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□ GOっ子達の色んな話 □

【神のみ設定】 円堂監督、マジ天使!! 【イナゴ腐】

 栄都学園との練習試合、勝敗指示が出された試合。
 だけど、そんな最初から勝敗の決まった八百長試合を天馬は受け入れることが出来なかった。

( 本当のサッカーをっっ!! 真剣で本物のサッカーをやりたいんだ! )

 サッカーが好きだからこそ、サッカーを裏切るような事はしたくない。
 それはきっと雷門サッカー部の先輩達だって同じだと、天馬は信じて疑いもない。
 だから、天馬は神童キャプテンにパスを出し続けた。

 自分のこの気持ち、キャプテンなら必ず受け取ってもらえると信じて!

 その結果、天馬の熱情に押された神童は、図らずも必殺シュート技フォルティシモを発動させてしまった。勝敗こそは変わらぬものの、指示された点数は反故になった。

 そして、この試合の波紋はとても大きかった ―――――


 ■ ■ ■


「はぁぁぁ、どーしてこうなっちゃうんだろう」
「どうしたの? 天馬。元気がないよ」

 顔を伏せ、珍しく落ち込んでいる天馬に信助が声をかけた。

「真剣にサッカーをしようとしただけなのに、どうして久遠監督が辞める事になっちゃうんだろう……。こんなの、絶対おかしいよっっ!!」

 俯いたまま、声を絞り出すように思いを口にする。

「……それが、『管理サッカー』って奴なんだろうね。もともと久遠監督は理事長から色々言われていたみたいだし」

 天馬自身、正直『管理サッカー』そのものは怖く無い。
 内申だのなんだの言われても、そんなものは『本当のサッカー』を邪魔するための呪文のようなもので、それを振りかざす大人たちが間違っている! と、はっきり断言できるからだ。
 しかし、その『呪文』に囚われている先輩たちの辛そうな様子を見ると、天馬も胸がいっぱいになるのだ。

「……こんなのって、俺がやりたいサッカーじゃない! 本当のサッカーが泣いてるよ」
「天馬は、心の底からサッカーが大好きだもんね。僕もさ、雷門でサッカーをやるのが夢だったから、今の状況にはちょっとびっくりだけど」
「信助……」

 信助の言葉に、天馬はようやく顔をあげた。

「僕が稲妻KFCに入団した時、最初に言われた事があるんだ。本当に好きな事なら、諦めるなって!」
「それ、チームの監督が?」
「ううん。時々来てコーチしてくれていた女子中学生……、今は女子高校生かな」
「女子高校生?」
「そう。如月まこって言う、元稲妻KFCのキャプテンなんだけどね。このキャプテン、あの円堂さんに直々にコーチしてもらっていたんだ。その時、やっぱり自分も言われた言葉なんだって!」
「諦めるな、か。そうだよなぁ、諦めちゃ、そこで終わりなんだよな」

 その言葉を噛みしめるように、天馬は自分の口の中で呟いた。

「それから、こんな言葉も教わったよ♪」
「えっ、どんな言葉?」

 信助の顔が、にっこりと微笑む。

「友達が増える魔法の言葉で、『サッカーやろうぜ!』と『ボールは友達、こわくない』って」

 信助のにっこり顔が、にやり顔に変わる。聞かされた天馬は呆気にとられたような表情を浮かべた後、ようやくいつもの笑顔を浮かべた。

「ああ、本当にそうだよな。それで俺達も友達になれたんだし」
「そういう事v それにさ、僕ここだけの話なんだけど、雷門でサッカー出来るのは嬉しいけど、もっと楽しいのは天馬とサッカー出来る事みたいなんだ。だから、もしサッカー部が無くなっても、天馬と一緒にサッカー出来るのなら、10年前の円堂さんみたいに同好会から始めてもいいやって思ってるんだ」
「信助、お前……」
「ボール1個と、広場と仲間。それだけあれば楽しめるのがサッカーだもん。部活じゃないけど、その分自由だしね」
「凄い事考えてるんだな、信助は」

 頼もしい味方を見るような瞳で天馬は信助を見つめた。

「あ、だけど! 僕は、サッカー部が無くなっちゃえばいいなんて、これっぽっちも思ってないからねっっ!!」
「分かってるよ。でも、そうか。そうだよね、サッカーってもっと自由なもんだよね」

 へへっと笑って、二人は拳をぶつけ合う。
 その衝撃が、心強い感触となって心に残る。

「いつでも、どこでも、僕は天馬の味方だからね!」
「ありがとう、信助!!」

 ギュムっと信助を抱きしめる天馬の姿は、とても微笑ましく心和ませる光景だった。


   ■ ■ ■


「……心強い一年生たちですね。久遠監督」
「ああ。あの二人の気持ちの強さは、見た目では分からない。それは、あの真っ直ぐなサッカーへの思いも」

 そんな二人を、物陰から見つめる四つの視線。

「西園信助、あの子は松風天馬の良いアンカーポジションになってくれそうだ」
「そう、お前にとっての鬼道のような役割だな、円堂」

 サッカーの名門と言われた雷門の、今年の新入部員は二人。
 たった二人の新入部員は、サッカーの技術こそ拙いものであったが、久遠の眼に留まるほどの純粋な『サッカースピリッツ』を持っていた。

 魂は魂を震わせることが出来る。
 共鳴させ、大きく動き出すことが出来る。
 大事なのは、その『波動』。

「今のサッカー部にあの二人を投入して、どんな波紋を描くか。この腐りきった中学サッカーの現状を変えるのは、まず管理サッカーに雁字搦めにされた雷門を自由に出来るかどうかだろう」
「久遠監督……」

 久遠は円堂の肩に、ポンと手を置く。

「お前の出番だ、円堂。あの二人を核に、籠の中の鳥のようなあいつ等を、自由にしてやってくれ」

 久遠の瞳に、一点の疑いもない。
 かつて、円堂は戦ってきた相手すべての心を捉えることが出来た。
 『サッカー愛』に溢れた彼自身の魅力で。
 本当にサッカーが好きな者ならば、その魅力に逆らえるはずもないのだ。

「久遠監督は、これからどうするんですか?」
「お前らが台風の目になってくれる間に、色々下準備しておこうとな。水面下での作戦実行は目金に任せているが、俺もそちらに合流しようと思う」
「いよいよですね、久遠監督」

 ぐっと、円堂の拳に力が籠る。

「ああ。後は任せたぞ、円堂監督」

 珍しく、かすかに目の端に笑みを浮かべて久遠は、そう円堂にエールを送った。


   ■ ■ ■


 噂は本当だった。

 今回の練習試合での責任を取って、久遠監督は監督を辞めさせられ、代わりにフィフスセクター直属の監督が赴任してくることになった。部室の中は、まるでお通夜のような沈痛に満ちた静けさだ。

「どうなるんだろうね、これからサッカー部は」

 ポショポショと信助が天馬に耳打ちする。

「う~ん、どうなるか俺にも分からないや」

 そう答える天馬へ向けられる二・三年生の視線は、鋭く冷たい。

「大体なぁ! お前が、神童にパスを送り続けるからこんな事になったんだぞっっ!?」
「でも! あの試合のキャプテンのシュートは素晴らしかったです!! あの一点は、貴重な一点なんです!」

 あの時、自分の気持ちに応えてくれた神童の想いを、そんなマイナスなものにしたくないと天馬は強い口調で答えた。

「止めろ! もう、止めてくれ!! 松風、お前はあの時、俺を責めていたんだろう?」
「キャプテン……」

 意外な一言を聞いた天馬の目が、信じられないと言わんばかりに大きく見開かれる。

「……真剣に自分のサッカーに向き合わない俺にパスを送り続けることで、サッカーに向き合えとお前は責め続けていた」
「そんな、そんなつもりじゃありません!! 俺、キャプテンとサッカーがしたくて……」

 一触即発な、険悪な空気が漂っている。
 部室の外で中の様子をうかがっていた円堂は、中に入る事を躊躇った。

( このタイミングはないな、うん、ない。もう少し、演出がかった登場の方が良さそうだ。しっかし、なんだぁこの暗さはっっ!! 皆まとめて、闇落ちでもしそうな雰囲気だな )

 自分がちょっと現役(中学サッカーの)を離れていた間に、こんな風にまで変質していたとは、久遠に話を聞いてはいたが、かなり手古摺りそうだと円堂は思った。そうして、ようやく円堂が部員たちの前に姿を現したのが、あのサッカーグランドを見下ろす階段の上だったのだ。
 その昔、まるで中天に輝く太陽のようだと言われたイメージのままに、太陽を背に皆の前に姿を現す。このファーストコンタクトの反応で、これからの攻略方法を決めようと円堂は考えていた。

 が、その反応は円堂が考えていたのものとは、かなり手応えが違っていた。

「え? 円堂守って、あの円堂さん?」
「誰なんですか? 円堂守って?」
「知らないのか? あの円堂守だよっっ! あの、一級フラグ建築士のっっ!!」

 部員の中から、そんな声が上がる。

「うっわぁ~、フィフスセクターもえげつない人物を監督として送り込んできたな。あれだろ? 円堂守って、チームワーク強化の為とか言って部員を食いまくって、自分の下僕の様に従わせていたって伝説のキャプテンだろ!?」
「ちょっ、ちょっと待てよっっ!! んじゃ、なかなかフィフスセクターに従わない俺達を、そんな手で支配するために監督として来たのっっ!?」

 ザワザワとした雰囲気から察するに、既に『円堂守』を知らない世代もいれば、脚色された伝説だけが独り歩きして、虚像が実像のようになっている。

( あれっっ~~~? 俺のGKとしての評価がどこにもねーんだけど??? )

 ざわつく部員たちを見ながら、円堂も戸惑っていた。そんな円堂の前に、すぃっと神童が歩み出る。

「円堂監督……」
「神童、キャプテンだな」

 監督とキャプテンの間の意思疎通は、チームを纏めるうえで必要不可欠だ。優秀な生徒だけに、その辺りの物分かりの良さはずば抜けていそうだ。

「丁度良かった。これからの事を打ち合わせたいと思ってたんだ」
「その前に、俺からも話があります」

 少し緊張した面持ちで、神童が円堂にそんな言葉を告げた。

「ん? なんだ? 俺に話って」
「……円堂監督の武勇伝は、俺もある筋から聞き及んでいます。ですからっっ!! 絶対、ここにいる部員には手を出さないでください!! 十年前なら監督も未成年で、相手も同世代と言う事で大目に見てもらえたことも、今は確実に淫行条例違反で手が後ろに回ります。そんな理由で、この雷門サッカー部を廃部になんかしたくありません!!」

 ビシッとキャプテンらしく、円堂に要望を突きつける。
 まるで、親元から引き離さればかりの子猫のように、全身の毛を逆立てて威嚇しているような感じですらある。

( うわぁ、手ごわいどころの話じゃないぞ、これはっっ!! )

 初日からこんな状態で、前途多難さを噛みしめる円堂であった。
 そうして、円堂は『ある手段』を取る事にしたのだった。


   ■ ■ ■


「監督、何か俺に用ですか?」

 恐る恐る監督室のドアをノックする天馬。
 今日の練習の上がり際、天馬は唐突に円堂から帰る前に監督室に来るようにと言われた。その時の、部員全員の反応が、物凄く怖かった。
 入部したての、しかも一年生である天馬を監督室に呼ぶ理由が見つからない。部活の運営のことならば、キャプテンである神童か三年の三国あたりに声がかかるだろう。となると、残る理由は……。

「……いよいよ来ましたね」
「ああ。松風はまだ色恋沙汰に鈍そうだし、俺達ほどには監督を警戒してないしな」
「まずは、松風で様子見ってところか。怖い人だな、円堂監督」
「いいか、松風。監督に勧められても、得体のしれないものは口にするな。中に何が入っているか分からないからな」

 心配そうに、そうアドバイスしてくれた先輩もいた。

「何って、何が入っているんですか~」

 明らかにヤバげな雰囲気を察して、楽天的な天馬も不安を感じずにはいられない。

「ん~~、いきなり眠たくなるようなクスリとか?」
「こう、体の奥がムズムズするような、切なくなるようなヤツとか……」
「え~~っっ!! 嫌ですよぉ、俺!!」
「兎に角、お前行って様子を見てこいっっ!!」

 そんな無責任なまでの先輩たちの言葉とざわめきに送られて、今天馬はここにいる。
 唯一、大丈夫だよと言ってくれたのは、信助ただ一人。

「松風か? 中に入れ」

 中から円堂の声がする。
 天馬はぐっと、息を飲みこんでからゆっくりと監督室に入った。

「ははは。なんだ、その様子は。カチンカチンじゃないか」

 右手と右足が同時に出るような、緊張しまくりな天馬に円堂は椅子に座るように促し、冷たい缶ジュースを勧めた。

「あの、俺……」

 促されるままに椅子に腰を下ろし、缶ジュースを手にする。プルタブは空いてないので、変なクスリは入れられてないなと、ほっとする。

「ああ、お前を呼んだのは他でもない。お前に手伝って欲しいことがあるんだ」

 そんな円堂の言葉に、天馬の体はピクリと反応する。

( お、俺に手伝って欲しい事って、一体…… )

 ゴクリと、唾を飲み込む。冷たい缶ジュースを手にしているのに、背中にはびっしょり汗をかいている。

「松風…、いや、天馬。お前に俺のバディ(協力者)になって欲しい」

 真剣な瞳で円堂は、天馬にそう告げた。バディと言う言葉の意味を知らない天馬は、その雰囲気から、まるで恋人になってくれと言われたような気がして、顔を赤く染め、必死で頭をぶんぶんと横に振り続けた。

「だ、ダメですっっ!! 円堂監督! キャプテンが言ってました!! そんなことしたら、監督が警察に捕まっちゃいます!!」
「そうなんだ。そこなんだよな、問題は」
「ですよ! だから、この話はなかったことにっっ!!」

 慌てて天馬は、監督室から逃げ出そうとする。その天馬の後ろ襟首を、グィっと円堂が引っ掴む。かつては世界一ともなったGKの握力腕力、つい先ごろまではプロとして現役でもあった。ひょいっと、子猫の襟首を掴んで持ち上げるように天馬を床から少し持ち上げれば、天馬は宙に浮いた爪先をバタバタさせる。

「だから、俺の代わりにお前にやって欲しいんだ」

 天馬の耳元で、囁くように熱く言葉を紡ぐ。
 頭の芯が熱くなって、くらっと軽い眩暈を感じる。
 でもそれは、決して不快なものではなかった。

「……監督の代わりに、俺が?」
「そうだ、お前だ。サッカーを愛し、サッカーの悲しみが判るお前じゃないとダメなんだ」

 ジタバタしていた足を止め、もう一度天馬は円堂の顔を見つめ直した。
 天馬を見る円堂の顔には妄りがましい表情はなく、むしろ慈愛と揺るぎ無い決意のようなものが浮かんでいる。

「あの、どういうことなんですか……?」

 天馬の気持ちが落ち着いたのを見計らったのか、掴んでいた腕を放し、椅子の上に座らせる。

「天馬お前、今の中学サッカーをどう思う?」
「どうって、あんなの絶対変ですっっ!!」

 何度聞かれたって、この答えに変わりはない。

「そうだよな、絶対変だよな」
「はい! 変です!!」
「それじゃ、どうしたらその『変』を治せると思う?」

 円堂の問いかけに、天馬はしばし考え込む。そして ――――

「……皆が、本当のサッカーを、自分がやりたいと心から思う、自由で楽しいサッカーが出来るようになれば ――― 」
「フィフスセクターの勝敗指示に逆らっても?」
「逆らっても、です」

 天馬の答えに、揺らぎはない。

「お前の、そう言い切る強さはどこから来てる?」
「俺が、サッカーが好きだからです!! 愛しているからです!」

 天馬ははっきりと、そう言い切った。

「それじゃ、他の奴らにはその『愛』はないんだな」

 尊敬する先輩達を、まるでサッカーと言う名の「ステイタス」だけを愛している薄情な人たちの様に言われて、慌てて天馬は弁解に入る。

「そんなことはありません! キャプテンだって、他の皆だってサッカーへの愛はありますっっ!!」

 顔を真っ赤にして、他人の事なのに、自分の事のように熱く思いを込めて円堂に訴えかける天馬。

「そうか、やはり天馬は俺が見込んだ通りの奴だ」

 にっこりと微笑んだ円堂の笑顔に、天馬は思わず目を奪われた。その瞳に見つめられると、なぜか胸がドキドキしてくる。自分の信念のようなサッカーへの想いを、認めて貰えたことが天馬にはとても嬉しかった。


   ■ ■ ■


「天馬……」

 円堂の瞳に、天馬は自分の姿が大きく写り込むのを不思議な気持ちで見つめていた。魔法にかかったように動けなくなっていた天馬の幼い小さな唇に、円堂の熱くて弾力のある唇が重なる。

( あ、熱い…… )

 触れられて、頭がぼぅとしてくる。触れたところから、熱いだけではない何かが流れ込んでくるような、心臓がドキドキして叫びたいような走り出したいような、そんな何かで心が一杯になる。

 この気持ちは、一体 ――――

 ふっと、円堂の唇が天馬のそれから離れた。
 ほぉぅと、大きくため息をつく天馬。

「今、どんな気分だ? 天馬」
「……なんだか、体がふわふわして、気持ちがどこかに飛んでゆきそうな感じです」

 天馬の言葉を、にこにこしながら円堂は聞いている。

「サッカーに対してはどうだ?」

 円堂が口にしたサッカーの一言で、天馬は体中の血が滾るのを覚えた。不安も心配も、何も感じない。

 やりたい!!
 無性に、本当のサッカーを、自分のやりたいサッカーをやりたいっっ!!

 元から持っていた気持ちの、何倍にも膨らんだそれに天馬は気が付いた。

「円堂監督、今 俺に何をしたんですか?」
「お前に、『愛』を注いだだけだ」
「愛?」

 顔が赤くなるのを感じる。
 でも、恥ずかしさはあっても、嫌な感じはしない。

( 俺、円堂監督になら…… )

 初めて感じた感情に、天馬は強か酔ったような心持ちになっていた。

「……お前に手伝って欲しいのは、これだ」
「これ?」

 ほやん、とした頭でオウムのように言葉を繰り返す。

「俺もあいつ等に、サッカーへの愛が無いとは思わない。だけど、フィフスセクターが強いた管理サッカーのせいで、心に大きな隙間が出来ている。本気で自分のサッカーに向き合うのを拒むような」

 その言葉を聞いて、天馬ははっと気づいたような顔をした。

「円堂監督ここ来たのって、もしかしたら皆の、そんな気持ちを変えるため?」
「ああ、そうだ」

 そしてまた、あの笑顔。

「でも、でも、それなら、俺が出来る事ってないですよ。俺、あんな風に先輩たちを怒らせてばっかりだし……。お手伝いなんて、俺にはとても……」

 次に天馬に向けられたのは、円堂が浮かべた息苦しいまでの極上の笑顔。

「それでも、お前がやるんだ。天馬」
「俺が?」
「そう、お前が」

 なにか、トンデモナイことになりそうだと天馬の頭の中で警戒警報が鳴り響き始めた。

「神童も言ったし、お前も言った。そう、今の俺じゃ、神童たちにさっきお前にやったようなやり方で、『愛』を注ぐのは難しいんだ。昔なら自分で出来たことも、歳を食った分出来なくなった」
「円堂監督……」

 できれば耳を塞ぎたかったけど、目も耳も円堂の一挙手一投足に惹きつけられている。

「昔の俺の仲間達も、心に隙間を持った奴が多かった。でも、その胸の内には必ずサッカーへの愛があった。だから、俺はその隙間を埋めて愛を注ぎ、そして強くなってFFを制し、宇宙人もどきと戦い、FFIで世界の天辺も取ることで、サッカーへの愛を高らかに歌い上げた」
「円堂監督、あなたは一体……」

 円堂の笑顔は神々しいまでに輝き、その姿は監督室の窓から入る金色の夕日の中、まるで『人でないもの』のようだ。そして、天馬の大きな瞳はこれ以上はないと言うほどに、見開かれる。

 
 金色の光の中、円堂の背中で大きく開かれた強くたくましい翼 ――――


「……『円堂守』は、サッカーを自分の命の様に愛した。サッカーの神も、またそんな『守』を愛した。『守』の言葉は、神の……、天の言葉に等しい。俺がここにいるのは、そういう訳だ」

 大きく揺らめく純白の翼は、どこまでも高みを目指し遠くまで羽ばたける力強さを感じさせる。

「……円堂監督は、サッカーの守護天使なのですか?」

 優しく頷くその姿に、天馬は自分もまた大きな運命の流れの中に放り込まれたのだと感じていた。
 自分の名前にもまた、天の意思を感じながら。

「サッカーへの愛を胸に抱き、守りたいと思うのであれば、誰もがそうだ。そう、お前もな天馬」

 その一言が、ストンと胸に落ちてくる。

「それじゃ、俺が円堂監督の代わりに皆の心の隙間を埋めるんですか? でも、どうやって?」
「心の隙間は、愛で埋める。お前が愛してやれば、相手も変わる。相手がお前を受け入れた時、祝福のキスを交わせば、心の隙間は埋まる」
「あ、さっきの、あの感じ……」

 たった今感じたばかりの、血の滾りを思い出す。

「ははは。お前には心の隙間が少なかったから、あのキスはそのままサッカーへの愛を増幅させる結果になったけどな」

 成程! と思う。
 道理で、無性にサッカーをしたくなった訳だ。

「いいか? 天馬。俺のバディになってもらっても」
「分かりました、監督! 俺、どれだけ出来るか分かりませんが、一生懸命頑張ります!!」
「俺が直接手を出せない分、サポートはバッチリさせてもらうから、安心してやってくれ」

 こうして天馬は、サッカー愛の伝道者の使徒となったのであった。



 2011年07月19日脱稿





   === あとがき ===

新旧主役でタッグを組ませて、ギャルゲみたいに攻略ヒロイン(?)を落としまくり話を書いてみたくなりました。
コンセプトは「神のみぞ知るセカイ」をリスペクトしています。
今回は…、天馬くんが円堂監督に「落とされた」ってことになるのかな? (笑)








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Date:2012/03/15
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