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□ イナズマ・クロノストーン □

『円堂守』が死んだ世界


 ―――― あれから一週間。

 そう、円堂の葬儀から一週間が過ぎた。
 突然愛する伴侶を失った夏未の心身を慮り、雷門理事長は愛娘を生まれ育った実家に連れ戻っていた。あの二人で暮らした家で、一人過ごす時間は拷問にも等しいと分っていたからだろう。

 そして、一週間。

 急な葬儀で、参列することが叶わなかった海外の友人たちが、今また円堂の為に集まろうとしている。

 初七日。

 最近の、タイトな時間繰りを余儀なくされている葬儀スタイルでは、葬儀と火葬、それから精進揚げと初七日までがセットにされている事の方が多いが、喪主の夏未は震える声で円堂の為に、七日七日の法要を営むと参列者に告げた。
 そうしなければ、夏未も集まった俺達の誰もが、やりきれなかったからだ。


 円堂の死は、一度で受け入れるには大きすぎる。
 皆で七日七日の時間をかけて、受け入れてゆくしかないと ――――

 雷門邸の客間の窓から見える、初七日の法要客の姿。
 俺は庭の木立越しに、その様子を見ていた。
 今も雷門町近郊に住む半田や栗松、少林や宍戸は当然として、雷門出身で海外でプロ活動している者も多い。そんな者たちもそれぞれに、その為だけに二ヶ月近い休みを取ってきている。

( 俺は……、あの中に入って行く事すら出来ない、臆病者だ )

 人気のない庭の片隅で、俺は自分の忌まわしい手に視線を落とす。


 両親を亡くし、影山を亡くし、今また、円堂を ――――


( ……この手は、俺が大事だと思って触れたものを、全て取り上げてしまうのかもしれんな )

 植え込みの陰で庭木の根方に座り込み、地面にその手を打ちつける。
 痛みで、この胸の悲しみを上書きさせるかのように。

( 悪いな、円堂。こんな、どうしようもない親友ばかりで。お前が居ないだけで、この足は立っていることもできないんだ。豪炎寺も風丸も…… )

 俺は、姿の見えない円堂の幼馴染みと親友の、二人の名を口にした。

「……信じられない。信じられないんだっ! 俺には円堂、お前が死んだなんてっっ!!」


 それは、まさしく血を吐くような叫びだった。


   ■ ■ ■


 青ざめた顔、頬に陰りが浮かんだ夏未の顔を見ながら、秋はメイドが入れてくれた紅茶を夏未の私室で飲んでいた。

「……あまり寝てないんでしょう? 夏未さん」
「それは、木野さんもでしょう?」

 やんわりと、見透かされてそう言われる。

「ふふふ、これはきっと愚問ね。円堂くんと関わりのあった人なら、きっと皆同じはず」
「そうね、だから私はこうして皆に集まって貰いたいのかもしれないわ。皆の中の円堂くんを感じたくて」
「夏未さん?」
「おかしな事を言うと思うでしょう? きっと私、諦めが悪いのね。今でも円堂くんが死んだなんて信じられないの。ああしてお葬式も出したのに、それでもなの。皆と話している時だけは、円堂くんが生きている気がして、この悲しみも訳の分からない怒りも忘れられるのよ」

 弱弱しい笑みを浮かべ、夏未はそう秋に語った。
 秋は、自分の胸に巣食うこの感情を言ったものかどうか躊躇う素振りを見せたが、ぐっと意を決したような表情で、夏未に声をかけた。

「 ―――― 私もよ、夏未さん。私も、円堂くんが死んだなんて思ってない。今、ここにこうして初七日の為の法要に参っているのに、それでも円堂くんがどこかで生きている気がして仕方がないの! これって、悲しみが深すぎて現実から逃避しているのかしら?」
「木野さん……」

 秋の言葉に、改めてその姿を見てみても、そんなどこか病的な感じは爪の先ほどもない。むしろ、しゃんと背中を伸ばし、突然降りかかった理不尽な問題に果敢に挑もうとしているようにすら見える。

「夏未さん、さっき訳の分からない怒りって言ったでしょう? あるのよ、私の中にも。円堂くんが『死んだ』って事を、理解しようとするたびに物凄い勢いで噴出してくる怒りが」
「……それって大事なものを、冒涜された様な怒り?」
「そう、自分の大好きな人が、死んでもないのに死んだ事にされた、無かった事にされた様な怒りよ」

 秋の強い言葉に、夏未の瞳に夏未らしい光が戻る。
 そして秋に差し出す、右手。その手を取って、ぐっと力を込める秋。

「「円堂くんは、死んでなんかいない!!」」

 それは、二人の中の絶対な確信だった。


  ■ ■ ■


「……鬼道と豪炎寺、風丸もいないのか。円堂が寂しがるぞ」

 客間で、ざっと集まった面子を見回し、ぶっきら棒な調子で染岡が言葉にした。

「円堂くんが寂しがる? 本当にそう思ってるの? 染岡くん」

 メイドがサービスして回ってる紅茶に静かに口を付けながら、吹雪が染岡に反問した。

「吹雪……」
「鬼道くんなら庭だよ。あの鬼道くんが判断を狂わせるくらいだもんね。僕たちに取って『円堂くんの死』って、世界が消滅するくらいのダメージだから」

 そう言って、また静かに一口、紅茶を口元に運ぶ。

「だけど、そろそろ鬼道くんにも分かるはず。本当の、『大事な人』の死に立ち会った事のある人間なら、その違和感に」
「違和感?」
「そう、僕も両親やアツヤの時と比べて、気が付いたんだけどね。ここにいる皆だって、それは感じている筈」

 吹雪は、はっきりは言わない。言わないが、染岡には、吹雪が何を言いたいのか分かった様な気がした。

「吹雪、お前が言いたいのは、『円堂が死んだ気がしねぇ』って事か?」
「ん、ここに集まっている皆も、そう思ってるでしょ。葬儀の時に泣かなかった豪炎寺くんは、今日は顔さえ出してないしね」

 カチャ、と手にしたティーカップを近くのテーブルの上に置き立ち上がる吹雪。ぐるりと周りを見回す吹雪の瞳は、獲物を見つけた狼のように青く燃え上がっている。

「変だよね、皆が皆そう感じるなんて。僕は、それを追及したい」

 その吹雪の言葉に重なる様に、客間の扉付近で二人の、風丸とヒロトの声が響いた。

「ああ、変だ! この状況、何か裏がある!!」

 そこには怒りを浮かべ、追及者の光を湛えた鋭い眸の風丸とヒロトがいた。


   ■ ■ ■


「風丸、それにヒロトも……」

 客間の雰囲気は、初七日の焼香に集まった訪問客といった感じではなくなっていた。円堂と秋が立ち上げたサッカー部に、染岡と共に一年の時から入部していた半田など、ずっと思い出してはぐしゅぐしゅと目が真っ赤になるまで泣き続けていたのが、その『円堂は生きているかもしれない』という希望に近づく『何か』を聞くために涙を拭い、顔を上げて二人を見つめる。半田の隣の壁山も、その後ろの綱波と土方も同様だ。

「……まぁ、俺達がやろうとした事、やった事はこのメンバーだけのオフレコで頼む」

 根が生真面目な風丸にそう言われ、更に緊張度が上がる。

「俺も風丸くんも、どーしても許せなかったんでね、円堂くんを事故死させた車の運転手をタコ殴りしてやろうと、運転手探しをしていたんだ」

 そんな物騒な台詞に、それなら俺達も混ぜろ!! と言わんばかりのウオゥ!! というざわめきが客間に響く。普段は草食動物系の立向居の気合いなどは、恐ろしいほどだ。円堂に出会ってGKに転身したからこそ、今のジャパンの守護神としての立向居がいる。何よりも立向居に取っては、円堂がGKだったから自分もGKになった訳で、そうじゃなかったら自分はGKは目指してなかったと断言していた。


 ―――― 俺の前に、円堂さんがいた。だから、その背中を追いかけただけです。


 そうはにかみながら、日本一になった時のインタビューに答えていた好青年が、その背後におどろおどろしい千もの手を揺らめかせ、赤目モードで人ではないような気合いを吐いている。

「立向居、落ち着くでヤンす。ちゃんと話の続きを聞くでヤンす!!」

 十年前のFFIの時の合宿の時から栗松は思っていた。
 立向居は、円堂キャプテンに対して『ガチ』だと。
 とにかく、自分にとって『円堂守』は一番大事な存在で、誰にも汚されることなく守り抜くのが自分の使命だと心に誓っている節がある。
 純粋に、『好き!!』と言い切れる、ガチさであった。

「えっ、でも……、それって被害者の遺族だってなかなか会えなくて、警察関係のガードも厳しいから、第三者の俺達には無理な話っスよ?」
「ああ、正攻法でならな。時間があれば、正式な手続きも取るけどそんな状況じゃないからね」

 ヒロトの言葉に、ピンと来るものを感じた目金が、したり顔で回答を口にした。

「ハッキング、仕掛けたんですね? それも、事故の捜査本部に」
「ああ、だけどな ―――― 」

 答えたのは風丸だった。

「無かったんだよ、その捜査本部。あれだけ派手に円堂守、交通事故で死亡!! って、報道されていたのにな」
「あ、でも、それはすぐ事故の加害者が、警察に拘留されたから、捜査本部まで設置する必要がなかった、てだけじゃないでヤンスか?」

 栗松の発言に、少林と宍戸がコクコクと頷く。

「―――― 最初当たったのは、事故を担当した捜査本部。それが無かったから、事故が起きた地域の所轄の警察署のデータべース。さらに、もっと上までさかのぼってみたが、『そんな交通事故は無かった』。なぁ、これ、お前達、どう思う?」

 少し考え込んで、小暮が顔を上げた。

「……事故の加害者が、そーとーヤバイ奴だったんじゃないですか? 政府高官とか、外国のVIPとか」
「ふっ、そんな事での隠蔽工作なら、すぐにでもその政府高官の首を飛ばすし、該当国の首脳に、そのVIPに対して日本国内での法的裁きを受けさせるべく圧力をかけるよ。ねぇ、財前さん」

 と、ヒロトが塔子に話題を振った。

「ああ、もちろんさ! そんな事、あたしが許しはしない!!」

 ふん、と胸を張って塔子が答える。
 こう見えても塔子は、防衛省の若きエリートだ。
 その隣で、リカがうんうんと頷いている。

「でね、方法を公的な物から私的な物に変えてみた。つまり、あの事故を目撃した一般人のブログやツイート、近くのコンビニの防犯カメラの映像なんかを検索、分析してみたんだ」
「これだけネットが蔓延してると、その瞬間にWEBで配信されるもんさ。余程の山奥での事故でもないかぎり、結構事故現場って一般人の眼に触れているものだ」

 誰かの、唾を飲む音が響いた。

「……不可解な話さ。どれだけ探しても、事故の瞬間の記事が何処にもない。画像もないし、目撃者もいない。ただ一斉に、ある時間以降『円堂守が交通事故で死んだ』記事が、増殖するんだ」
「結果だけがあるんだ。変な話だね」
「まったく、変な話さ。そして、この話にはオマケがある」

 吹雪の言葉に頷きながら、風丸とヒロトは物騒な光をより強く瞳に宿らせながら、続きの言葉を放った。

「俺達が調査を続けていると、、ひょっこりと、そう今頃になって加害運転手のデータが出てきた」

 そんな言葉に、場がざわめく。
 当初の目的が、加害運転手をタコ殴りにする! というものだったからだ。

「あ~、期待を裏切るけど、その加害運転手(仮)は、まだタコ殴りしていない。ちゃんとウラを取らないとね」
「取り敢えず俺達は、その加害運転手に会って事故直後の様子を聞いてみた。運転手は泣きながら、その時の様子を最初から最後まで丁寧に話してくれたよ。どんなふうに円堂が死んでいったかを」

 くっと、誰かが息を飲んだ。

「俺達は、何度も何度も聞いた。運転手も何度も何度も話してくれた。最初に話してくれた事と一言一句間違いがない様に、まるでレコーダーを再生しているかのように」
「えっ? なに、それ? 何か、おかしくないか?」

 半田が、側に居た壁山に尋ねる。

「おかしいっス! 人間、幾ら同じ内容の話でも、何度も話していればいろんな言い間違いや順番狂いが出てくるモンっス!!」
「風丸達が加害運転手を探し始めたから、あわてて犯人に仕立てられたみたいだな。自分が話すべき事だけ、頭に叩き込まれて」

 話を聞いていた綱波が、ずばりと言い放つ。
 コツコツと、客間の外を歩く複数人の足音。
 そして ――――

「外で聞いていたけど、それはまるでアメリカの司法当局が使う証人保護プログラムを悪用したような手段だな」
「このままだと円堂は、『世間的には死んだ人間』扱いになるってことか」

 一週間前の葬儀には参列できなかった、アメリカ在住の一之瀬と土門。同じような理由で、追々コトアールのロココや、イタリアのフィデイオ、ブラジルのロニージョ達も駈けつけて来るだろう。

「そう、おかしいんですよね。私その日は当直で、うちの病院に守くん運び込まれたことになってるんですけど……。他の看護士は、酷い状況だったって言うのに、私にはそんな記憶ないんです」
「って、ボロッボロの『まもるクン』見て、冬花の記憶が飛んでじゃねーの?」

 続けて冬花と、辛うじて焼香客風の成りをしているけど、明らかに真面目さには欠ける不動の言葉が続く。

「いえ、ショックで記憶が飛んでる訳じゃないんです。だって、自分で付けているタイムスケジュールで確認しましたから。それに、その看護士さん達が守くんを手当している時間に、別の患者さんの手当てもしていて、その事を聞くと何故か混乱して答えられなくなるんですよね」

 冬花は、過去に何度か催眠暗示による記憶の書き換えを行われていた。その後、自分の意志で本当の記憶を取り戻した冬花は、どんな時でも細かくメモを取るようにしていた。そしてもとより、『円堂守、死す』などという嘘は冬花の記憶の方が突き放していた。

 もう、答えは出ていた。
 ここにいる誰もが、『円堂守』が死んだとは思ってはいない。
 妄想でもなんでもなく、『円堂守』は生きていると、自分達の力で答えに辿りついていた。


  ■ ■ ■


「もう!! なんで、修正しても修正しても、針で突いたような『穴』を見つけて来るのよ!! あいつらは!!!」

 円堂守を封印した際に施した、辻褄合わせ。
 人がいきなり消えても、誰も不思議に思わないシチュエーション
 『生きている』のに、『死んだ人間』。

 その絶望感を、あの円堂守に味あわせてやろうと思った。
 サッカーの守護神である円堂の存在を、『世界』から消してサッカーに夢を見ている馬鹿な奴らを、失望のどん底に叩き落としてやろうと。

 なのに、どうだ!?

 あの仲間達は、間違いなく円堂守の葬式にでて、その手で遺骨を骨壺に収めたにも関わらず、『信じなかった』。棺の中には、ニセモノだけど円堂守の遺体も入れていた。その死に顔を真っ赤に泣きはらした目で見つめていたくせに、今更円堂守を生き返らせている。

「あ~ん、もう、どこをどう修正すればいいのよっっ!! 過去の歴史の修正って、下手をすると自分達の存在を消してしまいかねないから、物凄い数のシュミレーションをしなきゃいけないのに~~~」

 この綻びがマスターに発覚して、あのアルファのように更迭される事だけは避けねばと、ベータは思う。そしてふと、そのアルファの為に何か画策している風なエイナム達の事をも思う。

「……アルファも、歴史を改変して存在を消しても、あいつ等だけは忘れない様な気がするな。私は……、きっと誰も思い出してくれないだろうなぁ」

 仲間を作る気もなかったし、狎れる気もなかった。
 自分らしく出来ないのなら、誰にも覚えておいて欲しくないから都合がいいわ、と小さく呟いた。


  ■ ■ ■


 地面に何度も叩きつける手に、そっと誰かが触れてきた。
 鬼道はその体温の温かさに、びくりと視線を傷付けた手に向けた。重なるのは、大人と子どもの間の、華奢さが残る少年の手。
 その手から、手首、腕へと視線を上げて行くと、自分の子どもの頃に良く似た赤い瞳の少年が、真っ直ぐ鬼道を見据えていた。

「あ、お前は……」
「何を呆けている、キドウユウト! お前の仲間達は、求めていた答えにたどり着いたぞ!!」
「答え……?」

 その少年が触れている掌から、ドクン! と何か熱いものが流れ込んでくるようだ。

「しっかりしろ、ひいじい様。あんたがしっかりしてくれないと、俺のカノンが消えてしまうだろうっっ!?」
「……カノン? って、円堂のひ孫の円堂カノン!?」

 その名を聞いて、鬼道は思い出した。
 かつて、未来からの襲撃者をその少年と、やがて仲間になる吹雪やヒロト達とで打ち払った事を。

 そう、未来から ――――
 あの時も、サッカーに絡む歴史を改竄しようと ――――

「えへへへっ、お久しぶりです。鬼道さん」

 円堂とよく似た声で、キドウの背中に身を隠すようにしながら、ちょこんとそう鬼道に挨拶するカノン。だけど、その体は……

「半分、透明に……」
「そう言う事だ、ひいじい様。今の時点で、カノンのひいじい様とひいばあ様の間には子どもはいない。つまり、カノンが生まれる可能性はゼロのはず。そう、円堂守が本当に『死んでいるなら』。だけど、カノンは、こんな姿だけど、ちゃんとここにいる。この意味、ひいじい様なら判るだろう?」

 地面に打ち付けていた手で、希望と闘志を握り込むように強く拳を作る。

「ああ、円堂は生きている!! だけど、かなり危険な状態、という訳だ」

 しっかりと土を踏みしめ、立ち上がる。
 服の埃を払い、表情を戦士のそれに変える。

「あ、それから。豪炎寺のひいじい様は、もう動き出してる。そして、もう一つオマケ。別働隊からの伝言」

 背中に半透明なカノンを庇いつつ、キドウが一枚のメモを俺に渡した。

「なっ、これは――――」
「どうしても、目が覚めないようなら、これを見せろって言付かって来たんだ。だから、本当なら見せなくても良いようなものだけど、彼らの決意を知っていても悪くないと、俺の独断だけど」
「まったく、お前たちときたら……」

 似た者同士の視線が交錯する。
 透き通った、情熱の赤い瞳の。

「じゃ、俺達も向こうでやる事があるんで」

 今にも消えそうなカノンを大事そうに庇いながら、キドウはタイムワープして自分たちの時代に帰った。鬼道は、もう一度メモの文面に目を走らせ、それからシニカルな笑みを浮かべてそれを喪服の内ポケットにしまい込む。

「―――― これは、挑戦と受け取っていいんだな? バダップ」

 認められていた文面の内容は ――――


 ―――― 『エンドウマモル』を信じる事が出来ずに、いつまでも悲嘆の淵に勝手に沈み込んでいる馬鹿どもに告げる。いくら仲間だろうと、そんな力なき者達の元にエンドウマモルの身柄を預けおくのは、危険である。したがって、我らオーガが先んじて敵の手よりエンドウマモルの身柄を確保した暁には、それ以降のエンドウマモルの身柄は、オーガの保護下に置くものとする。  バダップ・スリード


 辺りに、覇気が満ちていた。
 希望に満ちた、希望を取り戻す為の戦いに向かう戦士たちの発する覇気が。

 なぜ、こんなにも簡単な事を見落としていたんだろう。
 『世界』は円堂を中心にして、まわっていると言う事を。
 そして、色んな時代の『円堂守』に繋がる仲間達が動き出した。

 『世界』が動き出す ――――
 『世界』は円堂守を必要としている ――――

「まったく! 俺も、どうかしていた。さぁ、作戦会議だ! 俺の指示に皆ついて来い!!」

 鬼道の眼が、赤く赤く通い始めた血潮のように赤く染まって燃え上がっていた。
 目的を見定め、そして勝利をもぎ取るための策を練る。
 勝機は、有る!
 この仲間たちが、その可能性を百にも千にも万にもしてくれる。

「円堂は、取り戻す。そして、円堂を『死なせた』お前たちには、その身でもって罪を贖えっっ!」





 『エルドラド』が、決して手を出してはいけないモノに手を出してしまった、と気付くのは、もう目の前であった。


 
 


  
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Date:2012/08/28
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