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□ 南沢さんと倉間くん □

倉間典人14歳、フィールドの中心で愛を叫ぶ


 開始直後は圧倒的に月山国光優位で始まった試合も、風を読み風の行方を変えようとする松風のプレイや言葉で、少しずつ雷門らしさを取り戻した。後半早々、前半であれだけ噛み合っていなかった霧野と狩屋が見事な連係プレイを見せ、あろうことか絶対協力し合うことはないだろうと思っていた松風と倉間のチュインシュートまで決まってしまった。

 全て、全て、予想外で ――――

( ……まさか倉間、お前が松風と……? )

 心がざわつく。
 思えば、俺が雷門を出る羽目になったのも、全てはこの松風の所為だ。
 俺の代わりにあの日、フィールドに出た時から。

 皆が『管理サッカー』の風に逆らい始めたのも、こいつの所為だ。
 無邪気なまでに残酷で、人の心を切り裂く正論を振りかざして、雷門サッカー部を破滅へと導こうとしているように俺には見えた。

 フィフスセクターに逆らい続ければ、サッカー部は潰される。
 倉間、お前の大好きなサッカーを奪うような事に加担するのは、俺はどうしても嫌だった。

 ……だけど俺は、サッカーが好きだ。
 好きで、好きで、堪らない。

 だから、俺は雷門を去った。

 いつまでも、サッカーを続けるために。
 俺がサッカーを続けても、誰の迷惑にもならないところで。


  ■ ■ ■


 俺は、試合前に松風を一睨みした。
 お前がいなければ、俺が雷門を出ることはなかった。
 例え、地区予選早々で予選落ちしても、それでも倉間や神童達は雷門でサッカーを続けることが出来る。部活を引退しても、たまにグランドに顔を出して、練習に付き合うことも出来る。

 ……俺は、それで良かった。

 倉間、お前とそんな風に過ごすことが出来れば。
 先輩と後輩、そんな絶対の関係に守られたその中で、お前と。

 そして、今。
 松風と倉間で決めたシュート。
 今まで見たことのないほど、威力のあるサイドワインダーだった。

 雷門にいた時、ツートップだった俺達。
 俺にはあんな力、倉間から引き出してやることは出来なかった。
 思わず、倉間を取られたような気持ちがして、また松風を睨み付ける。


 ああ、馬鹿だな、俺。


 松風に取られただって?
 何も言わず、転校してきたくせに?
 置いてきぼりにした倉間の気持ちなんか、考えなかったくせに。


  ■ ■ ■


「どうした!? 南沢!! 集中が切れておるぞっっ!!」

 GKの兵頭から、叱責が飛ぶ。

「お、おう!」

 声を出し、気を引き締める。
 月山国光のサッカースタイルは、俺の性に合っていた。完全に計算された多彩な攻撃パターン。攻守の切り替えの早さも全て計算されていて、監督や兵頭の指示に従って動けば、必ず勝利する。答えの決まった数式を解くような、安定感が快かった。

 だが……、負けた。

 計算外の動きをする、自由奔放な雷門のサッカーに。
 試合終了のホイッスルが鳴った時、全てを捨ててここに来た俺には、もう何も残ってなかった。

 終了後、整列して互いに健闘を称え挨拶を交わす。
 俺には、どちらのチームに対しても合わせる顔が無かった。
 俯く俺の前に落ちる人影。

「南沢さん……」
「倉間……」

 そこには、きつい視線を俺に投げよこす倉間の姿が。

「俺、試合が終わったら南沢さんに言いたい事があったんすよ」
「ああ……」

 倉間の言いたいことは見当がつく。
 どんな罵倒も受け入れるつもりで、倉間の次の言葉を待った。

「俺が、どんなに……っっ!!」

 言葉を詰まらせる倉間。
 ああ、言いたいことが山ほどあるんだろうと、気が抜けたような頭でぼんやり思う。自分より体格の小さな倉間が、溢れだしそうな激情にぶるぶる身体を震わせている。

「……全部聞いてやる。だから、落ち着け。お前、まるで風呂上がりのチワワみたいだぞ?」

 そう言ってやったら、凄味のある目つきで睨まれた。

「よ~しっっ!! 上等だ! なら、歯ぁしっかり食いしばれ!! 南沢ぁぁぁつつ!!!」

 その声と共に、左頬に強烈なパンチがさく裂した。
 フィールド内も観客席からも、思わずわぁぁぁと言う声が上がる。

「ま、マズイですよ! こんな大勢の前で暴力沙汰なんて起こしたら!!」

 他のチームメイトが茫然としている横で、一番ネガティブな速水が冷静なのはなかなか面白い。殴られることぐらい予想内だったから、そんな風にどこか落ち着いて俺は見ていた。

「倉間……」

 殴った拳を握りしめたまま、下を向いた倉間から押し殺したような声が切れ切れに零れてくる。

「ひ、ひどいっすよ! ペアを組んでる俺に何にも言わないでサッカー部辞めただけじゃなく、転校までして!! 携帯の番号もアドレスも変えちゃって、連絡も出来なくってっっ!! お、俺を一人きりにして放り出して!!!!」

 上げた倉間の顔は、涙の洪水。

「……一人じゃないだろ? お前には雷門というチームメイトがいる。俺の代わりには剣城がいるし、さっきは松風とも見事な連係プレイだったじゃないか」

 ぶんぶんぶん、と頭を横に振る倉間。

「俺にとって、剣城はとてもじゃないけど南沢さんの代わりになんかならない!! プレイでなら天馬とも連携するけど、俺が本当に繋がりたいのは南沢さんだけなんだ!!!」
「おまっ……、そんな事を大衆の面前でっっ……!!」

 流石の俺も慌てた。
 ここで、そんなことをぶっちゃけるとは!!


  ■ ■ ■


「南沢……」

 俺の背後に、そっと兵頭が寄ってくる。

「……あの11番はお前の雷門時代の情人か?」
「い、情人って……。まぁ、その……」

 この俺に、この場でどう言えというのだろう。

「ふむ。それではお前はあの者との縁を切りたくて、月山国光に参ったという訳か」
「縁を切る……?」

 他人から言われて、確かに俺が取った行動はそう言う事なんだと思い至る。

「……手を切るのなら、相手から逃げるような無様な真似はするな! 男らしくない。お前に、あいつを想う気持ちがもう残っていないのなら、未練の残りようもないくらいにすっぱりと引導を渡してやれ。それが優しさというものだ」
「兵頭……」

 兵頭の言葉に、少し心が迷う。

 ……今更、あそこに俺の居場所なぞありはしない。
 もう、戻れないのだ。

 ならば、俺は ――――

「……言うのが遅くなったな、倉間。俺達、別れよう。お前はお前で、雷門で頑張れ。俺は俺で、ここで頑張る」

 今の俺に出来る、精いっぱいの言葉を倉間に贈る。
 俺の言葉に衝撃を受けたのか、倉間はがくっと肩を落とし顔を俯ける。
 辺りの気温がすぅっと下がったような気がした。
 ゆらり、倉間の背後の空間が歪んだ。

「おや? 南沢、あの者は化身使いか?」
「いや、そんな筈はないけど……。ああ、でも神童や松風の例もあるか」

 先ほどから、こうして会話を交わす俺と兵頭の姿が、倉間の眼にはどう映っていたのか?

「……い、嫌です。嫌です、南沢さん。俺、絶対そんなの嫌っすから!!」
「倉間……」
「……そんな大男に俺の南沢さんを取られるくらいなら、こいつに南沢さんを頭から喰わせて、俺だけのものにするっっ!!」

 据わった目の色は涙に濡れて、歪んだ金色。
 ばっと振り上げた腕と共に、倉間の背後には金色に光る巨大なサイドワインダーが出現していた。

「うわぁぁぁ~~~、流石にそれは止めろっっ!! 倉間!!」
「ここでそんなスプラッタなことしたら、間違いなく警察沙汰だぞっっ!?」
「そうですよ、倉間くん。あんな薄情な人の為に、君が犯罪者になる必要なんてありません!!」
「ちゅーか、倉間になら南沢さんよりもっといい人が見つかるって!」

 怒涛の説得、二年生軍団。

「でも、でも……! 俺が好きなのは南沢さん、一人だけなんだ!! 南沢さんじゃなきゃ、ダメなんだ!! 南沢さんとやりたいんだ!! 南沢さんといきたいんだっっ!!!」

 うわっっっぁぁぁあああ~~~~~ん!!!! と大声で、倉間は辺り構わず泣き出した。ぺたんとフィールドに座り込み、大きな三白眼からぽろぽろと涙をこぼし、えぐっえぐっと泣きじゃくる。

 幼子が、必死で愛してくれる者を求めるように ――――


  ■ ■ ■


「己より小さな者を泣かすのは、感心せぬな」

 ふぅぅぅと、背後から大きなため息が聞こえた。
 すると、ひょいと大柄な兵頭に横腹を抱えられ、すたすたと倉間の前に連れて行かれる。

「雷門の11番」
「う”ぇぁあ?」

 大柄の兵頭を下から涙目で見上げる倉間の姿は、中々にキュートだ。

「南沢はお前に返そう。お前のその一途な心、感服致した」
「兵頭っっ!?」

 兵頭の小脇に抱えられたまま、俺は声を上げた。

「先ほどのシュートは見事であった。これほどの強者に、ここまで思われて南沢も男冥利に尽きると言うもの。今ならまだ、戻れよう」
「兵頭……」

 とすん、と倉間の前に下ろされる。

「それでもまだ、南沢がそやつと別れると言うのなら、俺が貰おう」
「へっっ!?」

 思わず変な声が出た。

「俺はお前のような者が好きだ。身体の小ささに似合わぬ闘志を秘め、一途で臆することを知らぬ。観客席を埋める大衆の面前で、自分の想いを叫ぶ事が出来る者などそうそうおらぬ」

 ずいっと俺を押しのけ、倉間の前で大きな体を屈ませるようにして視線を合わせる。

「あ、はい……」

 全面的にこんな風に褒められた事がない倉間は、兵頭の言葉に顔を赤くしている。

「まったく、お前のような可愛い者を粗末にするような男など、お前の方から三行半を突きつけてやれば良いものを。俺なら、絶対お前に寂しい想いなどさせぬぞ?」

 にっこり微笑みながら、そんな言葉を吐いている。

( ちょっ、待てっっ!! なんで俺の目の前で倉間を口説いていやがるんだ、この男は!! )

「あ、でも、俺は……」

 モジモジともじる倉間がこんなに可愛いとは思わなかった。
 化身の様に出現したサイドワインダーも頬をほんのり赤らめている。

「ん? 俺は?」

 体の大きさに相応するように、兵頭の度量もまた大きい。
 良く言う、『男が惚れる男』の部類だ。

「でも、やっぱり、南沢さんが……」

 ああ! なんて可愛い奴なんだ!! 倉間、お前は!!


  ■ ■ ■


 つんつんと、ユニフォームを後ろから引っ張られた。

「南沢……」
「なんだ、お前達」

 月山国光のメンバーが、こっそり俺の後ろに控えている。

「何している、南沢! 早くしないと、兵頭にあの後輩取られるぞ!?」
「お前、知らなかったのだろう? 兵頭の性癖。あいつな、自分がガタイがデカい反動か、とにかく小っちゃいものが好きなのだ」
「そうそう。小っちゃくて生意気で、で一途な可愛いところもあって、それでいて実力のある奴が大好物なんだぞ?」

 ……それって、まんま倉間じゃないか!?

「お前が兵頭に気に入られていたのも、そんな所があったからだ。 しかも、あいつがあんなに誰かに告白するなんて初めてだ」
「ああ、あれは本気(マジ)だな。基本、固い奴だから側付きは置かなかっただけに、あれは相当だぞ」
「側付き?」

 初めて聞く『側付き』という言葉に、俺は軽く頭を傾げる。

「南沢は、月山国光に来て日が浅いから知らぬのも無理はない。兵頭の様に一軍を率いる将と枕を交わす想い人の事をそう呼ぶ」
「えっっっ!!」
「戦地で戦う武人としての嗜みだ。ここでは女人との交際は二十歳を過ぎてからと厳命されておるからな」

 彼女を作るのは、二十歳過ぎてから!?
 じゃぁ、それまでは、一体 ――――

 ……つまり、それは、その……、アレなのかっっ!?

( うわぁぁぁ~~~!! ヤメテくれ!! あんなデカい奴に抱かれたら、倉間が壊れてしまう!!!! )

 その様子を想像しただけで、もうダメだった。
 倉間が俺以外の奴に抱かれるところなんて、想像を絶していた。
 みっともなく動揺している俺を余所に兵頭は、その大きな手で倉間の頭を撫で、優しく語りかける。

「あんな想いをさせられても、まだ南沢を慕うというのか?」

 落ち着いた大人の余裕を感じさせる兵頭の言葉。
 無理強いはしないが、引きもしないそのどっしりとした構えは、かなり脅威だ。
 ああ、確かに兵頭なら倉間を泣かせもしないし、大事にするだろう。
 俺のような、いい加減な扱いはしない。きっと!

 でも、俺はっっ!!

「倉間っっ!!」
「えっ? 南沢さん!?」

 俺は兵頭の横をすり抜け、倉間の手を取ると雷門サイドに駆け込む。
 皆の、俺を見る目が痛い。
 だけど、今ここで逃げ出すことは、絶対にしたくない。
 もう、間違えない!!


 ……倉間、お前がそこにいるから ――――


「……こんな事をしておいて、今更皆に合わせる顔なんてない事は分かってる。どんな誹謗嘲笑を受けても、言い返す言葉なんてない。でも!! もしも、許してもらえるなら、セカンドでも雑用でも構わない!! 俺を倉間の側に置いてほしい!」

 フィールドに両手をついて、俺は深く頭を下げた。兵頭から、何と無様なと糾弾されそうだ。だけど、今の俺には、こうするしか自分の気持ちを表す方法を知らなかった。

「顔、上げて下さい。あんたらしくないっすよ、南沢さん」

 フィールドについた手に、手を添えて倉間が声をかけてくれた。俺を立ち上がらせ、その両手で俺の両手をぎゅっと握りしめると、強い光を湛えた眼で兵頭の顔を真正面から見つめた。

「ありがとうございます、兵頭さん。俺、あんたの言葉嬉しかったです。でも俺、世界で一番好きなのは、愛してるのは、今ここに居てくれる南沢さん一人だけです。だから、あんたの所にはいけません。申し訳ありません」

 正々堂々とそう公言し、深々と頭を下げた。

 会場はしんと静まり返り、それからわぁぁぁと言う歓声に包まれる。

「さっさと結婚しちまえ!! 二人とも!」
「もう倉間、泣かせんなよ、南沢!」
「これでまた、倉間と別れるとなったら俺らがしょーちしねーぞ、南沢!!」

 そんな声が鳴り響く。

「ははは、本当に勇気のある奴だな、倉間は。こんなに見事に振られるとは思わなかった。だが、だからこそ俺が一目惚れした訳なんだがな!!」

 明るく言い放つ兵頭。
 そして理解が有り過ぎるほどの観客たちの声に押され、俺は雷門に戻ることが出来た。


  ■ ■ ■

 
 俺のした事は、いつか償わなくてはならないだろう。
 だけど、お前が許してくれている間は、お前が想っていてくれる間は ――――


 俺はもう、お前の側を離れない。


 お前が、俺を見捨てるその時まで。
 その時まで一緒にいさせてくれ、典人 ――――
 
 

  2011年10月15日脱稿




   === あとがき ===

月山国光戦後、こうなったらいいな♪ と言う、妄想100%の南倉・兵倉な倉間受け小話です。
出だしはシリアスっぽいですが、一応ギャグです(*^^)v 
南沢さんがかなり情けない扱いになっているので、ご注意を!!




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Date:2012/03/16
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