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□ 雷門イレブンの話 □

【円堂カノン】 樹形図 【ひいじいちゃんズ】

 生活リズムなど、疾うにゴミ箱に捨ててしまったキラードが、朝食と昼食とおやつが一緒くたになったような食事を取っていた時だった。
 バターン!! とドアが大きな音を立てて開かれ閉められ、バタバタバタとこちらに向かって走ってくる足音に、キラードはほんの少し眉を下げ、紅茶のカップに触れていた口元の口角を判るか分からないぐらいに笑みの形に引き上げた。

「……相変わらずですね、カノンは。元気なのは良いのですが、あの調子では研究所の中ででも大怪我をしそうですね」

 呆れたような呟きには、それを厭う響きは含まれていない。
 むしろ、慈しみの籠った柔らかな音。

「キラード博士っっ!! 大発見です!」

 飛び込んで来るなりテーブルの前に散らばっていた書類で足を滑らせ、カノンは顔面を強打する。

「ッ痛~っっ! もう、博士!! また、こんなに散らかしたままでっっ!!」
「ん~、散らかしている訳ではありませんよ? ただ片付ける時間がないだけです。ちゃんとそこになんの書類があるかは、把握していますからね」

 キラードが小指を立てて口にする紅茶は、輝くオレンジ色が印象的な、香りも高いニルギリ産。

「で、どうしたんですか? そんなに慌てて」
「あ、そうそう! 俺って曽祖父ちゃんって、守じいちゃんしかいないと思っていたんだけど、本当は他に三人もいるんですよっっ!!」
「ほう、それは、それは……」

 大発見をしたような表情で瞳を輝かせているカノンを、遠くを優しく見守るような瞳でキラードは見つめた。


  ■ ■ ■


 ……光陰、矢の如し。

 円堂は今、皆に祝福を受け人生という大海原に乗り出す若い二人を目を潤ませながら見送っていた。

「……早いものね。私があなたと出会って、もう三十年も経ってしまったなんて」
「夏未……」
「本当に、あっという間」
「ああ、そうだな」

 花婿の両親と言う役柄で、華燭の典を上げた華やかな舞台の片隅で円堂と夏未は、そう小さく語り合っていた。

「それで言うなら、俺達もだろう?」
「そうだよ! あたし達も三十年だよ!?」

 落ち着いた声は、それこそ三十年からの親友である鬼道のもの。今も変わらない元気な子どもっぽさを残した声は、鬼道の妻になった塔子のものだ。塔子は先ほど愛娘である新婦からの手紙でひとしきり大泣きした後なので、目元が赤い。一人娘を嫁に出した寂しさもあるだろう。

「そんなに寂しくないでしょ? だって、円堂くんのところだもの。いつでも遊びに行けるわよ」

 そう言いながらこの結婚式に列席していた秋が、塔子にハンカチを差し出す。

「ん、うん。そうだね、いつでも遊びにいけるんだもんね」

 今も変わらない気遣いをしてくれる秋に、塔子も小さく笑って返した。

「でもさぁ、円堂家の男は逆玉の運勢でも掴んでいるのか? 円堂の時の雷門と言い、今度の鬼道くん家の一人娘を掻っ攫う息子と言い、大したもんじゃないか」

 ニヤニヤ笑いながら、そんな憎まれ口を叩く不動。

「……だめよ、あなた。そんな事言っちゃ失礼よ。そして、逆玉じゃなくてゴメンナサイ」
「あ、冬花……。いや、そんな訳じゃ……」

 妻である冬花の機嫌を損ね、急に声のトーンが下がる。

「えっ? なぁに。また冬花さんを困らせてるの!? 相変わらずね」
「財産って金銭だけが財産じゃない。五人もの子宝に恵まれた果報者じゃないか、贅沢だぞ、久遠明王くん」

 と、わざわざフルネームで呼ぶ木暮。
 冬花との結婚に際し、冬花の『久遠』の名前を残したいと言う希望を聞き入れて入り婿したのだ、不動は。
 その時の台詞が、

( ああ、別に構わねぇぜ? 字面で見なきゃ、たかが不(ふ)が久(く)に変わるだけの話だし、俺の方は守りたいほどの名前でもねーしな )

 で、ある。

 それだけ冬花を愛していた。いや、今もその気持ちは、少しも変わりない、それが五人もの子宝に恵まれた一番の理由だ。明るく賑やかで、そして穏やかな親の愛情に溢れた家庭を作っていた。

「そうよね、ウチなんて二人だもの」

 隣から口を出した夫の木暮の言葉に合わせるように、春奈も口添えする。
 辺りを見回せば、あの頃の仲間たちが子どもを連れて、今日の日を祝いに来てくれていた。

 そう、今日は円堂家と鬼道家の結婚式。

「おめでとう! 円堂! 鬼道!!」
「ありがとう! 豪炎寺」
「豪炎寺、ありがとう」

 豪炎寺は円堂と出会うきっかけになった少女、如月まこを妻としていた。
 その微妙な年齢差に、周りからはやっぱり……と言う声が上がったとか、あがらなかったとか。
 そしてもっとびっくりなのは、その豪炎寺が目の中に入れても痛くないほど溺愛している妹の伴侶が、なんと風丸だという事実!! これは、ひとえに夕香の情熱的なアタックが実ったものだった。
 
 風丸自身、さほど結婚願望はなかった。
 仲間の幸せそうな様子を見るだけで、それで自分は良いと思っていた。

 ……ずっと、叶わない想いを抱いてきたから。

 夕香は、知っていた。
 夕香も、ずっと見てきたのだ。
 兄の姿も、風丸の姿も。

 だから……、夕香は自分の想いを風丸に伝え、そして未来への道を開こうと訴えた。一つになる事など叶う事のない想いを、血脈を一つにすることで叶えるその可能性を残そうと。

 夕香のその強い想いは、風丸の心を動かした。
 また、そこまで覚悟を決めた夕香を袖にするには、兄である豪炎寺はあまりにも恐ろしかった。


  ■ ■ ■


「よう、おめでとうさん!」
「ありがとう、不動…、いや、今は久遠か」

 一瞬浮かぶ、戸惑いの表情。そして、にっと笑う円堂。
 不動こと久遠は、新郎である円堂の息子に餞(はなむけ)の言葉として、こう言う。

「いいか? 結婚したらな、男の甲斐性は何人子どもを作れるかだ。お前が親父を超えたいと思ったら、最低でも二人以上は作らないとな!!」
「はい! そのつもりです!! それはウチの親と鬼道のお義父さんとも約束した事ですから!!」

 この結婚は、一人息子と一人娘の結婚と言う事で、周りにもどうなることかと心配された。
 その問題を解消するため、若い二人から一つの提案が出された。それは結婚した若夫婦の間に生まれた子どものうち誰か、つまり円堂守の孫の誰かが成人の暁に、鬼道家の養子になると言う約束である。円堂と鬼道の血を受け継いだ者が、それぞれの家を守って行くように。

 これ以上の理想があるだろうか?
 
「ねぇ、あなた。次はウチかもよ」
「えっ? 誰だ、相手は!!」

 そっと一之瀬の腕を引いた秋の言葉に、一之瀬の顔色が変わる。

「あれ、父さん知らなかったんだ。姉さんの相手、ほら豪炎寺おじさんのところの」

 そう言うのは一之瀬家の長男。
 見れば、今式を挙げたばかりの花嫁からもらったブーケを胸に抱えた年上の彼女の隣で、静かに微笑む父親に良く似た青年。

「……父親が反面教師になったのか。年下よりも年上を選んだのは」

 ふっと、ため息を漏らす一之瀬だが、それでもあの豪炎寺の息子なら、申し分ないと思う、そして、僅かばかりだが今の鬼道の気持ちをひしっと感じる。花嫁の父としての、なんとも言えない寂しさを。

 そして、その言葉通り、一之瀬・秋夫妻の長女は豪炎寺家に嫁いだ。
 それから、さらに数十年後。

 円堂の孫は、豪炎寺家から自分の伴侶を娶った。
 円堂と鬼道と豪炎寺。この三人が出会ってから紡いだ絆は、数十年の時を経て、確かな血脈として今一つになったのだった。


  ■ ■ ■


「あの時は、守じいちゃんの事しか俺調べてなかったけど、本当はあそこにいた雷門イレブンの皆が俺の曽祖父(ひいじいちゃん)だったり曾祖母(ひいばあちゃん)だったんだ!! なぁ、これってスッゲーよな! 博士!!」

 キラードはカノンが興奮するのも仕方がないと思う。
 自分の中に、あの円堂守の血だけでなく、天才司令塔と呼ばれた鬼道や、炎のストライカー・豪炎寺修也の血筋も流れていると聞けば。

「道理で俺、サッカーが好きで好きでたまんねー訳だ!! こう、遺伝子レベルでそれこそ血が騒ぐって感じ?」

 くぅぅぅぅっ、と全身に力を入れて、自分という『存在』を実感するカノン。

「……今、こうして生きている人間は誰もがそうやって膨大な繋がりのなかで生まれてくるのです。過去の誰が欠けても、現在のカノンにはなりません。そう考えると、これはもう奇跡としか言えませんね」

 穏やかな声で、キラードはカノンに言葉をかけた。

「奇跡、かぁ……。そう言えば、俺と博士が、こんな風に話せるのもそーゆー奇跡みたい巡り合わせなんだよな」

 ぽつりと呟いた言葉に、ぴくりとキラードが反応する。

「……そうですねぇ、そうかもしれません。私の先祖は、カノンの高祖父様や曽祖父様に償えないような罪を犯した人でしたからね」
「博士っっ!?」

 カノンにしてみれば、この前授業で習った『一期一会』を、自分の身近な事柄に置き換えて話してみただけの事だ。それに対して返って来た言葉に、カノンは驚愕を隠せない。

「そう、カノンにとって二人の曽祖父に……」

 寂しげにつぶやくキラードが、なぜかふっとどこかに行ってしまいそうな気がして、思わずカノンはその手を強く握りしめた。

「そんなこと、関係ない!! 俺が守じいちゃんや有人じいちゃんと同じじゃないように、キラード博士だって、その人と同じ訳じゃない。だから、そんな風に言うことはないよっっ!!」

 キラードは思う。
 カノンにこの言葉を言わせているのは、カノンの中の有人だろうと。

「……そうですね。カノンがカノンのように、私は私です。さて、すっかりお茶も冷めてしまいました。温かいココアを淹れましょうかね? 飲んでゆくでしょう、カノン?」
「勿論!! まだ、話し足りないし、美味しそうなおやつもあるし♪」

 キラードはカノンをそこに残し、キッチンへと向かった。
 そして遠くを見る瞳で、今でてきた部屋の中を想う。

 過去を振り返れば、『カノン』と言う頂点を目指して、はるかに広がる人々の繋がり。未来を見れば、『カノン』もまた、その広がる人々の中の一点にしか過ぎない。

 だから ―――

「決して、私たちは『孤(ひとり)』ではないのでしょうね。ここに、こうして生きている、それだけで」


 ―――― 繋がり、広がり、はるか時を超えて伸びてゆく。


 枝を張り、その葉陰で旅人を憩わせる、命と想いの大樹。
 遥か遥か、未来へと歩き続ける者を優しく見守りながら。

 そう誰もが、その大樹の一葉なのだ ――――


 2011年10月29日脱稿





   === あとがき ===

なんだか、唐突に思いついたカノンくんの話。
カノンくんのひいおじいちゃんやひいおばあちゃんの事を考えたら、こんな話になりました。
ものすごくご都合主義だけど、これなら皆幸せかも? 
円堂世代の捏造夫婦や、オリキャラ子ども達がわんさかなの出てます。



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Date:2012/03/16
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