生。

「急がば回れ、と言う言葉もある。君の場合、歩く練習以上に足に筋肉をつける必要があるからね」
「筋肉?」
「そう、筋肉。足は動かさないことで、あっという間に筋肉が落ちてしまう。筋肉が落ちてしまった足では、立ち上がる事もままならない、当然歩くこともね」

 それは今更、言われるまでもない。
 元気だった頃の足と比べれば、今の俺の足は骨と皮ばかりの枯れ木のような足だ。

「俺は、一日でも早く歩けるようになりたいんです。その為なら……」

 俺は必死だった。
 京介の事を考えると、物凄く嫌な予感が胸を占めて、早く早くと俺を急き立てる。
 そして、この先生なら俺の話を聞いてくれそうな気がした。

「どうして、そんなに急ぐのかね? 君はまだ若い、時間は十分にある。必ず歩けるようになるよ」
「歩けるようにって、どのくらいでですか? 半年、一年? 俺の足が動かなくなって、七年になります。七年経ってもこんな状態の足、お医者様の診立てでは、外国の最新医療の手術を受けなければ、完治しないと言われているんです」
「ほぅ、手術を……」

 先生の目が、小さくきらりと光ったような気がした。

「手術を受けるには、とても高額な手術費用が必要です。この病院の入院費だって馬鹿になりません。これ以上、家族に負担をかけたくないんです」
「家族思いなのだね、君は」

 先生は、俺の前にしゃがみ込み、目線を合わせて俺の話を聞いてくれている。

「……弟が、俺の弟が、俺以上に苦しんでる。俺の為に、何か大変な事をしようとしている! そんな気がして、俺にはならないんです。あいつ、まだ中学一年生なのにっっ!!」
「ふむ。私のような者が、君の立ち入った事情を聞いても良いのかね?」
「先生なら!! 何故かは分かりません。でも、先生なら、俺に取るべき道を教えて下さるような気がして……」

 思慮深い表情で先生は優しく頷き、俺は今までの事を一つ一つ話し出していた。


  ■ ■ ■


「……それは、本当かね? 優一君」

 俺の話を最後まで聞いてくれた先生は、少し難しい顔をして、そう俺に尋ね返す。

「中学サッカー関係者にしか知られていない話らしくて……。その……、勝敗管理の存在は。それに従わない学校には、制裁を加える。俺の弟は……、どうもその管理者の手先みたいなんです」
「君の弟君が?」
「あいつはもちろん、そんな事は言いません。でも考えてみれば、俺がこの病院に入院出来たのも、治療法が見つかったのも、京介が中学に入学してからなんです」
「ふむ、任務に就いたことで、報酬が支払われる様になったということか」
「ええ、多分。そしておそらく、俺のこの足が、あいつの自由を奪っているんです!!」

 何事か考え込んでいた先生が、真っ直ぐ俺の顔を見つめる。その瞳は、魂を射抜かれるほど真剣で怖いほどで。

「……君たち兄弟は、優しすぎるのだ。君は弟君の事を想い、弟君は兄である君の事を想って、倫(みち)から外れようとしている。優しさを貫くには、強さも必要なのだよ?」
「分かっています。今の俺は、辛い思いをしているあいつに優しい言葉をかける事しかできない、ただの負け犬だってことは。だから、だから……」
「優一君、君は弟君を守りたいんだね? その為に、強くなりたいと」
「はい! そうです!! たとえ、この足が歩けなくても、それでもあいつを守ることが出来るほど強くなれれば、俺はっっ!!」

 俺を見つめていた先生の瞳が一度、静かに閉じられ、次の瞬間、かっと見開けれた。

「よし! わかった!! 君の足は、この死者すら蘇らせ死神をも怖れさせると言われる私の手で、必ず生き返らせてあげよう!! 加えて、そんないたいけな子ども達を甚振るような大人に負けないだけの技を、君に授ける!」

 そう言う先生からは、カハァーっっ と言う気迫が聞こえてきそうだった。

「少し待っていたまえ」
「あっ、先生!!」

 俺が止めるのも聞かず先生はリハビリ室を飛出し、直ぐに一人の中国人らしい男性を連れてきた。

「馬剣星、この子の診察をしてくれ」
「まったく、いきなり何アルね! オイちゃんはこれから、予約したエロエロ天国を受け取りに行くところアル!!」
「なに、そんなに時間はかからん。私の診立てだと、ツボを四・五か所突いてもらえば、かなり症状は改善するはず。加えて私の整体術で体幹を整えてやれば」

 あれよあれよという間に俺は、二人の大人によって診察台の上に寝転がされていた。

「仕方ないアルね。じゃ、ちょっとだけアルよ」

 俺はそのおじさんの手で横を向かされ、背骨を浮き彫りするように軽く背中を丸めた姿勢を取らされる。

「ん~、と。ココとココ、アルね。じゃ、行くアルよ!」

( あっ、針だ )

 ぷつっと、背中の皮膚を突き刺す音がした。最初、チクっとした痛みを感じたけど、それもすぐに感じなくなる。そうやって何か所か打たれた後に、今度は大きな力強い手で背中を何度もさすられ、指先でグイグイとやはり何ケ所かを強く押された。

「うん、こんなものアルかね?」
「ああ、そんなもんだろう。まったく、西洋医学はすぐ人の体を切りたがる。元々、人の体には治癒能力があるのだから、それを最大限に引き出してやれば良いものを。切れば病気の症状は改善しても、身体全体の状態が切る前の状態に戻るのは難しい」
「ははは。それでも必要であれば、秋雨どんもすっぱり切るくせに。さぁ、オイちゃんは急いで本屋に行くアルよ!!」

 俺がまだ診察台に上に横になっているうちに、そのおじさんはルンルンとリハビリ室を出て行った。

「先生。一体今、何が……」
「なに、海外まで出かけなくても、優一君の足の手術はもう終わったと言う事さ」
「終わった……?」

 先生は満足げな笑みを浮かべ、俺にこう言った。

「まずは、診察台の上に体を起こしてみようか」
「あ、はい……」

 確かに、いつまでも横になっている訳にはいかない。腰から下が動かないので、体を起こすのは、腕の力だけだ。

「あれ?」

 すぃ、と身体が起きる。
 背中を真っ直ぐにしてみると分かる。

( 体が、軽い。というか、今まで感じなかった足の血流を、爪先の部分でも感じるぞ )

 俺は、足が動かなくなってからお荷物としか思えなくなっていた自分の足が、今、息を吹き返したのを感じていた。

「今日のリハビリは、ここまで。明日からは、私独自のリハビリに切り替えるから、しっかり着いてくるんだよ」

 そう言って岬越寺先生はにっこり笑って、俺を病室にまで運んでくださった。

 次の日からのリハビリの様子は、割愛しよう。
 リハビリ室や病室に運び込まれた、色々な装置。寝ている間も足の筋トレが自動でできる『寝ながら足踏み三号君』や、腕力強化の、『手のひらサイズ投げ飛ばし地蔵』などなどの話は。
 実は俺にも、あの日々がリハビリだったのかそうでなかったのか、よく分らないでいるのだ。

 俺がそうやって岬越寺先生の特別リハビリを受けていたのは、ちょうど万能坂戦の頃の事だった。
 万能坂線は後半、京介が試合に出て雷門中が勝ったので、俺の胸に萌した悪い予感は、俺の考えすぎだったのかもしれないと言う気もした。それでも俺の気概を感じとり、俺を歩けるようにと指導してくださった先生への感謝の念が減る訳ではない。

「この調子なら、関東大会優勝も夢じゃなさそうだ。関東大会が終わったら、頑張った京介をびっくりさせてやろう。そして、全国大会出場に向けて、俺も練習に付き合ってあげられるようになれば、どんなにあいつが喜ぶことか」

 だから、その日まで俺が歩けるようになったことは秘密。
 いつものリハビリの先生にも、平行棒を使って立ち上がり、二・三歩ようやく歩けるような演技で誤魔化していた。これはこれで腕の強化訓練にもなるから、決して無駄じゃない。

「たいしたものだね、優一君。まだ歩行はぎこちないが、それを補う体幹バランスが素晴らしい。後は日々過ごす時間が、仕上げてくれるだろう」
「ありがとうございます、岬越寺先生」

 ふふと、含み笑いを浮かべて岬越寺先生が目を細める。

「腕っぷしの方も、町のチンピラ相手ならもう負けることはないだろう。まぁ、君なら意味のない暴力行為に走る事はないだろうから安心だがね」
「腕の方は車椅子を動かすのが、筋トレになっていたから、先生の修行にもついてゆけました」
「いやいや、君にはその素養があったのだよ。で、そろそろ弟君に知らせてあげるのかね?」
「関東大会決勝まで、って思っていたんですが、もう準決勝の結果が出たらいいかなv て気持ちにもなっているんです」
「うんうん♪ 早く喜ばせてあげたいものだね」
「はい、先生!」


  ■ ■ ■


 そんな浮き浮きしていた気持ちは、京介の準決勝不参加という現実で、一転してあの嫌な予想にかき消されてしまった。。

「行かなくていいのか? 京介」
「ああ、大丈夫。俺が行かなくても、今の雷門なら勝てる」

 俺に目も合わさず、そう言う京介。
 俺が何年お前の『兄』をやっていると思っている?
 お前の嘘が、見抜けないとでも?

「……この部屋、暑いな。なんか、飲み物でも買ってくる」

 居づらくなったのだろう。
 京介は、俺の病室からそそくさと出て行った。その後ろ姿を見ながら、強い予感を覚えて、そっと京介に気付かれないよう巧みに車椅子を操り、音も立てずに後を付けた。この手の予感は、先生と修行をするようになって、特に鋭くなった能力の一つだ。
 
 そして、そこで俺は見た!
 俺の足の治療代をエサに、京介を恐喝している怪しい男を!!

「あいつ……、あいつが、俺の京介を苦しめているのか……」

 壁に身を隠し、首だけそちらに寄せてその相手をしっかり瞳に焼き付ける。激しい憤りが身のうちで暴れ、ぎゅっと握り締めた車椅子の取っ手が握力で凹んでいる。

( コイツ、必ズ 思イ知ラセテヤル!! )

 その男は京介を空中庭園に残し、建物内に入って来ようとした。
 俺は、マッハのスピードで次の廊下の角まで音も立てず車椅子で走り去る。

 俺の心は決まった。
 今、この場から京介をあのフィールドに送り出すこと。

 どんな言葉であろうと、どんなに冷たく聞こえようと、それが今の俺に出来るお前を救う道だと信じて。

 心配するな、京介!!

 兄さんは、もう自分の足で立てるんだ!
 もうすぐ、お前とも一緒に走れるようになるだろう。

 だからお前は、一足先にそのフィールドを守っていてくれ。
 必ず、俺も行く!

 自分の病室に戻り、ベッドに入る。
 廊下を、力なく歩く京介の足音が聞こえる。

 さぁ、京介。
 兄の言葉を、受け取れ!


 お前はもう、自由なんだ!!



  2011年08月26日脱稿





   === あとがき ===

またも私得な、サンデー掲載作品とのクロスオーバーです^_^; 今回は、優一くんのリハビリを、岬越寺師匠が担当したら…… という超次元的展開です。「史上最強の弟子ケンイチ」をご存じない方には、ナニコレ? な仕上がりですので、そこのところよろしくお願いします(笑) 書きたいものを書きたいように書く! これぞ、二次創作の醍醐味ですね♪ 






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Date:2012/03/15
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