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君の為に 5

「……いよいよだな、剣城」

 真夜中近く、ほとんど灯りの消えたフィフスセクター本部を前に、円堂はごくりと唾を飲んだ。

「昼間見ても威圧感のある建物が、夜だとなお一層凄味を増すな」

 通い慣れている筈の剣城も、同様のようだ。

「さて、俺はここで何といえば良いのかな?」

 覚悟はとっくに決めている円堂だが、時間外モードに入っている施設への訪問を、どう切り出したものかと思案していた。

「……え~と、取り敢えず時間外インターフォンがあるんで、それを押してみたら?」

 定時を過ぎ凝ったデザインのフェンスで閉ざされた入口。御影石で出来たフェンス柱には、通常用のインターフォンの下に、時間外用のインターフォンも並んでいた。

「よし! 俺達は正々堂々とフィフスセクターに抗議に来たんだもんな。押すぞ!!」

 円堂の気合に反し、押されたインターフォンの音は外にいる円堂たちの耳には聞こえない。やや間が空いて、インターフォンから夜勤と思われる担当の少し疲れたような声が聞こえた。

「当施設は時間外の為、本日の業務を終了いたしております。明日、業務時間内での再訪をお願いいたします」
「明日じゃ遅いんだっっ!! 責任者を出してくれ! 雷門の円堂が来たと伝えてもらえればいい!!」

 そうインターフォンに怒鳴りながら、御影石の柱を拳で打ちつける。

「ひっ! ら、雷門の円堂監督……っっ!!」

 その鈍く重たい音まで聞こえたのか、温度を感じさせないビジネスライクな口調が、明らかに引きつった。すぐにフェンスのロックが開錠されたのか、大きなフェンスがするするするっと左右に開かれる。
 今まで暗かった建物の、まず玄関とホールに照明が点いたのを確認して、円堂と剣城は敷地内に足を踏み入れた。

「頼りにしているぞ、剣城」
「円堂監督こそ、ドジ踏まないでください」
「こんな時はなぁ、そのドジまで味方にしたモンの勝ちなんだぜ?」

 と、にやり。

 場数を踏んでいる円堂は、こんな時こそその本領を発揮する。剣城の言葉に見せた笑いは、いつもの太陽のような笑みでも、子どもっぽさが残った笑みでもなく、まさしく今から闘いを挑む男の笑みだった。

( そうか、これが『円堂守』なんだ…… )

 大きく見えた。
 いつもより大きく、逞しく。

 こんな男がゴールを守るのなら、どれほど思う存分フィールドを駈けることができるだろうと、少し遠い目をしてしまう剣城だった。


  ■ ■ ■


 玄関とホールだけ、明かりが点いている。
 受付にも人影はなく、先ほどインターフォンで対応した人物が出てくるのかと思えば、明らかに違うガタイの大きな黒服の男が二人、明かりもついていない広いリノリュウム張りの廊下の奥から、ぬっと現れた。

「お前たちが責任者? には見えないなぁ」

 物騒な気配を醸し出している男二人にたじろぐ事もなく、円堂は胸を張って同じ要求を突き付けた。

「さぁ、俺をここの最高責任者の所へ連れて行け!!」

 堂々とした態度で、はっきりそう声にする。
 その声は深閑とした建物の中に大きく響き渡る。

( 円堂監督、今 最高責任者って言ったよな……? それって、どういう意味で…… )

 先ほどまでは責任者を、と言っていた。
 それを、ここに来て最高責任者と言い換えている。
 その、胸の内は ――――

( ああ。監督、あなたの瞳は真っ直ぐに救い出すべき大事な人を見つめてるんですね )

 守りたいものを守る!
 それは円堂に取って、サッカーであれ人であれ、全て平等であった。

「申し訳ない。今、ここの責任者は席を外している。代わりに、私が話を伺いましょう」

 二人の黒服のボディーガードの間を割って、そう声をかけてきたのは黒木だった。

「黒木……」

 ぎりっと、剣城がきつい視線で睨み付ける。

「ほぅ。勝手にシードを辞めたはずの君が、どうしてここにいるのかね?」

 訳など知っているだろうに、剣城にそう尋ねる。

「ああ、俺をここへ案内してくれるついでに、置きっぱなしになっていた私物を持って帰りたいそうだ」

 代わりに答えたのは円堂だ。

「案内、ねぇ。自分勝手なお前に、本部の中を歩き回られたら迷惑だ。私物のあるロッカーへの入室は認めよう。だが! 私物を持ち出したら、即刻ここから立ち去りたまえ!!」
「ふん! こんな胡散臭い所、俺だってもうご免だ!! 明日の事もあるんでね、子どもはさっさと帰って寝るさ!」

 そう捨て台詞を吐くと、常夜灯しかない暗い廊下を間違うことなく、シード用のロッカールームへと向かう。剣城の後ろ姿が廊下の角を曲がり見えなくなった頃を見計らって、黒木は背広の内ポケットからモバイルPCを取り出した。開いた画面にはこの建物の平面図と黄色の光点が示されている。

「ふむ…、ちゃんとロッカーに向かってはいるようだな」

 剣城が変な行動をしないように、こうして見張っている。ひょいと円堂が横からその画面を覗いてみると、白い光点を挟んで青い光点が一つずつ、その白い光点に対面するように赤い光点が一つ。

「へぇ~、こうなってるのか。どこからでも見張られてるんだな」

 まだ興味深げに覗き込んでいる画面を、円堂の目の前で閉じる。

「……どんなに覗き込んでも、居場所は表示されませんよ?」
「えっ? まさか、もうここにはいないのかっっ!?」

 思わず、言葉が出る。

「誰が、居ないと?」
「俺がここに来た訳は、それだ。あいつを返してもらおう!」
「……まぁ、立ち話もなんでしょう。どうぞ、こちらの部屋へ」

 黒木が先になって歩きだし、円堂の両隣を黒服の男が固める。

「しかし、雷門は大変な人物を監督にしたものだ。大事な決勝戦前に、管理本部に乗り込んでくるような人間に采配を任すとは。子ども達が哀れだな」
「俺は、あいつ等から見送られてここに来てるんだ。出来れば俺も、さっさと用事を済ませて帰りたいものさ。なんせ明日は、決勝戦だからなぁ」

 黒木の嫌味も、円堂には通じない。
 それだけのものを培って、それでなおここにいる円堂なのだ。


  ■ ■ ■


「さて…、と。大人は大人に任せて、俺は自分の領分を果たすだけ」

 背後からの視線が消えたことを感じとり、剣城はふっとそんな言葉を口にした。それから目金の指示通り、まずはロッカールームまで行く。館内くまなく監視カメラと赤外線センサーでチェックされているが、それでもわずかな死角は出来るものだ。最初の死角は、ロッカールームを出る扉を開いて出来た30センチの隙間。このスペースは監視カメラからも赤外線センサーからも死角になっている。そんな本部の人間も知らない死角を目金は、極秘裏に入手したフィフスセクター建築時の平面図や設備図から割り出していた。

「ロッカーに本来のIDカードを置いて、出る間際に例の偽造IDを感知させれば、俺はずっとここにいて、他の誰かがうろついている事になるんだな」

 シードのIDが示す光点は黄色で幹部は白色。セキュリティ関係は青色、そして夜勤を含む一般職員は緑色。ID不所持者は赤の光点で示される。この赤が表示された時だけ、館内に警報が鳴るようになっていた。

 フィフスセクターの表玄関と本館は、あの通り照明も落とされ暗いままだったが、その裏にある庶務や実務を扱う別館は、そこここにまだ明かりが点いていた。
 いよいよ全国大会決勝を控え、聖帝の選挙も大詰。何も知らない一般職員は、その準備の為いつもより多くの人員が忙しそうに館内で働いている。そんな状況でふっと緑の光点が一つ増えても、パネルを散漫に見ていた係員はさして気にも留めない。

 死角で偽造IDを取りだし、それをロッカールームの赤外線センサーで感知させる。もし、監視している係員がそれを異常だと判断すれば、すぐに放送が入るはず。そうなれば、剣城はそのIDカードをすぐに処分するよう言われていた。処分する方法も簡単だ。処分用の一見何の変哲もないカードケースを渡されている。この中にカードを入れれば、一瞬にして磁気データを抹消する。そうすれば元の真っ白なプラスチックカードに戻るだけ。調べに来た係員には、知らぬ存ぜぬを通せばシステムの誤作動と判断されるだろう。

 緊急を知らせる放送が入るタイミングを計る。
 30秒、1分、2分、3分 ――――

 警報は鳴らない。

「よし! 行ける!!」

 剣城は人気のない事を確認し、地下へと降りる通路を急いだ。

 その5分後、剣城は地下2階のマンホールの前にいた。水路側から開けられれば、それは部外者の侵入を意味するとして、第一級警備態勢が敷かれる。しかしこれだけ大きな建物であれば定期的な点検は必要な作業な訳で、その場合は必ず内部の者立ち合いで、内側から開ける事になっていた。

 コンコン、と水路側からマンホールの金属蓋を叩く音がする。剣城は、マンホールのロックを解除した。

「タイムロス無しか、なかなか優秀だな」

 そう言いながら声をかけたのは不動だった。

「……不動さん」
「おらっ! お前は、こっち来い!! 俺と入れ替わるぞ」

 マンホールの底で、上を見上げた不動がそう剣城に指示を出す。

「えっ? でも、俺がフィフス本部の案内をしないと……」

 そのつもりで本部に乗り込んできた剣城だ。入れ替わるぞと言われても、そう簡単に『はい』とは言えない。

「大丈夫ですよ、剣城君。君が知っている以上に僕らは、この建物内の構造を把握していますから」

 またもマンホールの底から声がする。

「目金さん……」

 地下2階の機械室の灯りがマンホールの底に落ちて、目金の掛けている眼鏡のフレームがきらりと光りを反射する。

「それにキャプテンに頼まれているんですよ。剣城君が明日の試合に出られるように、無事フィフス本部から連れ出して欲しいってね」
「俺を、明日の試合に……?」

 円堂と別れるときに、確かに剣城は自分でもそう口にした。
 しかしそれは、あくまで方便。自分は、ここで円堂やその仲間に協力して、豪炎寺を助け出すつもりでいた。

「ああ。ここでの戦いは言わば、薄汚い大人同士の騙し合いみたいなもんだ。お前のような子どもが首を突っ込む事はない。お前の戦うべき場所は、仲間が待っているあのフィールドだろ?」

 不動が口の端を持ち上げるような笑みを浮かべて、諭すように言葉を続けた。その言葉はどこか羨ましげで、大人と子どもの境界線を剣城は感じた。

「分かりました。今、そちらに行きます」
「おぅ。後は任せておけ!!」

 こうして無事、不動たちはフィフス本部に誰にも気づかれないまま、潜入することに成功した。


  ■ ■ ■


 円堂は人気のない本館内の一室に通された。そこで、両サイドのボディーガード達から、念の入ったチェックを受けた。勿論携帯も取り上げられ、他に盗聴器や発信機の類がないか調べる為、着ているものすべてを黒木の用意したスポーツウェアにシューズまで取り替えさせられた。

( すっげー、隙の無さだな。目金、お前の読みは正しかったぜ )

 円堂は心の中で、そう呟く。

「ここまで徹底していると言う事は、ここから先の話は外に漏れると絶対マズイ話なんだな?」

 貸し出されたシューズの紐を結びながら、下から上へと上目づかいで黒木の顔を見る。

「あの電話が罠だと承知で、お前は飛び込んできた。何らかの手を打った来ているだろうと考えるのは当然」
「だけど、何も出てこなかったな」

 円堂は少しも慌てる様子を見せず、真っ直ぐな瞳を黒木に向けた。

「……お前は、真正面からの直談判でこの一件が解決すると思っているのか?」
「出来ればな。なぁ、なんであんた達は、こんな事やってるんだ? 今の子ども達から「本当のサッカー」を取り上げる意味はなんだっっ!?」
「これも、子ども達の為。無理な練習はしないさせない、勝ち負けは公平で、一生懸命練習しても三年間報われない何てこともない。どんなに弱いチームでも、必ず勝てる事が保障された、安心のシステム。10年前のような、常識はずれなサッカーが蔓延することを十分に防いでいる。それのどこがに問題があるのか?」

 黒木も自分の持論に、絶対の信念を持っている。

「はぁ? そんなの、全然サッカーじゃないじゃないか!! それが分からないお前が、サッカーを管理するなんて、馬鹿な事を言い出すんだ。子ども達の心が自由なように、サッカーもまた、自由なものなんだ!!」
「……自由を謳うのなら、それに伴う責任も負うべきだな! 円堂守!!」
「黒木……」

 頑ななまでの、黒木の態度。
 そうなってしまうだけの何かが、黒木の身に有ったのだと円堂は思う。だが、今こうして話してみれば、黒木の中にも一点だけは円堂と通じるものがある。それは、形はどうあれ子ども達の事を思ってと言う一点だけは、円堂と同じ気持であった。

「黒木さん、円堂の携帯が録音状態になっていました」
「ああ、やはり。ここでの会話を証拠として持ち帰ろうとしたんだろう。サッカーの才能は天才的でも、こういう事は全くの凡人だな」
「…………………」

 鬼道や佐久間から、ここに赴く際に自分も捕まる事で豪炎寺と合流するように言われていた。その妨げとなるような、ある意味『賢い行為』はするな、バカに徹していろ! と言われていたので、黒木から投げかけられたあからさまな侮言も黙って聞いている。

「他には何かないか? ボタン型の発信機とか、ライターや筆記具に見せかけた盗聴器のような物とかは」
「いえ、ありません。今の携帯は、それこそ昔のスパイ映画の秘密兵器の様に進化してますから、他の道具とは考えなかったのでしょう」

 そう言いながら円堂の携帯を、円堂の目の前で踏み潰す。

「あっ!!」

 さしもの円堂も、その行為には怒りを込めて目にも留まらない速さで、踏み潰された携帯を取り上げた。

「もう、壊れたものをそんなに大事そうに手にしても、元には戻らん。そう、今の少年サッカーの様に」
「黒木、お前は本当に……」

 強い瞳の色で睨み付ける円堂に醒めた視線を投げ、円堂の体を拘束するようにボディガード達に言いつける。腕を後ろ手で拘束され、足も膝上を縄で縛られた。膝から下はまだ自由だが、それでも若い男の姿に不似合いなちょこちょこ歩きしか出来ない。

「よし! 円堂も豪炎寺と同じ部屋に連れて行け!! 明日の試合の結果が出次第、こいつ等を少年サッカー界最大の裏切り者として、世間に公表してやる! サッカー選手としても、人間としても、この社会から葬ってやる!!」

 ぎりっと、円堂は唇を噛みしめた。
 今はまだ、我慢の時だと自分に言い聞かせながら。


  ■ ■ ■


 剣城を地下水路に下ろし、剣城の持っていたIDカードを受け取る。そしてそのまま、水路を案内してきた壁山に剣城を預け、不動は身軽に水路から地下2階の機械室に身を躍らせた。
 注意深く監視モニターを見ていれば、一瞬地下に下りた緑の光点が消失したことに気付いたかもしれない。しかし、すぐに灯った光点に、何かセンサーを遮るものがあったのだろうとしか考えないだろう。
 そこで、すでにレジスタンスの一人が潜入したことに気付くこともなく。

「不動君、その近くに配電ケーブルか、電話のケーブルはないですか?」

 自分の存在はゴーストと位置付けて、水路内で作業を進める目金がそう声をかけた。

「ああ、両方あるが、どうする?」
「それじゃ、ケーブルを二組上げますから出来るだけ離して、それぞれに繋いでください」

 言うが早いか、下からポーンとケーブルが放り上げられる。

「これ、クリップで挟むだけでいいのか?」
「はい、それでOKです。こちらの準備が整うまで、不動くんは待機お願いします」
「分かった」

 水路内から、小さく軽快なタッチ音が響く。
 その間、僅か3分。

「ハッキング、完了! 不動くん、準備OKです」
「……えらく、早いな」
「まぁ、直接繋いでますからね。前もって、ある程度のパスは解除してましたし、フィフス仕様に仕上げた僕のPCを繋げば、システムに潜り込むのは簡単です」

 本当に、こんな奴が味方に居るっていう事は大きな戦力だ。
 それも10年前、円堂が立ち上げた雷門サッカー部を廃部にされないため、必死で部員集めをした結果が、今こうして実っている。そう思うと、人間どれだけその時の状況が絶望的でも、誠心誠意全力で当たる事が大事なのだとしみじみ思う。

「さぁ、行ってください。不動君! バックアップは、僕にお任せあれ!!」

 ドン、と大きく胸を叩いた音が、マンホールの底から聞こえた。


  ■ ■ ■


 仰々しい椅子を置いてある、青く暗い部屋を通り抜け、明かりの乏しい秘密通路に入る。そこをしばらく歩き、ざらざらしたコンクリートの素地がそのまま表れている壁にはめ込まれたスチール製の扉の前に立つ。

「ここは……」

 息が詰まりそうな場所だなと、円堂は感じた。
 窓もない、壁の中に作られた秘密の部屋は、それだけで禍々しさを感じさせる。

「しばらく、ここで待っていてもらおう。なに、一人ではないから、退屈はしない」

 通路側の壁にあるボタンを押すと、シュンと言う機械的な音が響き、スチール製の扉が開く。中には、何もない無機質的な灰色の壁の部屋の真ん中に、椅子に縛り付けられたまま倒れ伏した豪炎寺の姿があった。
 豪炎寺の周りには、彼のものと思われる白金色の髪が切り刻まれ、冷たい蛍光灯の光を反射させながら散らばっている。

「豪炎寺っっ!!」

 叫ぶ円堂の声で、意識が戻ったのか床に倒れ伏した人影が、かすかに揺れた。

「円堂……? まさか……っっ!!」

 身動きの叶わない豪炎寺は、声のした方向を見ることが出来ず、ガタガタと縛り付けられた椅子を鳴らす。

「無理はするな! 豪炎寺!! 今、俺が行くから!」

 歩幅の小さな足音が聞こえた。
 グレーに白と黒のラインが入ったジャージが、目の端に映る。その色合いはゆっくり豪炎寺の頭の周りを回り込むと、床に俯せになった視界に入る角度をを見つけ、そこで腰を下ろした。

「……酷い目にあったな、豪炎寺」

 円堂の目が、痛ましそうに耳元を見つめる。時間が経って黒く固まった血が、耳朶からこめかみに流れていた。

「……どうして、来たっっ!? 俺の事は、見捨てておけば良かったんだ!!」
「出来る訳ないだろ? 俺たちは仲間じゃないか。どんな時でも、助け合う仲間じゃないか!!」
「円堂……」

 この変わらなさが、豪炎寺には嬉しかった。
 それと同時に、もう打つ手はない様に思われたのだった。

「くくく、良いですねぇ。仲間、ですか? 今のその言葉、ちゃんと録音させてもらいました。これで、雷門中サッカー部監督円堂守は、聖帝こと豪炎寺修也と結託して、少年サッカー界を我が物にしようとした張本人の一人と認めたようなもの。よってホーリーロード閉幕後には、二人とも弾劾される身。子ども達が、どんな目でお前たちを見るか、楽しみだ」
「…………………」

 二人は黙って、黒木に鋭い視線を投げた。

「本当に、これが最後。まぁ、後輩たちの最後の試合は見せてやる。それ以降は、いくらお前達でも、もうサッカーなど関わりたくなくなるはずだからな」

 冷たく言い放ち、その部屋に残される円堂と豪炎寺。
 二人は捉えられたまま、決勝の日を迎えた。




   2011年09月12日脱稿



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Date:2012/03/22
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