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君の為に 1


 本当の、本気で自由なサッカーを取り戻す! その想いだけを旗印に掲げ、突き進んできた雷門中イレブン。フィフスセクターの出す勝敗指示に抗い、送り込まれる刺客と熱闘を演じ、魂からのサッカー愛に満ちたプレイは対戦相手だけでなく、その場に居た観客、TV画面を見ていた視聴者までを魅了し、かつての円堂守とその仲間たちが起こした奇跡を再現していた。

 勝利だけが、サッカーの全てではない!
 共に全身全霊で、フェアな真剣勝負。
 ぶつかり合い、火花を散らし、自分の持てる最大限の力を全て出し切って、フィールドを駈ける、飛ぶ、撃ち込む。

 その迫力あるプレイに、観客達は自分も共にフィールドを駈け、風を感じる。
 両チームに送られる、惜しみない声援。
 ベストを尽くそうとする、真摯なまでの選手たちの表情。
 笑い、泣き、悔しがり、歓喜に沸く。

 これこそがサッカーだと、誰もが思う。

 雷門中が地区予選、全国大会と勝ち進むに従って、皆のサッカーの試合を見る姿勢が変わってきた。フィフスセクターの指示通りシナリオ通りのプレイをする試合には、声援は鳴り潜み、どんなプレイをしても熱さを感じない分、観客の反応も冷ややかだ。
 また、勝敗指示を無視する中学校も続々と現れてきた。北は北海道の白恋中、南は沖縄の大海原中や福岡の陽花戸中、京都の漫遊寺中など、その地域のサッカー名門校がこぞって管理サッカーに反対の意を示した。日本中の中学サッカー部が、雷門中から始まった革命の風に、それぞれの旗を翻し始めていた。


  ■ ■ ■


「……ようやく、ここまで来たか。円堂」

 微かな笑みを浮かべ、男はこの座の主である時が、もう終わり間近なことを感じていた。各地に赴任させたフィフスセクターの連絡員から、担当中学校の管理サッカー脱退の知らせが続く。

「如何いたしましょう、聖帝」

 雷門中を管轄している黒木が、恭しく聖帝に伺いを立てる。

「少年サッカー法第五条に抵触するとして、聖帝であれは強権発動も出来ますが?」
「そんな事をすれば、全国の中学校で管理サッカーに対してくすぶっている気持ちに、一気に火を点けることになると思うが」
「では、どうなさるおもつもりです?」

 恭しく腰を落とし、ほんの少し顔を上げて黒木が聖帝の言葉を待つ。

「……フィフスセクターは時代の求めに応じて、生まれたものだ。あの十年前の中学サッカー界混沌の時期に、子ども達を守るために。しかし、組織は肥大化し、利権を貪る輩の巣窟と成り果てた」
「聖帝……」
「守るべき子ども達の、心の叫びをもう無視する訳にはゆくまい。サッカーとは、管理されるものではない。もっと自由なものだ!」

 聖帝こと、イシドシュウジはその玉座から立ち上がると、足元に侍る黒木に声をかけた。

「私は、この聖帝の権限を持ってフィフスセクター解体を告げる!!」
「聖帝っっ!!」

 それは、フィフスセクターの帝王としては、決して口にしてはならない言葉。

「……黒木、お前にも分かっていただろう? 管理サッカーの下では、あの子ども達の顔に、あんな笑顔は浮かばない事を」

 そう、諭すように語る聖帝の瞳は、熱くそして優しいかつての炎のストライカーの瞳。誰よりも熱く、自由なサッカーを愛した、豪炎寺修也の。

「……やはり、あなたが聖帝の座に就いたのは、このフィフスセクターの解体を目論んでの事だったのですね」

 聖帝……、いや、豪炎寺の瞳が思惑ありげに眇められる。

「ああ。俺達が中学サッカーを卒業してすぐ、この組織は動き始めた。確かに、あの当初の行き過ぎた情熱ゆえの悲劇は、俺も円堂も胸を痛くした」
「ええ、あなた達は『特別過ぎた』。でも子ども達には、自分達もそうなれると錯覚させてしまうほど、あの頃のサッカーは危険な魅力に溢れていた」

 膝まづいていた黒木はいつの間にか立ち上がり、豪炎寺と対峙している。

「そう、悲劇。弱小の、部員数も足りない廃部寸前の雷門中が起こした奇跡にあやかろうと、同じような境遇のサッカー少年たちが、きちんとした指導者もいないまま、無茶な特訓を続けたせいで、二度とサッカーの出来ない体になってしまった沢山の事例」

 黒木の声は、一言ずつにその冷たさを深めてゆく。

「あるいは、指導能力のない監督や顧問のせいで、炎天下、無謀な過激な練習中に熱中症や心不全で命を落とす事例。あなたは、医者を志してたんですよね? 命の重みは誰よりも分かっている筈」

 黒木の豪炎寺を見る瞳には、明らかに憎しみの炎が燃え上がっている。

「黒木……」
「確かに、あなたが言うように今のフィフスセクターは、ある意味組織不全に陥っています。大人の目だけでは不十分な部活指導を補助するためのシードシステムが、いつの間にか監視と強制力に重みを置いたものになってしまいました」
「お前……」

 パチリ、と黒木が指を鳴らした。すっと、聖帝のボディガードだった男たちが、音もなく聖帝の間に現れる。

「ですから、改善の必要があるのは認めます。しかし、私はサッカーはあくまでも、管理されるべきのものだと、断言します!」
「黒木っっ!?」

 豪炎寺の両脇を、ボディガードが拘束する。

「分かっていました、あなたの考えている事くらい。そう、あなたの正体が、『豪炎寺修也』だと分かったと時から」
「くっっっ……」
「随分と迂闊でしたね。あれほど露骨に雷門に温情を与え続け、雷門中を、いや『円堂守』を中学サッカーの場にもう一度立たせようなどとすれば、私でなくても気が付きますよ」
「……俺を、どうする気だ」

 当然の様に黒木は、壇上の聖帝の座に腰を下ろす。

「あなたは、組織に取って許しがたい裏切り者です。裏切り者は粛清が必要。ただあなたは、あの円堂を抑制するのに、またとない切り札。いや、円堂だけじゃないですねぇ。帝国の鬼道や、その他あの頃の仲間達を抑えるにはね」
「…………………………」
「フィフスセクターの指示に従わない場合、元聖帝こと豪炎寺修也の身の安全の程は保証できない、と」

 自分の存在が、円堂たちの足かせになると気づき、豪炎寺の顔から血の気が引いてゆく。

「ああ、そう! あなたは知らなかったでしょうが、フィフスの最高位はあなたではありません。本当の最高位のさるお方から直々にお言葉を賜りまして、不肖この私が次期聖帝と決まりました。このまま私の管轄内の雷門が勝てば、私の聖帝就任は当然のこと。ホーリーロード選挙システムの手続きに従い、雷門中には次の試合、勝ちの指示を出していますがね。聖帝になった暁には、雷門の反抗を検証して今の組織のやり方の拙さを洗い出すつもりです」
「洗い出す……?」
「ええ、組織内改革ですよ。今度はもっと巧妙に、管理される側も、管理されていることに気付かないくらい精密に。ただし、雷門は廃校です! ホーリーロード優勝校であっても、組織の力の程を見せつけ、今後の見せしめのためにも」
「止めろ!! 黒木っっ!!」

 豪炎寺が、悲鳴にも似た叫び声をあげた。

「あの円堂の性格では、わざと負けることは出来ない。しかも、親友の命がかかれば尚の事。しかし、勝ってしまえば、そこから新生フィフスセクターの時代が始まる。あの男はどう出るでしょうねぇ」

 立場の逆転劇。
 上位者である黒木が、甚振るように豪炎寺に聞きたくもない言葉をかけ続ける。

「…お前は、俺達を嬲っているのかっっ!!」

 黒木の言動が豪炎寺には、どうにも中学サッカーと言うよりも、自分や円堂たちに焦点を当てているような気がしていた。

「……あなたは先ほど、子ども達の顔に笑顔を浮かべたいと仰った。しかしその前に、無軌道な部活で変わり果てた子どもの姿に泣く家族も居たことを、その恨みはいつまでも消えないことを思い知るべきです!!」

 それこそが、この黒木と言う男を動かしている原動力。
 豪炎寺には、頭を項垂れるしかなかった。


  ■ ■ ■


「円堂監督!! フィフスセクターから、勝敗指示が届きました!!」

 サッカー部顧問の春奈が慌ただしく、ミーティング中の部室へ駈け込んできた。円堂たち雷門イレブンがフィフスセクターに反逆の意ありと公言してから、組織からの接触はなくなっていた。それが、ここに来てまた接触を持とうとしている。

「円堂監督、フィフスセクターは何と言って来てるんですか?」

 キャプテンの神童が、もう何を言われても動じはしないと言う心構えで、円堂にそう尋ねた。

「……どういう事だろう? 次の試合は雷門の勝ち、と言う指示だ」

 円堂も、頭を傾げる。
 もともと一回戦敗退を宣告されていたのを、ここまで無視し続けて勝ち上がってきた。それが、いまさら『勝ち』指示を出す意味は……?

「フィフスの上層部で、首のすげ替えが行われるそうだ」

 ぽそり、と言葉を発したのは剣城だ。

「首のすげ替え……? それは、どういう意味だ、剣城」

 円堂の声が硬い。表情も、いつもの円堂ではなかった。

「つまり、現聖帝を排斥して、新しい聖帝が立つって事だ」
「 ―――― !!」

 明らかに円堂の表情が変わる。

「俺達が負ければ今の聖帝がそのままで、俺達が勝てば違う誰かが聖帝の地位に就く、って事か?」

 神童が、状況を纏めながらそう剣城に尋ねる。

「ああ、そういう事だ。つまり俺達は、その聖帝を決める選挙の馬みたいなもんさ」
「馬……?」

 剣城の言葉を、分からな気に天馬が繰り返す。

「……なんか、馬鹿にされたような気分です。俺達は一生懸命に試合をしているのに、大人たちは勝手にその勝ち負けで、自分たちの地位を決めようなんて」

 珍しく速水が、はっきりと自分の意見を述べている。
 丁度その時だった。円堂の携帯に着信が入る。ディスプレイに表示された名前を見て、円堂は急いで通話ボタンを押した。

「……済まない、円堂」

 通話口から流れる、懐かしく聞き覚えのある声。

「おい! お前、大丈夫なのかっっ!? 何を謝ってるんだっっ!」

 いつものどっしりと構えた円堂しか知らない子ども達は、円堂のそんな様子に微かな不安を感じる。

「雷門中サッカー部監督、円堂守さんですね?」
「――――!! お前、誰だっっ!?」

 あの声が聞こえた通話口から、全く知らない冷たい感じの男の声が聞こえた。

「もうご存知かもしれませんが、次の優勝戦、雷門に勝ちの勝敗指示が出ました。と言う事で、ホーリーロード優勝おめでとうございます。お蔭で、私が次の聖帝に就任させてもらえます」

 通話先の相手は、慇懃無礼な声音でそう言った。

「お前がっっ!! お前が、豪炎寺を引きずり落としたのかっっ!?」

 周りに部員たちが居るのも忘れて、円堂はその名を口にした。

「おや? それは異なことを。雷門中が勝敗指示を無視し続けることで、イシド様こと豪炎寺さんの地位を脅かしたのは、あなたでしょう? 円堂監督」
「お、お前っっ!!」

 悔しげに、円堂がその拳を握り固める。また円堂の口から出た現聖帝イコール豪炎寺修也との事実に、雷門イレブンにも少なからない衝撃が走っていた。特に一番衝撃を受けていたのは、剣城だった。

「豪炎寺! 豪炎寺は、無事なのかっっ!? おいっっっ!!!」

 相手は伝える事だけ伝えて、既に通話は切られていた。
 大きく息をつき、肩を落とした円堂の前に、ゆらっと円堂より一回り小さな影が落ちる。

「……説明願えますか? 円堂監督。十年前の雷門イレブンのエースストライカーだった豪炎寺さんが、なぜ聖帝となって俺達を苦しめていたのかをっっ!!」

 叩きつけるように神童が、そう円堂に詰め寄る。それは、今現在の雷門イレブンを代表して、一番聞きたいことであった。

「あ、それは……」

 言葉に詰まる円堂。
 苦しい戦いを経て、築いてきて監督と選手たちの間の絆に、綻びが生じようとしていた。

「答えてください!! 監督!」
「し、神童……」

 神童の真剣な瞳が、円堂を見つめる部員たちの視線が、円堂を突き刺す。

「俺が説明しよう」

 緊迫感が漂う部室内に、また別の人物の声が響く。
 そこには、円堂の幼馴染でもあり、やはり雷門イレブンのOBでもある風丸が立っていた。

「風丸……」

 円堂の表情が、ほんの少し柔らかくなる。

「円堂、お前は説明が下手だからな。音無から連絡を受けた鬼道に頼まれた。お前の助っ人に行ってくれと」
「助っ人……」

 円堂の口の中で、小さくその言葉は呟かれた。

「……非常事態だ。本当なら、子ども達には知られることなく終わらせる筈の話だったんだが、この今の事態に至っては、是非とも内訳を知ったうえで、子ども達の協力を仰がなくてはならなくなった」

 風丸の言葉に、神童も天馬も剣城も内訳と言い表された、おそらくフィフスセクターに関する秘密を聞き漏らすまいと、固唾を飲んで待ち構えた。




    2011年08月16日脱稿



   === あとがき ===

あれこれ妄想したネタのうちの一つです。
聖帝=豪炎寺くんで、実は今の管理サッカーを元に戻すために、インナーテロ的働きをするために組織に侵入したんですね。
組織ぶっ壊すのに下っ端よりも、上の方が木端微塵に壊せるから。
そういう大掛かりな数年がかりのオペレーションを内と外で展開していたんです。
ところが、途中で黒木さんに気付かれて下剋上されて、豪炎寺くん、ピーンチっっ!! 
囚われの豪炎寺くんを助けにゆく円堂くんと、その円堂くんを助ける十年後メンバー達のお話です。




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Date:2012/03/22
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